ふれあい特集号vol63
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 子どもの頃から生き物が好きで、ウーパールーパーやベニツノガエルを繁殖させたり、タニシを養殖したりして、楽しんできたという今村秀樹さん。甲府市で人材派遣業を営む傍ら、好きな生き物に関わる仕事をしてみたい、誰もやっていない分野に挑戦し日本一になりたいと模索する中、インターネットで偶然目にしたのが、エビ釣りの写真でした。 「見た瞬間、これだ!と思いました。調べてみると、東南アジアではオニテナガエビを釣って、その場で食べる釣り堀は24時間営業の施設もあるほどポピュラーで、これを山梨でやろうと考えました」。まずはオニテナガエビを手に入れようと日本中くまなく探し、オニテナガエビの養殖をしている施設を青森に見つけました。 今村さんは、早速、現地を訪ね、1週間にわたって作業を手伝いながら、熱い思いを訴えました。「そのかいがあって、帰り際に抱卵しているメスを2匹分けてもらえました。とても貴重な親エビなので、大切に持ち帰り、すぐにふ化させたのですが、翌日には全滅してしまったんです。後に分かったのですが、エビは、微小なプランクトンとして生まれ、11回変態してエビの姿になります。とてもデリケートで、ささいな環境の変化で死んでしまうので、育てるのは非常に難しいのです。この失敗によって私の心に火が付き、本格的に取り組むことになりました」 「オニテナガエビの養殖法は、確立していません。そこで、自宅の一室に水槽を並べて研究室にしました。さまざまな方法を試しては失敗するの繰り返しが続き、餌や水などの管理に追われ寝る間もなく、心が折れそうになったこともあります。そんな苦労の中で、約2万個の卵から1匹だけ成体に育ったんです。あの時は、本当にうれしかったですね」 その後も、水質環境を安定させる循環ろ過器を開発したり、共食いを防ぐ器具を考案したりと創意工夫を重ねました。そして今では、温度変化を一定に保つよう温泉を利用したいけすなどで約1万匹を養殖するまでになりました。 「富士登山でいえばようやく8合目まで来た感じですね。今後はオニテナガエビを『陸作信玄えび』という商標でブランド化して、県の特産品として知名度を高めていきたいし、釣り堀を作ってみんなに楽しんでもらいたい。さらには、今回開発したエビの養殖方法をマニュアル化し、ゆくゆくは世界の貧しい国の人に伝授して、なりわいとしてもらえたらと思っているんです」と壮大な目標を語ってくれました。生き物好きが高じて始めたオニテナガエビの養殖への挑戦一瞬を大切にきらめく やまなしのシュン!株式会社陸作甲府市長松寺町6-7 日信ビル3階 TEL 055-288-0956温泉を利用したいけすで、養殖するオニテナガエビに餌をやる今村さん。2020年には甲斐市に専用の養殖場を建設する計画養殖に成功したオニテナガエビの俗称は「アジアンブルーロブスター」。淡水のエビで、プリっとした食感と甘く深いクリーミーな味わいが魅力紆余曲折の末、養殖に成功今後は県の特産品に育てたいふれあい21「甲府市内のすし店で試食会をしたところ、伊勢エビよりおいしいと大絶賛された」とうれしそうに話す今村さん(上)オニテナガエビを漬けにしたにぎりずし(右)う  よ

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