fureai68
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 甲州印伝の工芸士である芹澤依子さんは、第45回全国伝統的工芸品公募展において、出品した「鳥獣人物戯画 袋物一式『まう・ねらい・かける・みなも』」が、最高位の内閣総理大臣賞に輝きました。この公募展は、伝統の技術や技法に、新しいアイデアや工夫を取り入れた、市場性のある伝統的工芸品を募集するもので、山梨県内の伝統的工芸品での同賞受賞は初の快挙です。 「甲州印伝は、レザークラフトで唯一、経済産業大臣から指定された伝統的工芸品なんです。形を変えやすく丈夫で柔らかい鹿革に、型紙を使って漆でさまざまな模様をつけていく印伝にとても面白さを感じていました」 伝統的工芸品産業振興協会で、全国各地の伝統的工芸品に接してきた経験を生かして、甲州印伝の可能性をもっと広げられないか、伝統を新しい感覚で守りながら飛躍させられないかと考えていたところ、縁あってこの世界に飛び込んだそうです。 「作り手となり、目標を定めて学ぶことはもちろんですが、甲州印伝の新たな魅力を積極的に提案する機会にもなると考え、公募展に応募しました。作品の柄には、よく使われる小紋柄ではなく、新たな試みとして、国際的にも人気がある『鳥獣人物戯画』に登場する4つの場面を用いました。鹿革の優しい手触りにも合い、躍動感があり、かつ、見た時にホッと和むこの柄は、鳥獣人物戯画のファンにも訴求できます」 「私は、伝統工芸品はアートではなく、使ってもらうことが重要だと思っています。皆さんは、印伝は高価で大事に使うモノというイメージをお持ちかもしれませんが、実は鹿革は、普段使いをした方が長持ちし、使っている人になじんで、一人一人違った風合いも出てきます。そんな印伝の魅力が直接伝わるよう、学生や観光客の方などに印伝の制作を体験してもらっています」 芹澤さんは、作り手の立場から、未来へ向けてどういった形で甲州印伝を残していくべきかを、産地全体で考えていかなければと感じているそうです。「県外、国外産が多い鹿革や漆など印伝の素材を、将来的に、全て山梨県内で調達し、県内の地場産業全体の活性化につなげることを目指した取り組みも始まっています」 「私の作品には私の顔は見えなくてもいいと思っています。ただ、人を引きつける魅力を備えた作品をつくりたいんです。山梨の皆さんには、日本を代表する工芸品である甲州印伝を誇りに思って、楽しみながら使っていただけるとうれしいです」神奈川県出身。2014年から伝統的工芸品産業振興協会に勤務。2017年から「印伝の山本」にて甲州印伝の制作に携わっている。甲州印伝の「伝統」を新しい感覚で守り、つなげる日本を代表する工芸品がある誇り甲州印伝をもっと楽しく使ってほしい芹澤 依子さん有限会社 印伝の山本甲府市朝気3-8-4TEL.055-233-1942内閣総理大臣賞受賞を長崎知事に報告「印伝の山本」山本裕輔社長と打ち合わせ(上)鳥獣人物戯画 袋物一式「まう・ねらい・かける・みなも」左から合切袋(大・小)、ポーチ、お薬手帳ケース印伝の山本のホームページ15

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