ふれあい特集号vol.41(デジタルブック版)
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「ぬくもり」や「思い」までも伝える本。メッセージを添えれば特別な贈り物に山梨英和中・高の三井校長から、生徒が制作したプリンス・エドワード島のジオラマの説明を受け、力作に感心する村岡さん  08と本当によく似た風景があって、私もドキッとしました。知事 当時の山梨は、今以上に自然が豊かで美しかったでしょうし、また甲府も、この地に住んでいた太宰治が「きれいに文化の、しみとおっているまち」と評した通り、文化的水準の高い、非常に静かな、落ち着いた地方都市でしたからね。村岡 文化的レベルの高さは私も感じます。だからこそ、明治維新後、宣教師がこの地に布教しようと考えたのですね。知識人もいて、そうした土壌があったということだと思います。それに、山梨県立文学館のように設備の整った文学館は東京でも珍しいですね。山梨にゆかりのある文学者が多いことにも驚かされます。知事 私は少年時代、『十五少年漂流記』や『ガリヴァー旅行記』なんかを夢中になって読みましたが、女の子はみんな『赤毛のアン』でしたね。戦後の民主化政策の中にあって、自分の夢に真っすぐに進んで行くアンの生き方は当時の女の子の共感を呼び、目標にもなったのでしょう。そういう意味で、日本の文学の歴史において大事な本だと思いますね。村岡 そういえば、甲府の駅前にあるすてきな建物。あれは県立図書館だそうですね。制服を着た学生たちが楽しそうに出入りする姿を拝見して、とてもうれしくなりました。知事 2012年11月のオープン以来県民の皆さんに幅広くご利用いただき、年間来館者数は全国2番目を記録しています。図書館主催の講演会なども開催しているのですが、今年からは、スペインの〝サン・ジョルディの日〞に倣って「大事な人に思いを込めて本を贈る」習慣を広めようという活動も阿刀田館長の発案で始めました。村岡 祖母も、よく家族に本を贈ってくれました。わが家の本棚には、「愛するみどりへ」、「美枝ちゃんへ、おばあちゃんより」など、祖母のメッセージが書かれた本がたくさんあります。やっぱり「愛する誰々へ」なんて書かれると、その本は本当に特別な本になりますよね。そして、その人が亡くなった後も、その本を通して贈った人の人柄や温かさのようなものまでが伝わってくる。本って、そういう力のある素晴らしいものだと思います。知事 恵理さんは、おばあさまからどんな本を贈られたのですか?村岡 それが、残念ながら私は本を贈ってもらっていないんです。私が生後11カ月のときに亡くなってしまったので。それで、一冊でいいから「恵理ちゃんへ」という本が欲しかったなぁと、ずっと知事対談横内正明村岡恵理作家『アンのゆりかご 村岡花子の生涯』作者山梨県知事

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