ふれあい特集号vol.56(デジタルブック版)
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 県外の大学で教育学を学び、卒業後は東京の人材教育コンサルティング会社に就職した奈良美緒さん。「仕事は楽しくやりがいもあったのですがとにかくハードワークで、毎日朝から晩まで予定が詰まっているような状態。そんな暮らし方、働き方に、いつしか疑問を抱くようになっていきました」 5年弱の会社員生活に終止符を打ち、生まれ故郷の都留に帰ってきたのは、2016年6月のこと。改めて、自然が豊かで人も優しく、時間がゆったりと流れている都留の心地よさに気付き、「誰もがふと立ち寄って思いを語ったり、自分を見つめ直したり、単純に心と体を休められる場所が、ここ都留にあったらいい」という思いを持つようになったと言います。 ちょうどそのころ、市内に築80年の空き家を購入して移住していた友人が、県外へ引っ越すことになり、その家で暮らすようになった美緒さん。友人の勧めもあり、2017年4月、思いの実現に向けて「古民家ゲストハウス あわ」をオープンしました。 「古民家ゲストハウス あわ」には、国内外からの宿泊客だけでなく、民泊経営を目指して美緒さんのアドバイスを求める人、地域おこしの一環としてイベントを企画している地元の学生など、いろいろな人が入れ代わり立ち代わりやって来ます。「ゲストハウスというより、よろず相談所みたいですよね」と屈託のない笑顔で話す美緒さん。日々、地元の方たちと積極的に触れ合い、故郷・都留に新しい風を吹き込んでいます。 「ずっと『何もない』と思っていたのに外へ出て戻ってみたら、都留って、活動的な人がたくさんいて、街角や路地裏には面白いものがいっぱいあって、すごく魅力的な街なのだと気付きました。今、市役所や地元の方たちと、『観光』をキーワードに都留の魅力を考えるプロジェクトを立ち上げ、いろいろな企画を練っています。都留の魅力をどんどん発掘し、広く発信していきたいと思っているので楽しみにしていてください」と語る美緒さんの瞳は、輝いていました。生まれ故郷の都留で古民家ゲストハウスをオープン広く発信していきたい離れて気付いた都留の魅力一瞬を大切にきらめく やまなしのシュン!古民家ゲストハウスあわ検索「前の住人が、雪見障子のガラスをステンドグラスに替えたんです。皆さん『すてきですね』って、言ってくれます」玄関を開けると、「あわ」の看板が出迎えてくれる。2階の宿泊室。宿泊客には、伝統的な日本家屋に興味のある外国人も多い。「昨年の晩秋に来られたドイツ人の建築家は、『とても寒かったけれど、この家の造作や建具は素晴らしく、見ているうちに寒さも忘れてしまった。泊まることができてよかった』と言ってくださって、こちらの方が感激しました」美緒さんが理想とするのは、イタリアにある「アルベルゴ・ディフーゾ」というスタイル。「集落全体が一つの宿泊エリアとなっていて、例えば、同じ集落内にあるAさん宅で民泊し、Bさんのレストランで朝食をとり、Cさんの工房で陶芸体験をするという感じ。地元の皆さんと一緒に、そんな街をつくっていけたらいいなと思っているんです」ふれあい17

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