山梨てくてくvol.10
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 「昭和58年頃からは洋装にも合わせやすいオリジナル柄の開発を始めました。印伝は鹿革と漆という素材自体を変えるわけにはいきません。ですから色、模様、デザインといったもので魅力を深め、時代のニーズに応えながら可能性を広げていく必要があるのです。常に新しいものをお客さまに提案する年1回の新作発表には苦労がありますが、企業の力をアピールできるチャンスにもなります」 印傳屋は海外のハイブランドとのコラボレーションも手掛けていますが、そこには老舗企業として絶対に譲れない信念があります。 「当社は相手が世界的な有名ブランドであっても、素材の提供のみはせず、あくまでも対等な立場で一緒に作っていくという姿勢を貫いています。それはお互いを尊敬し合い、良いものを作ろうというところへ結び付くからです。このようなコラボレーションの実現は、現場の活性化や技術力の向上、また印伝の知名度アップにもつながっていきます」 「平成23年、アメリカに進出した時、現地では誰も印伝を知りませんでした。そこで海外のお客さま向けの商品を開発し、展示会への出展を続けながら印伝を知っていただく努力を重ねた結果、全米最大規模のファッション展示会『コーテリー展』で注目を集めるようになりました。今では、アメリカの代理店と契約し、現地で販売するまでになりました。西洋で漆は『japan』と表記されます。まさに日本文化を象徴する素材というわけです。今後も動画をインターネットで公開するなど、印伝の伝統文化をより広く世株式会社 印傳屋 上原勇七 代表取締役社長株式会社 印傳屋 上原勇七(本店)甲府市中央3-11-15/TEL.055-233-1100上原 重樹さ ん新作を発表することは、印伝の進化に欠かせない山梨から海外へ、印伝の魅力を発信伝統と革新。時代が求めるものを感じ取る伝統産業を担う企業として貫くプライド2017年新作ETORCE(エトルス)縁のつながりや円満を表す七宝つなぎ模様を更紗と漆で立体的に表現。ボタニカルシルエットを浮かび上がらせる新たな手法が美しい表情を見せている。リュック(右)/ポシェット(左)界に向けて発信していきたいと思っています」  「当社の創業は今から400年以上前の天正10年。これほど長く続いてきたのは、その時代時代の家長が、今どういうものをお客さまに提供すべきか常に考えてきたからだと思います。短期的な流行ではなく、時代が求めるものを感じ取り革新を続けてきたのです。伝統は先祖から預かった財産です。しかし、単に伝統を守るだけでは生き残ることはできません。時代の変化を見極め進化していくこと、それが伝統産業にとって大切なことだと思っています」09

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