ふれあい特集号vol.42(デジタルブック版)
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03 ハウス1棟につき1千万円近くの費用が掛かることから、「自力での再建は無理だと目の前が真っ暗になりました」と望月さん。難を逃れた2棟のハウスでは、すでにピオーネが実を付け始めていたため倒壊したハウスを撤去する間もなく、種なしブドウにする作業に追われるようになったといいます。「私たちが想像する以上に辛かったと思いますが、いったいどうやって立ち直ったんですか」と尋ねる萩原さんに、「途方に暮れていたときに、日川高校のラグビー部の生徒たちがボランティアに来てくれましてね。慣れない手つきで一生懸命にビニールを剝がしたり、パイプを片付けたりしてくれたんです。その姿に力をもらい、もう一度やってみようと。それが、新たに動き出すきっかけになりました」と望月さん。喜久美さんも「ありがたいことに、国や県、市からの援助も早い段階で決定したものですから、気持ちが楽になり、前を向くことができました」。 新しいハウス用にと4月に植えた苗木は順調に成長し、すでに萩原さんの背丈ほどになっています。「ハウスの再建が今秋に決まったので、今年の農閑期は忙しくなります」。お二人に笑みがこぼれます。 幸いにも、露地栽培のブドウ棚は無事だったため、案内されたブドウ畑には、色付き始めた大粒の巨峰がたわわに実っていました。「うわぁ、見事なブドウですね。味の方はいかがですか?」と尋ねる萩原さんに、「収穫は2週間ほど先になりますが、糖度が高く粒ぞろいの良いブドウができそうです」とにこやかに語る望月さん。「良かった! 私も含め、全国には山梨の果物を待っている人がたくさんいるので、ぜひ、もうひと踏ん張りして、美味しいブドウに仕上げてください」 萩原さんのエールに、「山梨のブドウは知名度が高いです。フルーツ王国やまなしの生産者の誇りを胸に、皆さんの期待を裏切らないよう頑張ります!」と望月さんが力強く宣言。喜久美さんは「主人の思いに付いていきます」と笑顔で応えました。高校生ら多くの方の助けに励まされ前に進もうと決意した「フルーツ王国やまなし」の生産者の誇りを胸にふれあい折れてしまったブドウの木からは、新しい芽が。たくましいこの木からも勇気をもらったと「ブドウは、房の上の方が甘いんですよ」と説明する望月さん

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