ふれあい特集号vol.62
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 山梨市のモモ農家に生まれた加賀見進さん。子どもの頃から当たり前のように手伝いをしてきましたが、心の中では「暑いし、かゆいし、格好悪い。絶対に継がないぞ」と思っていたそうです。高校を卒業後、県外で働いていた加賀見さんは、父親が高齢になったこともあり、26歳の時にUターンし、専業農家になりました。「周りを見たら高齢者ばかり。腰の曲がったおじいちゃんも元気に頑張っています。若い自分ならその3倍は働けると思い、頑張ったら頑張っただけ稼げると意気込んで始めたんですが、現実は甘くなかったですね」 葛藤を抱えながらも懸命にモモの栽培に励んでいた加賀見さんは、3年前、知人からの誘いで、高知県の農産物直売所でモモを直販する機会を得ます。「同年代の農家と、ワゴン車に60コンテナのモモを積み込んで行ったのですが、とにかく面白かったんです。連日たくさんのお客さんが来てくれて『こんなにおいしいモモを食べたのは初めて』と笑顔で言ってもらい、モモ農家をやっていて良かったと心から思いました」このことが加賀見さんにとって大きな分岐点になったといいます。 その後、一層モモの栽培に打ち込むようになった加賀見さんは、若手果樹農家グループ「未来農業Short Legs Group(ショート・レッグス・グループ)」を結成。農家の高齢化に伴って年々増えている耕作放棄地を減らすため、今やるべきなのは、若い世代に農業の魅力を伝えていくことだと考えた加賀見さんたちは、農業に対するイメージを覆すようなユニークな動画を公開したり、県内外の小学校や都内のデパートで食育イベントを開催したり、さまざまな活動を続けてきました。生のモモを宇宙へ持っていこうという「スペースピーチプロジェクト」や、県内外の大学と連携して、学生が耕作放棄地で果樹栽培などを行うことで地域活性化に取り組む「ハタチの畑プロジェクト」もスタートしています。 「農業で生活していけることを若者に示せるよう、労力を減らして耕作面積を増やし、収益を上げるビジネスモデル『省エネ栽培』にも取り組んでいます。農業をこれからの時代に合った魅力ある職業にしていきたいんです」と加賀見さん。今年2月には株式会社プレイストジャパンを仲間と共に設立し、グループの活動の幅を広げるなど、これからの活躍にますます期待が高まります。26歳で始めたモモ農家お客さんの笑顔が大きな転機に一瞬を大切にきらめく やまなしのシュン!山梨ショートレッグス検索株式会社プレイストジャパン/未来農業Short Legs Group山梨市三ケ所82 TEL 080-5510-7496(担当:長谷部)果樹産地を盛り上げようと、農業関係者の交流イベント「山梨ファーマーズフォーラム」を開催年間約7万個のモモを出荷している加賀見さんは「おいしいものを食べると、思わず笑顔になりますよね。だからイベントなどで接する子どもたちには『おじさんは毎年7万人を笑顔にしているんだよ。モモ農家ってすごいだろ?君もなりなよ』と誘っています」と言います山梨の農業を未来につなげていくことを目指し、県内で果樹農家を営む長谷部野歩さん(左)、雨宮幸生起さん(右)と共にグループを結成フルーツ王国山梨の魅力を発信するため、都内のデパートで親子向けの食育イベントを開催ユニークな視点と斬新な発想で農業の魅力を伝えるふれあい17

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