vol.20(平成21年3月31日発行)
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Yamanashi Brandやまなしブランド %料の生産にも工夫が重ねられていった。生産組合全体で日量1万キロ、年間で365万キロの牛乳の生産を目標にかかげ、奮闘の日々が続いた。努力の末、ようやく昭和51年に年間100万キロ、そして平成2年には、ついに40年近い歳月をかけて年間365万キロを達成し、祝賀会を開くまでに成長した。その喜びは、後を継ぐ開拓二、三世の心にも深く刻み込まれている。 酪農家二世、清里酪農部長を長く務めた酒井治孝さんは、子供の頃にこの地に入植。まさに増産に励んだ時代を生きてきた。今は、清里の酪農の新しい動きへのつなぎ役となっている。後継者に任せた新しい牛舎には、生まれて間もない子牛をはじめ30数頭のホルスタインが、元気に春の訪れを待っていた。隣接している趣のある古い木造の牛舎からは、苦しかった開拓の歴史もうかがえる。 県内唯一の生乳処理施設「清里ミルクプラント」の動きが具体化したのは、平成14年から。観光地・清里として一躍脚光を浴びたブームが落ち着いてしばらくしてからのことだった。20数戸の酪農家が集まり、行政からの支援も得て有限会社を設立。まずは安全な食品として消費者のニーズに応えるため、非遺伝子組み替え作物による配合飼料や有機質肥料を主体にして栽培された牧草、トウモロコシなどの粗飼料で牛を育て、こだわりの牛乳を販売するため、酪農家自らの手による、日量最大千キロほどの生乳処理施設が造られた。そして、低温殺菌の風味を生かした「きよさと牛乳」をはじめ、大量生産には不向きな手作りの製品を商品化。チーズ、ヨーグルトなど冷涼な八ヶ岳高原ならではの特性を生かした新製品の開発も急がれた。やがて試行錯誤の末、こだわりの新製品が一つ一つ生まれていった。 清里ミルクプラントは、工場だけでなく、製品を直売する店舗も併設している。店舗がある「ともにこの森」の一角はオフシーズンの清里でもなかなか活気のあるスポットだ。昔ながらのシンプルなビン入りの牛乳や飲むヨーグルト、ソフトクリームも大人気。社長の小清水八市さんは、「良いものづくりが生産者としての原点。ここで暮らし生産し製品化できる喜びがある」と、酪農にかけた先人達の夢をしっかりと受けついでいる。 今では、八ヶ岳リゾートアウレットへの出店も好調。清里ミルクプラントの牛乳を原料にした山崎製パン(武蔵野工場)の「ご当地パン」や山梨名産のころ柿を使った「ころ柿アイス」など、異業種との共同開発も注目されている。工場長の植松佑一さんは「わざわざ行楽の帰りに遠回りして寄ってくださるお客様のためにも、苦労して作った牛乳をしっかりした商品にしなければ」と強い思いを持ちつつ、さらに新しい展開に期待を寄せている。今年は幕張メッセで開催された「フーデックス・ジャパン」をはじめ、大きな展示会への出店が続く。高品質な牛乳をベースに多様なチャンネルを想定した商品開発は、これからも続いていく。30数頭のホルスタインが飼われている酒井牧場。春が待ち遠しい生後3カ月の子牛と、酒井牧場の酒井治孝さん。ようやく手応えを感じ始めたという小清水社長(右)と、植松工場長(左)。工場を併設した店舗「清里ミルクプラント」には、四季を通じ客足がたえない。懐かしいビンがさらに美味しさを引き立てるきよさと牛乳。「ご当地パン」は県内外で販売されている。17ふれあい

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