山梨てくてくvol.09
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んどが、はんこに関わる仕事をしていました。そんな環境の中で育ったので、私も友達も卒業文集に『将来、はんこ屋さんになる』と書いていたんです」 「印章は自己を証明するもの。私たち作り手は、字を選びバランスを整え、印材に字を書いて彫っていく、全ての工程を手作業で行うことで、唯一無二の印章を生み出します。印影は 「祖父が創業したのは昭和15年ごろだと聞いています。当時すでにこの辺りは印章の産地だったので、祖父は印章の販売をしていました。父は手彫りの技術を身に付け、販売と彫りの両方の仕事をするようになりました。 かつて父が使っていたこの工房は、私の遊び場だったので、はんこはいつも私の近くにあったんです。小学生の頃は、この地域がはんこの産地として栄えていたので、同級生の親のほとはんこの町に生まれ、自然に目指した職人の道印章は自己の分身。唯一無二でなければならない。時を超えて受け継がれていく印章さまざまな場面で人の目に触れるので、その印影から持ち主がどんな人であるのか想像できます。つまり印影は本人の分身としての役割を果たしているんです。私は印章の注文をいただく際に必ず、お客さまと直接会ってお話を伺ったり、インターネットでの場合でも何回かやり取りをしたりしています。そうすることで、彫っている時にお客さまのことを思い、お客さま一人一人の分身としての印章を完成させることができるのです」 「昔の印章は高価な印材を使っていることが多く、おじいさんの印章の印面を削って彫り直し、お孫さんが使うといったケースもあります。象牙など貴重な印材はこのように改刻し、受け継いでいってほしいです。 最近は、若い方や外国人の間で落款印の人気が高まっています。落款印は遊びの要素があり、芸術としての側面も備えた面白さがあることから、名刺や手紙などに使っていただいても楽しめます。 私は伝統工芸士として都内の体験会などに出向き実演をしたり、県内の小学生に毎年指導をしたりしています。特に子どもたちには、山梨の伝統的工芸品を知ってもらい、ものづくりの楽しさを感じてほしいと思います」FEATURE経済産業大臣指定伝統的工芸品 甲州手彫印章 伝統工芸士望月煌雅工房 市川三郷町岩間1134-1/TEL.0556-32-3121望月 煌雅さ ん厚生労働省認定一級印章彫刻技能士厚生労働省ものづくりマイスター第26回全国技能グランプリ優勝など、受賞歴多数らっかん04

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