ふれあい特集号vol.49(デジタルブック版)
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富士山の信仰登山を支えた「ごうりき」の魂を受け継いで独立を決意させたある婦人との出会いもっと人の心に寄り添うガイドをしていきたい2016年、地域づくりへの貢献が認められ『ふるさとづくり大賞(総務大臣賞)』を個人として山梨県内で初めて受賞一瞬を大切にきらめく やまなしのシュン!富士山登山学校検索 富士山の麓・富士吉田市で生まれた近藤さんがガイドする富士登山は、少人数で、ゆっくり、安全にがモットー。そして「なぜ登るのか」という、人それぞれの目的を大切にする〝ごうりきスタイル〞。ごうりきとは、かつて富士山で信仰登山が盛んだった頃、登山者の荷物を背負い登拝をサポートした従者のこと。「『強力』と書きますが、私の場合は『合力』。合わせる力として背負いたいのは、人の思いなんです」。 旅行会社のツアーガイドをしていた時、独立を決意するきっかけとなった忘れられない出来事がありました。 「当時、大勢のお客様を厳しい日程で案内することにストレスも感じていました。ある時、『昨年亡くなった富士山が大好きだった主人を、今年は私が連れて来ました』と、下山後、一人の婦人が懐から一枚の写真を取り出し、見せてくれたんです。頭を殴られたような衝撃を受けました。もし、その思いを先に知っていたら、山頂で『よかったですね、ご主人も喜んでますよ』と声を掛けてあげることができたはずです」。 信仰登山の歴史が息づく富士吉田で、『合力』を起業して13年。〝ごうりきスタイル〞は結婚記念、親子の思い出作りなど「大切に登りたい」と願う人たちによって、口コミで広がっています。 これまでの登頂ガイド数は、600回以上。「亡くなった息子さんの命日に登ってきたお母さんの目の前で、古くから御来迎と呼ばれる光輪(ブロッケン現象)が現れるなど、富士山は何度となく奇跡を起こしてくれました」。 「こんなに富士山の近くにいるのに眺めているだけではもったいない。私も初めて登ったのは30歳の時ですが、富士山は私の人生観を変えてくれました。自分にとって大切な何かを、ゆっくり探しながら富士山に登ってみてください。その体験が、世界遺産になった富士山の本当の価値を知ることにつながると思います」。御来光を見ると日本人としてのDNAを呼び起こされ、思わず手を合わせます富士山をフィールドに仕事をしたいと思う若者が増えてほしい。そのためにも子どもの頃から富士山に触れる体験をしてもらいたいふれあい17

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