青木ヶ原樹海竜宮洞穴(溶岩洞穴群)東海自然歩道 富士山は大きく分けて4つの異なる火山が重なってできていると考えられている。年代順にまず「先小御岳火山」が、現在の富士山の北側に誕生。そこに「小御岳火山」が重なり、さらに約10万年前頃から「古富士火山」が活動をはじめ、山頂からの爆発的な噴火を繰り返しながら小御岳を覆っていった。この時代に富士山は高さ約3,000mまでに成長し、ほぼ今の姿になったと推測されている。約1万年前ごろ活動を開始した「新富士火山」は、まず粘度の少ない玄武岩質の溶岩流を大量に流出させて広いすそ野を形成。その後の度重なる噴火で優美な円錐形の成層火山体が完成したとみられている。有史以降は小中規模の噴火が中心だが、貞観•宝永の時代それぞれ大規模な噴火があった。 このように富士山が独立峰として類い稀に高く美しい姿になれたのは、三つのプレートが重なりあう地球上でも珍しい地点にあることや、4階建て構造の火山であること、流れやすい玄武岩の溶岩でできているためなど、様々な要素が奇跡的に重なりあったためである。誕 生荒ぶる山と美の源泉1/せのうみ《富士五湖西部》エリア 富士山の噴火により誕生した溶岩洞穴群のうち約半数が青木ヶ原樹海にある。夏でも氷柱が消えない洞穴など、外からは見えない富士山の神秘が息づく場所であり、富士山噴火の凄まじいパワーが■って見えてもくる。 その一つ「竜宮洞穴」は湖につながる深い洞穴で、苔むした洞窟入口には小さな祠があり、水神の「豊玉姫命」が祀られている。れっきとした神社庁登録の「剗海(セノウミ)神社」である。古代の湖の名が付けられてることからも歴史の古さが偲ばれ、言い伝えでは、洞穴には竜神が棲み、近隣で干ばつになると雨乞いがされたという。また 富士講の時代には巡礼の霊場でもあった。国指定天然記念 西暦864年の貞観大噴火で流れ出た膨大な溶岩流(青木ヶ原溶岩流)は、北西麓にあった広大な湖「剗の海」に達し、大半を埋没させた。この時にできた約30平方kmにおよぶ溶岩地帯の上に形成された原始林が青木ヶ原樹海。ツガ、ヒノキなど針葉樹にミズナラなど広葉樹が混ざる混合林で、溶岩の■間のわずかな土壌や苔むした倒木の上に樹々が必死で根をはる姿など、若い火山の富士山ならでは、貴重な森の様相を観察できる。4世界に誇れる富士山の森を安全に楽しめるのが東海自然歩道。東京・高尾山と大阪・箕面を結ぶ、全長1,700kmに及ぶ自然歩道のうち、青木ヶ原樹海を横断するコースでは、ガイドツアーも充実。溶岩洞穴群や野鳥観察、森林浴などを満喫しながら、富士山の噴火がいかに絶大であったか想像してみたい。富士山火口東海自然歩道 紅葉台から富士山富士山の誕生
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