ふれあい特集号vol.41(デジタルブック版)
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《農民の家族》1871-72年 油彩・カンヴァスウェールズ国立美術館蔵Lent by Amgueddfa Cymru ‒ National Museum Wales山梨 ミレー展 ミレーの作品というと農民が大地で労働する風景が有名ですが、彼は、農民の姿を、家庭生活を含めトータルで描いた画家でした。今回の特別展では、日常の情景を描いた作品にも焦点を当てていますので、ミレー作品の新しい広がりを楽しんでいただけると思います。 また、初期から晩年までの幅広い作品を紹介しますので、ミレーの画業の全体像を捉えることができます。日本で初期作品をこれだけまとめて見られる機会は、まれでしょう。 本特別展のテーマは「愛しきものたちへのまなざし」。ノルマンディーの寒村で過ごした少年時代のまなざしや、身近な人に向けたまなざしを感じ取ることができる作品を展示します。妻と9人の子どもたちへの父親としての温かいまなざしも、読み取ることができると思います。さらに厳しい労働としての側面が強調されてきた「農民画」について、いのちを繋ぐ大地での営みに注いだまなざしとしての側面を紹介します。 働くことや食べることといった日常を描いたミレーの作品は、自分の生活を見つめ直すきっかけになるものだと思います。自身の日常と重ねてみると、より作品の温かさが感じられるのではないでしょうか。 また、私は仕事柄、毎日ミレーの作品を見ていますが、その日の気分や体調によって毎回見え方が変わり新たな発見があります。皆さんもご家族や友人と、お互いの感想や発見を話しながら見ていただくと、より楽しめると思います。 当館は開館に当たり、山紫水明の地・山梨にふさわしいと、ミレーの《種をまく人》と《夕暮れに羊を連れ帰る羊飼い》を購入しました。それから35年を経た今では、国内有数のミレーのコレクションを誇っています。開館以来、県立の美術館が継続して作品を購入することができたのは、県民のご支持をいただいてきたから。当館のコレクションは、皆さんに育てていただいた、皆さんの財産なのです。 本特別展のチケットで、常設展示のミレー作品もご覧いただけます。これだけ多くのミレー作品を一度に鑑賞できるのは、山梨だからこそ。この貴重な機会に、ぜひ、ご来館ください。いのちの営みに向けた温かいまなざしミレーの作品世界の新しい広がり身近な人と共有し新たな発見をコレクションを育ててきた山梨県民にこそ、見てほしい山梨で出会う新たなミレー作品の世界特別展の見どころを語る県立美術館 小坂井 玲 学芸員《クーザン村》 1854-73年 油彩・カンヴァス ランス美術館蔵 © Photo: C. Devleeschauwer《種をまく人》1847-48年 油彩・カンヴァスウェールズ国立美術館蔵Lent by Amgueddfa Cymru ‒ National Museum Wales【問い合わせ先】 県立美術館 甲府市貢川1-4-27 TEL 055-228-3322 FAX 055-228-3324記念講演会①ミレーを取り巻く環境や風土との関わりについて(トークセッションあり)日時/7月19日(土) 午後2時 ~講師/井出洋一郎氏(府中市美術館館長)   ルイーズ・ル・ギャル氏         (トマ=アンリ美術館館長)記念講演会②社会的な背景を踏まえた、絵画における農民像や家族像の需要について日時/8月2日(土) 午後2時~講師/馬渕明子氏(国立西洋美術館館長)キッズ・プログラム「羊と生きるー羊毛を身近に体験する」作品に描かれた羊や羊毛の文化についてのレクチャーと実技日時/7月30日(水)   ①午前10時~正午 (対象:小学生)   ②午後1時30分~3時30分 (対象:中学生)講師/西岡優子氏 ((株)アナンダ)定員/各回30名申込期間/7月8日(火)~7月29日(火)関連イベントつな15ふれあい検索

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