fureai.vol87
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2015年の夏、取引先のワイナリーを訪ねた中村文昭さん(56)が店の裏に行くと、ワインのいい匂いが漂ってきた。そこには、ねじり鉢巻をした従業員が、困り果てた様子でブドウの搾りかすを処理する姿があった。「ブドウの果汁が太陽に照らされてキラキラ光っていた。捨てちゃうんですか?と聞くと、〝腐るとコバエが湧いて悪臭がするから〟と言われました」おいしそうなのに、もったいない││。食品を扱う会社を経営する中村さんは、興味本位で少し譲ってもらった。ご飯にかけたり、味噌汁の具にしたり、ビール漬けにして試してみたが、酸っぱくて食べられない。それでも諦めなかった。今度は    II搾りかすを乾燥させ、すり鉢で粉末にして、バニラアイスにかけてみた。すると、酸味と甘みがマッチして驚くほどおいしかった。NAKAMURAFUMAKキラキラ光る"厄介者"との出会いワイン県の"もったいない"を夢の資源に懸命に志す県民インタビュー未来を山梨のワインづくりの裏側で、毎年大量に捨てられているブドウの搾りかす「ワインパミス」。この〝もったいない〟を資源に変えようと挑んでいる人がいる。「目標は、廃棄ゼロ」ワインパミスで新たな可能性に挑戦する、奮闘ストーリー。[連載]株式会社中村商事代表中村文昭県内には約90のワイナリーがあり、年間1万トン近いブドウの搾りかす「ワインパミス」が発生している。ワインパミスには、レスベラトロール、タンニン、アントシアニンといったポリフェノール成分が、ワインよりも高濃度に含まれているという分析結果もある。山梨県では、こうした副産物の再利用をはじめとするSDGsの取り組みについて、登録制度の運用などを通じて推進している。2019ワインパミスがANA国際線の機内食に採用される1969都留市生まれ2005食品会社「中村商事」を創業2015ワインパミス事業「RE-WINE」を開始乾燥させたワインパミスを手に。これを粉末やペースト状にして製品化する18

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