懸命に志す県民インタビュー未来をその女性が自宅の庭に植えた山野草の「海老根︵エビネ︶」は、年に一度、可憐な花を咲かせる。自身が主宰する「子ども食堂えびね」に集う子どもたちに、「エビネは季節の小さな草花と一緒に咲くからキレイなんだよ」「大自然に生かされている人間も同じ。それぞれの個性を認め合って生きていこうね」そう語りかけている。おいしいご飯を提供するだけじゃない。誰かが困っている時に手を差し伸べる。その小さな積み重ねが、地域社会のつながりを広げている。[連載]南アルプス市で子ども食堂を運営する鈴木圭子毎月第3金曜日の夕方、南アルプス市にある桃の丘団地コミュニティセンターに地域の子どもやお年寄りたちが集まって、みんなでご飯を食べる。メニューは、カレーとサラダとデザート。大人3人が入るといっぱいになる施設のキッチンで、毎回80~100食を用意している。スタッフは開催日の1週間前から複数のスーパーをまわって材料を集めたり、当日の朝から下ごしらえをしたりと忙しい。さぞ大変なのでは ――。そう聞くと、「子ども食堂えびね」代表の鈴木圭子さん(68)は首を横に振った。「子どもたちが『今日のデザートは何かな?』と小学校で話題にするほど楽しみにしてくれているので、うれしいんです」鈴木さんが夫の病気や親の介護で困った時にそっと助けてくれ幸せをもらって生きている一緒に食べて、地域とつながるSuzuki Keiko 県内には59カ所※の子ども食堂があり、県は「食」を通じて地域住民が交流できる場を支援している。困難な状況にある子どもや高齢者、外国人、シングルマザーなどが地域住民と信頼関係を築き、相談できる環境が必要だからだ。県は市町村と連携し、子ども食堂のようなコミュニティの場を全県に広めることで、悩みを抱える人をいち早く支援につなげることにしている。※2025年7月22日時点2023子ども食堂えびねを立ち上げる1957甲府市生まれ。学校卒業後は山梨中央銀行に勤務1991慎二さんと結婚2018民生委員の主任児童委員に任命される活動の記録写真は夫の慎二さんが撮影している鈴木さんは8年間、登下校する子どもの見守りを続けている18
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