ふれあい特集号vol.35(デジタルブック版)
15/24

河口湖畔と富士山 。「この美しい風景のような喜ばれる酒を仕込みたいですね」そう語る表情からは酒造りに対する熱い思いが伝わってきます。 蔵開きでは初沢さん自らが案内役となり、お客さまに出来上がったばかりの新酒を振る舞うそうで、「人前に立つのは実は苦手。でも直接感想を伺えるのはうれしいですね。頂いたご意見を生かしてもっと多くの人に喜んでもらえる酒、人の心に響く酒を造っていきたい」と笑顔を見せます。 初沢さんの思いが込もった新酒を味わえるのは2月。蔵開きが一層待ち遠しくなりそうです。地元米と富士の伏流水から造られる100%富士北麓産の地酒「雪解流(ゆきげりゅう)」蔵開きで酒造りの説明をする初沢さん河口湖畔と富士山 。「この美しい風景のような喜ばれる酒を仕込みたいですね」蔵開きで酒造りの説明をする初沢さん 富士山が雪に覆われ、寒さが一段と厳しさを増す初冬。富士北麓唯一の造り酒屋・井出醸造店では、酒造りの本格的な時季を迎えます。 初沢則孝さんは、江戸時代末期から続くこの老舗醸造店の杜氏。「富士の麓に湧き出す清冽な水で仕込む酒は、まさにこの地でしか造れない地酒です」と胸を張ります。 初沢さんが酒造りの道に入ったきっかけは、農業大学時代に実習先の農家で飲ませてもらった一杯の酒でした。 「一口飲んで『すごい! この酒。こんな酒を造ってみたい』と思ったんです。それこそが井出醸造店の酒でした」 その時に感じた思いを胸に、卒業と同時に井出醸造店に入社。蔵人として、酒造りに取り組み始めました。 杜氏となり、今季で5回目の冬。「蔵人を仕切る立場になり、型にはまりそうになりますが、歴史ある造り酒屋の伝統を守るには、たとえ失敗してもどんどん攻めていくことが必要だと思っています。大切なのは、お客さまに『うまい』と言われる酒を造ること。攻めることが自分の酒造りをさらに高め、伝統を守ることにつながると信じています」。富士山の伏流水で酒を仕込む15

元のページ  ../index.html#15

このブックを見る