山梨てくてくvol.07
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 「富士山のマグマは、黒っぽい、サラサラとした玄武岩質です。この溶岩の粘り気が、富士山の美しさに関係しています。どろっとした粘性の高い溶岩だと、山が急峻になり、きれいな円すい形にはなりません。富士山の溶岩は粘性が低くて流れやすいので、裾野をきれいに引く訳です。このようなサラサラの溶岩は日本では少なく、富士山周辺では、溶岩樹型や溶岩トンネルなど、火山学的にも面白い地形を見ることができるんです。といっても溶岩だけでは、あのようなきれいな形にはなりません。 富士山は、たくさんの火山灰や火山礫を飛ばす爆発的な噴火を何度も繰り返してきました。そして、活動の大部分が氷河期に起こったため大量の泥流を流し裾野を広げてきました。高く成長する時期と、裾野を広げる時期、その両方を富士山はうまい具合に繰り返してきたといえます。 一休みをしたり、山体崩壊もしたり、さまざまな活動期を経て、およそ2200年前、ほぼ今の富士山の姿ができあがりました」 「そんな富士山がなぜこの場所にできたのでしょうか。火山の地下にあるマグマだまりは、ふつう5〜10キロメートルの場所にありますが、富士山の場合は20キロメートルより深い所にあります。それに、富士山は地下も複雑なんです。 地球の表面は十数枚の巨大な岩板『プレート』に覆われていて、ゆっくり動いているんですが、マグマだまりができて火山が誕生する場所は、このプレートの動きと深く関係しています。 簡単に言うと日本の多くの火山は、海洋プレートが大陸プレートにぶつかって沈みこむ場所にできるのですが、富士山はそれほど単純ではないんです。富士山の真下は、北米プレート、ユーラシアプレート、フィリピン海プレートの3つのプレートの接点に当たっていて、押し合いをしています。さらにその下に太平洋プレートが沈みこんでいる極めて複雑な場所にある訳です。なぜ富士山はマグマだまりが深いのかとか、なぜ玄武岩質のマグマを大量に出す爆発的噴火と穏やかな噴火を何度も繰り返し完成された美しい成層火山。富士山は生い立ちまで非凡。富士山の地下は地球上で最も複雑な場所。数10万年前~10万年前ぐらいに、今の富士山の土台となる「小御岳火山」、さらにその下に「先小御岳火山」という火山が活動していた。「小御岳火山」と「愛鷹火山」が活動を終えた約10万年前、2つの火山の間から「古富士火山」が噴火を始め、富士山の最初の部分が成長した。約2万年前、活動を始めた「新富士火山」は爆発的な噴火を繰り返し、古い火山を覆うほどに成長していった。北米プレート太平洋プレートユーラシアプレートフィリピン海プレート富士山の構造(富士山の下に埋まる古い火山体)新富士火山古富士火山きゅうしゅんれき小御岳火山先小御岳火山愛鷹火山05

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