ふれあい特集号vol.38(デジタルブック版)
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「芸術の源泉」浮世絵に描かれた富士山の魅力富士山と芸術の関わりについて話す県立博物館 近藤暁子学芸員  富士山を描いた浮世絵として、真っ先に挙げるべきは、葛飾北斎の「冨嶽三十六景」です。それまでは役者絵に代表される人物画が主流だった浮世絵に、北斎はこのシリーズによって、風景画というジャンルを確立しました。 三十六景といいながら、実は46枚から成るこの作品の魅力は、眺める場所や季節、時間、気象、視点などによってさまざまに姿を変える富士山を描き出しているところにあります。そして、他に類を見ない巧みな構図や、生き生きとした一つ一つのモチーフの描写が、それらに命を吹き込んでいます。この作品が歌川広重をはじめとする後進の浮世絵師や近代日本の画家、さらには西洋の芸術家にまで影響を与えたことを考えると、富士山という山が芸術家の創作意欲をかき立てる特別な山であるということも、また、言えるのではないかと思われます。作曲家のドビュッシーも冨嶽三十六景の一つ「神奈川沖浪裏」を部屋に飾り、そこから着想を得て交響詩「海」を作曲したといわれています。 北斎が描いた「冨嶽三十六景」。そのほとんどに、富士山の姿と共に庶民の日常の営みが描かれています。このことから古くから富士山は人々の生活と共にあったことがしのばれます。05 葛飾北斎 「冨嶽三十六景」《神奈川沖浪裏》県立博物館蔵葛飾北斎 「冨嶽三十六景」《凱風快晴》県立博物館蔵葛飾北斎 「冨嶽三十六景」《甲州三坂水面》県立博物館蔵葛飾北斎 「冨嶽三十六景」《諸人登山》県立博物館蔵当時の富士講の様子が描かれている歌川広重 「冨士三十六景」《甲斐御坂越》県立博物館蔵常設展示室では、10月23日から12月13日まで「冨士三十六景」(歌川広重)の一部を展示します。笛吹市御坂町成田1501-1 TEL 055-261-2631FAX 055-261-2632県立博物館

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