ふれあい特集号vol.42(デジタルブック版)
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発酵食品の魅力を広め郷土の味を守りたい楽しみながら食の尊さを知ってほしい 甲州みその文化を伝えるため、出張ワークショップを開催したり、学校へ総合学習の講師として出向いたりと、精力的にみそ造りを教えている五味さん。 「子どもたちに楽しく覚えてほしいと思い、みそ造りの歌を作ることにしたんです。そうしたら、友人が力を貸してくれて、歌だけでなくダンスやアニメも出来上がりました」。協力の輪はさらに広がり今年2月には『てまえみそのうた』として絵本になり全国で発売されました。 「みそを造るのに1年、大豆を育てるところからでは2年かかります。時間をかけて食べ物と向き合うみそ造りは、食を尊いと思えるとても貴重な経験になります。こうした活動を通して、発酵に興味を持ったり、食べ物を大切にしたり、家庭でもみそ造りをするようになってくれるとうれしいですね」 絵本をシリーズ化したいという五味さんは、現在麹の歌を制作中です。 「最終的に日本の食文化の原点、田んぼの歌を作りたい。山梨から全国へ、発酵食品ファンの輪が広がって、その素晴らしさが浸透していくように、これからも頑張っていきたいです」 伝統を受け継ぎ、郷土の歴史ある味を未来につなげる五味さんの活躍は、穏やかな笑顔とともに続いていきます。武田信玄に関する文献にも出てくる甲州みそ。「この土地ならではの製法と味は観光資源になる可能性を持っているのでは」と五味さん「手前みそのうた」に登場する「発酵兄妹」。五味さん(右)と妹の洋子さん 明治元年から140余年にわたり醸造業を営んでいる五味醤油。今も代々引き継がれた製法にこだわり、手作りの良さを大切にしながら、みそと麹を中心に醸造しています。その六代目、五味仁さんは「日本の食卓に欠かせない発酵食品の魅力を広めたい」と日々活動しています。 「大学では醸造学科で勉強していました。3年の時に父がけがをしてしまい一時期店の仕事を手伝ったのを機に、家業を継ぐことを意識しました」。それからは、より真剣に学ぶようになり、発酵食品の魅力を強く感じるようになったといいます。「発酵って、目には見えない微生物を利用することで、保存が利いたり、おいしくなったりする。ロマンがあるなって感じました。例えば、麹を室で寝かせると、発酵して熱が出、湯気が立つ。何回見てもすごいなって思うんです」 五味醤油で造っているみそは『甲州みそ』。米麹と麦麹の両方を使う全国的には珍しい製法のみそで、県内各地で古くから親しまれてきた山梨の味です。しかし、昔から各家庭で盛んに造られてきたみそが『甲州みそ』と呼ばれていることは、あまり知られていません。そこで五味さんは、山梨の人に甲州みそを再認識してもらいたいと考えるようになりました。 「甲州みそと地元産の野菜で作ったほうとうは最高。長い歴史の中で受け継がれた郷土の味は守りたいですね」みそダンスを踊る五味さん(中央)と園児たち。「手前みそのうた」は北杜市の食育プログラムの教材として採用され、体育の授業や運動会で使用されている歌とアニメはwebで公開されていますふれあい一瞬を大切にきらめく やまなしのシュン!手前みそのうた検索むろしょうゆこうじ17

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