富士山公式ガイド2023日本語版
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荒ぶる山と美の源泉信仰のめばえ信仰の大衆化水の霊場巡り山頂へ至る道1123453誕 生遥 拝富士講巡 拝登 拝誕 生さい   こ富士山の大噴火が生み出した太古の湖と原生の森空からの西湖の眺め荒ぶる山と美の源泉/せのうみ《富士五湖西部》エリア構成資産 富士五湖のなかでも、青木ヶ原樹海に接する西湖の周辺は、富士山の噴火活動が湖と森を誕生させたころの太古の風景が今も息づいている。 5,000年以上前、富士山北西麓には、「剗の海(セノウミ)」と呼ばれる大きな火山性湖が広がっており、複数回にわたる噴火による溶岩流の流入によって、現在の本栖湖・西湖・精進湖が誕生した。まず、剗の海から本栖湖が分かれ、さらに1,200年前の大噴火による大量の溶岩流が「剗の海」を二つに分断。西湖と精進湖を誕生させた。そして、埋めつくされた広大な溶岩流の上に、約1,200年かけて育った原生の森が青木ヶ原樹海。以来、噴火による地形の変化はほぼ無く、湖と森は十世紀の時の流れをそのままたたえている。 西湖の北西岸に「根場浜」という景勝地がある。浜辺に立つと、正面に望む富士山から樹海の森をつたい湖水があふれ流れてきているように見える。足もとに打ち寄せるさざ波は驚くほど清らかだ。鏡のような湖面に、“逆さ富士”を映すこともある。また西湖は、その透明な湖底で、ヒメマスやフジマリモなど、希少な生命を育み守ってもいる。その象徴が2010年、70年ぶりに発見された「クニマス」。一度は絶滅したとされていた田沢湖の固有種が、西湖の湖底でひっそりと生き続けてきた。一方、湖畔から樹海の森に一歩足を踏み入れれば、そこは、火山たる富士山を内側からのぞいた世界。むきだし溶岩に生き物のようにからみつく樹々の根、神秘的な森を覆う苔の絨毯。芽吹きの季節や紅葉のころ富士山の原生の森は美しさを極める。西湖周辺に点在する「竜宮洞穴」「西湖コウモリ穴」「西湖野鳥の森公園」「富岳風穴•鳴沢氷穴」等、観光名所を結ぶ散策路を利用すれば、そんな樹海の森を手軽に探検できてしまう。 後に富士山信仰が繁栄する時代、西湖には「青木龍神」の別名が冠されていた。その誕生時からずっと、西湖と樹海の森は切っても切れない関係にある。西 湖

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