ふれあい特集号vol.36(デジタルブック版)
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 染めの作業は「糊作り」から始まり、「下絵写し」や「染付」など10の工程があります。中でも難しいとされるのが、和紙の筒から糊を絞り出して絵柄の輪郭を描く「糊置き」です。 「仕上がりの色合いを左右する大事な工程です。技はもちろんですが、気持ちも大切です。とても集中力が必要な作業ですが、一番楽しい時なんです」と展弘さん。伝統の技で染めた色鮮やかな鯉のぼりを手に。後ろは川中島の合戦を描いたのれん▲20年余り前までは釜無川で糊を落とす水洗い をしていた。川を泳ぐ鯉のぼりの姿は、早春の 風物詩だった▲江戸はけを使って色を付けていく「染付」の 作業。ぼかしの美しさは井上染物店ならでは井上染物店七代目井上展弘さんのぶ ひろ 最近はナイロン生地にプリントして作られた鯉のぼりが主流ですが、独特の色の鮮やかさや風合いは、染め付けされた木綿布の鯉のぼりならでは。 「古くなっても味があり、代々引き継げるのが伝統的な染物の良さ。染物は同じように作っても、すべて異なります。一点一点がその人のためだけに染めているものなんです」 「最近は地域の人から『うちの鯉のぼりはお前のじいちゃんが染めてくれたものだよ』などと声を掛けられます」 「先代たちが染めたものが今も大切にされているのは本当にうれしいですね。自分も何十年も大切にしてもらえるような鯉のぼり、武者のぼりを作っていきたいです」。その言葉からは、江戸時代から続く伝統の技と心を受け継いだ展弘さんの熱い思いを感じることができました。何十年も大切にしてもらえる「のぼり」を17

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