ふれあい特集号vol.31(デジタルブック版)
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5 双雲さんが以前から欲しがっていた硯こそ、江戸時代から続く甲州雨畑硯の老舗「雨端硯本舗」の硯でした。工房を訪れ、13代目、雨宮弥太郎さんの作った硯を手にすると、「洗練されたデザインがとても美しい。まるで最高級のスポーツカーを見ているよう。シンプルな曲線に職人のこだわりを感じます」と絶賛。早速墨を磨ってみると、「硯の粒子がきめ細かいので感触がすごく滑らかで、めちゃくちゃ心地よい」と噂にたがわぬ品質の高さを実感しました。 雨畑硯は、地元で採れる良質な粘板岩を原料に、職人の手作業によって、「ノミで彫る」「砥石で磨く」「漆を塗って仕上げる」という三つの工程を経て作られます。 「硯は、雑念を取り払い、自分の内面と向き合う時間を創るための舞台装置」と考える雨宮さんは元々彫刻家として培ってきた感性を生かし、使い手の立場に立った究極の硯を追求しています。 「硯作りは、大地そのものの原石と向き合い、頭で考えるのではなく、目指すイメージに向かって自然に体が動き、いつの間にか形ができ上がるのが理想です。そのためには、スポーツと同じように日々の鍛錬の積み重ねが欠かせません。原石と自分の思い、そして体が一つになった時、初めて良い硯ができる」と話す雨宮さん。これに対して双雲さんは「ビジョンを持ち、その時々の状況に反射的に対応しながら理想の作品を創り上げようとする僕の姿勢と全く同じ」と応じました。それぞれの世界で新しいものを追い求める二人の間には共鳴する部分が多く、双雲さんはますます雨畑硯が放つ魅力に引き込まれていきました。道の駅 富士川ふるさと工芸館 (富士川クラフトパーク内)身延町下山1578TEL0556-62-5424富士川ふるさと検 索峡南地域の伝統工芸(手漉き和紙・印刻)や陶芸、ガラス工芸が体験できます。芸術に親しみ、広大な公園と食事も楽しめる施設です。開館時間 4月~9月:9:00~17:30     10月~3月:9:00~17:00休 館 日 水曜日(水曜が祝日の場合は翌日)、祝日の翌日、12/27~1/1身延町なかとみ和紙の里身延町西嶋345TEL0556-20-4556なかとみ和紙検 索西嶋の和紙とそれを用いた小物などを展示販売しています。また、和紙の手漉き体験も楽しめます。開館時間 9:30~17:00休 館 日 火曜日(火曜が祝日の場合は翌日)、 12/28~1/1Information雨宮さんの作った硯を見て、「このきめ細かさと微妙な曲線がたまらない」と話す双雲さん300年以上続く老舗の風格を感じさせる雨端硯本舗硯を彫る際は、ノミを指先でコントロールしながら、ノミの柄を肩で押して彫り進めます地元で採れる良質の粘板岩と   職人の技が融合した芸術的な硯 1690年、雨宮孫右衛門が早川の河原で黒一色の流石を拾い、硯を作ったのが始まりとされる。1784年、将軍一橋公に献上し、その名が広く知られるようになった。以来、多くの書道家に愛される逸品です。甲州雨畑硯甲富士川町あめはた すずり ほんぽ

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