山梨てくてくvol.13
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1979く人》と《夕暮れに羊を連れ帰る羊飼い》です。どの美術館でも目玉となる作品を買うことはありますが、当館の場合はこの2点で終わらすことなく、ミレーのさまざまな画業が紹介できるように、主題や制作時期を考慮し、《落ち穂拾い、夏》をはじめ肖像画、風景画など幅広いジャンルの作品を収集しました。現在ミレーの作品は70点、そのうち油彩画が12点となりました。これは世界的にも大変多い数だと思います。このように、地道に集め続けてきたことが『ミレーの美術館』といわれるゆえんだと思います。さらにバルビゾン派の価値や美術史的な位置をしっかりと示すためにルソー、ディアズ、トロワイヨン、デュプレなどのバルビゾン派の作品やクロード・ロラン、ライスダール、クールベなど西洋の風景画で欠かせない画家の作品もそろえました。 また、建物の改築、増築も進みました。通常、美術館はどのような作品にも合わせられるように白い壁が基調となりますが、ミレーとバルビゾン派に特化した『ミレー館』では第1室は赤色、第2室は緑色の壁とし、斬新でありながらも作品が映えるようにしています。さらに、収蔵庫も増築するなど目立たない部分もしっかりと充実させ、作品一つ一つを大切に保管しています。こうしたことは、文化の底上げにつながることであり、重要な取り組みであると思っています」 「山梨県立美術館は山梨県の置県100年を記念して計画されました。当初は総合博物館を開設予定でしたが、当時の田辺国男知事が『ほとんどの博物館はレプリカとパネル展示ばかりで、これではいけない。本物でいきたい』と、まずは美術館をと考え、県農業試験場の跡地に建設しました。 開館にあたり、山梨の芸術家の作品以外にどのような作品を収蔵すべきかを検討する中で、初代館長・千澤楨治氏からバルビゾン派がよいのではないかとの提案がありました。日本の近代美術に関する作品はすでに収蔵している美術館があるので、西洋美術を集めることで差別化が図れること、また、自然の営みや農村風景などが山梨県と重なることから、バルビゾン派の作品を収蔵することに決定しました。そして、なんとそのタイミングで、ミレーの作品が売りに出る、しかも《種をまく人》という吉報が届いたのです。ミレーの油彩作品自体は多くありませんので、欲しいといってもなかなか市場に出るものではありません。《種をまく人》ほどの傑作に巡り合い、山梨県が購入できたことは本当に幸運だったと思います」 「当館が最初に購入したミレー作品は《種をま山梨県と「ミレー」の運命的な出会い「ミレーの美術館」となり得たわけ19851991199319982014「ミレー展」「バルビゾン派と日本」「自然に帰れ ミレーと 農民画の伝統」「生誕200年 ミレー展」「ミレーとバルビゾン派」「ミレー展 ボストン美術館蔵」09

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