vol.19(平成21年1月1日発行)
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ハンター教授から栽培技術指導を受ける生産者世界的権威を招き 栽培技術を学ぶ  平成19年8月には、醸造用ブドウ栽培の世界的権威である南アフリカ ステレンボッシュ大学のハンター教授を招き、5日間に渡り栽培技術の研修が行われました。講演会や県内各地のブドウ畑で行われた栽培技術指導には多数のワイナリー関係者、栽培農家などが参加し、ブドウの品質を高めるための栽培管理の理論と実践技術について指導を受けました。 ワイン醸造家にとって、酸化を防止しブドウの香りを生かしたワインを醸造することは重要な課題です。近年、ヨーロッパでは、炭酸ガスを利用することにより醸造過程でブドウの実や果汁が空気と触れることを避け、酸化を最小限に抑える方法が用いられています。しかし、この方法では高額な機械が必要となるため、県内ワイナリーからは、簡易な方法の開発が待ち望まれていました。 ワインセンターでは、平成19年に簡易な装置で食品添加物の液化炭酸ガスを噴霧する方法を開発し、現在2シーズン目の実証試験を行っています。  すでに県内13ワイナリーがこの装置を導入し、品質向上に向けた取り組みが進められています。 世界的な名醸地で、醸造用ブドウの栽培技術やワインの醸造技術を学び、その知識や手法を本県のワイン造りに生かすため、職員を世界各地に派遣しています。  平成19年8月から4カ月間、果樹試験場の研究員と普及指導員をアメリカ・カリフォルニアに派遣しました。カリフォルニアワインは、品質の高さから、フランスなど歴史ある名醸地と並んで高い評価を受けています。研究環境が整っているカリフォルニア大学と、特に品質の高いワインを産出している地域、ナパバレーを中心に研修を行いました。  また、ワインの本場フランスでブドウ栽培や醸造技術を学ぶため、工業技術センターの支所ワインセンターの研究員を、昨年8月からワインの醸造が終了する12月までの間、ブルゴーニュの名門ワイン商「アルベール・ビショー社」へ派遣しました。今後、現地で学んだ知識や技術をワイナリーに広める取り組みを進めることとしています。  さらに、今年1月からは果樹試験場の研究員をフランスのボルドー大学に派遣します。この研修では、ブドウ栽培学、醸造学などの知識を習得するとともに、ワイナリーでの実地研修を通して技術を習得することとしています。  カリフォルニア州ナパバレーで醸造用ブドウの栽培技術を研修してきました。カリフォルニアは、からっとした気候に広大な土地、日本のような棚栽培でなく垣根栽培が普通ですから風景は山梨とはずいぶん違います。  まず感じたのは、品質の高いブドウが非常に高い評価を受けていることです。原料を重視することが、品質の高いワイン造りにつながっているんです。  ブドウの糖度を高め完熟させるには十分な日照時間が必要です。国内で日照時間日本一の山梨でも、世界的に見ればさほど長くありません。また、日本では夏に雨が多いですが、ナパバレーではほとんど雨が降りません。昼夜の温度差も大きく、カリフォルニアのなかでも好条件。気候に合った栽培技術が確立されており、果実の成熟も、こちらとはかなり違います。ヨーロッパの伝統的な産地に比べれば歴史は浅いのですが、その分、産地形成の参考になるヒントや目標とすべきブドウの姿を学べました。  その地域に合った品種を選択し、ブドウを完熟させる栽培技術を確立することが必要です。目標とする樹や果実をイメージし、山梨の風土の中で努力を続けることが大切だと思います。 果実の風味を生かしたワイン造り 先進地カリフォルニアで 醸造用ブドウの栽培技術を研修 果樹試験場栽培部生食ブドウ栽培科 宇土幸伸さん 研究員 Yukinobu Udo海外の名醸地で エキスパートを育てる 09ふれあい

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