ふれあい特集号vol.35(デジタルブック版)
2/24

阿刀田 直木賞受賞おめでとうございます。直木賞は本当のデビューとも言える賞。その意味ではこれからの一年間をどのように過ごすかがとても大切です。みんなが注目していますからね。辻村 はい、頑張ります。ところで、私が初めて阿刀田さんの作品に出会ったのは地元の〝図書館〞でした。今日は同じ〝図書館〞で阿刀田さんにお会いできるということで、とても楽しみにしていました。阿刀田 それは光栄だなぁ。辻村さんは小さな頃から作家になりたいと思っていたのでしょう? 作家は、いろんなことを知っていないとやっていけないですからね。どんなものをお読みになりました?辻村 図書館の大人コーナーに最初に足を踏み入れて出会ったのが、ノベルズの世界です。そこからミステリー好きになって、阿刀田さんのことも知りました。特にショートショートは夢中になって読んだ記憶があります。私の読書は好きな作家を中心に、まるで新しい地図ができるように広がっていきました。阿刀田 辻村さんの巧みな文章は、いろんな作家の作品を自由に楽しんできた読書経験から生まれてくるのかもしれませんね。辻村 新しい県立図書館は、物語の舞台になりそうなほどすてきな場所ですね。高校時代通った図書館がこんな風に生まれ変わり、「母校の後輩たちはここへ来るのか」と、うらやましく思います。阿刀田 この開放的な空間もいいですよね。こんなにも天井が高いと、心も広がる。うつむいて携帯を眺めていたのでは志は大きくなりませんからね。環境が人に与える文化的影響は、絶対にあると思います。こういう場所にいるだけでもちょっと賢くなった気がしませんか?辻村 そうですね。最近は本をIT機器で読む人も増えていますが、私は今も図書館に来るとワクワクします。阿刀田 人々が電子で簡単に本を読む  02本との出会い、読書の楽しみ新しい文化の風新県立図書館開館国民文化祭開幕やまなし発展の芽辻村深月×阿刀田 高あとうたかしだみづきむらつじ対談第147回 直木賞作家辻村深月さん●Prole1980年笛吹市生まれ。山梨学院大学附属高校から千葉大学教育学部。大学卒業後、山梨県内で働きながら、作家活動を続けていた。2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。11年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞を受賞。ふるさと山梨を意識した作品も数多く発表している。●著作の紹介 『鍵のない夢を見る』文藝春秋刊町の中に、家の中に、犯罪の種は眠っている。第64回日本推理作家協会賞候補となった『芹葉大学の夢と殺人』を含む5編を収録。5人の異なる立場の女性を主人公に、泥棒、放火、誘拐など5つの犯罪をモチーフにして、地方に住む女性の閉塞感や普通の人々に魔が差す瞬間を巧みな心理描写を交えて綴っている。第147回直木賞受賞作品。図書館に大切なものとは?山梨県イメージアップ大賞を受賞し、横内知事と握手をする辻村さん

元のページ  ../index.html#2

このブックを見る