てくてくvol.16
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れは隣り合う色が混ざるのが嫌で、境目をつけるために始めたものです。また絵は一気に描くのが私の主義であり、景色を見てひらめいたその瞬間を描いています。パレットは使わず直接絵の具をキャンバスにのせて、筆やナイフ、指を使って描き、厚く絵の具を重ね、色の重なりや透けて見える感じ、質感を表現しています。時には金箔なども用いて、黒い縁取りに負けない鮮やかな色彩を使うのも私の作品の特徴でしょうか。 10年ほど前からは、木の板に顔彩で描く『板絵』も描くようになりました。板画家の棟方志功の『板画』にヒントを得た呼び方で、いつも現地で10分ぐらいで描いていますが、木目の出方も面白くていい味が出ます。 もう50年絵を描いてきました。これからは抽象的な作品など、新しい表現にも挑戦していきたいと思っています。描いていると、知らぬ間に面白い線が出てくることがあります。その思いがけない線がいいんですよ。私は『一瞬の線の画家』といえるかもしれません。 画家の目線から見る山梨の山の魅力は、一つ一つの山が特徴的で分かりやすい形をしているところです。ここからも甲斐駒や八ケ岳の美しい姿を間近に望めます。山梨から見る山の姿が私は大好きなんです。皆さんにも、私の絵を通じて山梨の山の魅力を少しでも感じてもらえたらうれしいです」ただひたすらに甲斐駒ケ岳を描き続けついに山を生捕りにした山と対峙し、一瞬のひらめきを描く 「白州町に生まれ、ずっと甲斐駒を見ながら育ちました。そんなふるさとの象徴でもある山に中学のときに初めて登り、小さなころから絵が好きだった私は、登るだけでなく描いてみたいと思ったのです。当時は油絵の画材を扱っている店は非常に少なく、描き方の知識もなかったので、私は電車に乗って甲府まで行き、デパートの書店で油絵の描き方の本を、そして画材店で絵の具などを買いました。 17歳のときに山梨県芸術祭で入選した作品も甲斐駒を描いた油彩画でした。仕事をする傍ら創作活動を続け、20歳のときに初めての個展を甲府で開催して以降、銀座などでも回を重ねていきました。私は10回目の個展まで甲斐駒だけを描き続けたんです。これだけ一つの山にこだわり続けたのは、自分が最初に登った山への思い入れと、独自性の追求からでした」 哲学者や詩人としても知られる串田孫一氏も守山さんの作品に引かれた一人。昭和60(1985)年には、守山さんの個展のために「生捕りにされた山」という一文を寄せて作品を絶賛しています。 「私は昔から山などの輪郭を黒で描いています。こ甲斐駒ケ岳を描いた板絵と題材になった風景北杜市白州町白須6807-110 TEL.0551-35-2343蔵のギャラリーたい じきんぱく第20回個展 開催■開催期間 11月4日(月・振休)~10日(日)■開催場所 ギャラリームサシ(東京都中央区銀座1-9-1)11

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