遥 拝かわ ぐち あさ ま じん じゃ樹齢千年をこえる神木が富士山信仰の原点をものがたる10聖地を見守る七本杉信仰のめばえ/河口湖エリア構成資産 富士山の有名な景勝地もふくめ湖畔に多くの“聖地”が点在する河口湖。その湖畔のにぎわいから一歩足を踏み入れると、あたりの空気が一変する場所がある。 天を突くがごとき杉の巨木が迎える参道の先は、1,200年の時を超え、「富士山信仰」の原点を今に伝える「河口浅間神社」のご神域。全国に約1,300社ある浅間神社の筆頭に位置づけられる古社のひとつだ。 “浅間”は、一般に火山をあらわし、「浅間大神(アサマノオオカミ)」は、富士山の神霊そのものを指したとされる。(現在は、木花開耶姫命(コノハナサクヤヒメノミコト)と同一視されている場合が多い)。 奈良時代の末ごろから、それまで穏やかだった富士山は、ふたたび火山活動を活発化させる。噴火は祈りを怠ったことによるカミの怒りとし、浅間大神を見直し、山麓を中心に鎮祭を執り行う浅間神社も建立されていく。この浅間信仰こそ、今日まで変遷しながら続く「富士山信仰」という潮流の源ともいえる。 時は、西暦864年(貞観6年)の5月。富士山は、歴史に残る貞観の大噴火を起こす。噴火は年を越えても鎮まらず、865年、時の朝廷の命により、駿河国(静岡県)だけでなく、甲斐国(山梨県)側にも浅間大神が祀るべしとし、この「河口浅間神社」が建立されたと伝えられる。 その河口の地は、富士山の真正面に対峙しながら、河口湖に隔てられ、大噴火の膨大な溶岩流から免れていた。富士山は火の神であると同時に、水の神なのだ。 境内には「七本杉」が聖地を見守り、背後の山中では、「母の白滝」が清冽な水しぶきをあげている。古代には、富士北麓の信仰の中心であった神社一帯は、今も祈りの聖地にふさわしい霊妙な空気に包まれている。2河口浅間神社
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