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自然界の草花や昆虫をモチーフに、プリカジュール(※1)など高度なエナメル技法を駆使したジュエリーを創作している村松司氏。貴金属加工、宝石研磨も含めた全工程を一人でこなし、独自の世界観を築き上げているムラマツジュエリーは、スイスで開かれた展示会でも絶賛を博したという。

小さな生き物たちがまるで今にも動き出しそうな、リアリティ溢れるジュエリーは一体どのようにして作られるのか。

その秘密に迫った。

(※1)プリカジュール(透胎七宝):金属の下地がなく、ステンドグラスと同じように光を通す。

昆虫とか植物をモチーフにした作品が多いですね。

そうですね。よくよく観察すると自然界には人が思いつかないような美しいカラーリングだったり造形美があって、それに触発されて作品を作っています。これは蝶の標本なんだけど、実際に自分で採って集めたんですよ。植物なんかも普通に散歩してて落ちてる物を拾ってサンプルとして集めています。近所じゃ変わり者だと思われてるかもしれない(笑)。リアリティを追求するために実物を見ながら作品を作っています。

どのジュエリーも色のグラデーションが絶妙ですね。

自然界のナチュラルな色合いを表現するためにエナメル技法を使っています。出したい色を出せるようになるまで7年以上かかりました。エナメルの色は炉の中の温度の環境設定だったり、エナメルを張る面積だったりと、色んなことに影響を受けますから、それをずっと研究してきたんです。作業の順序としては、赤とか青とかの釉薬というガラス質の粉を作っておいて、ベースとなる金属フレームの小さな隙間に載せていきます。微妙なグラデーションは釉薬を盛る厚さで調整していきます。炉に入れて焼き付けた後、磨いて、色合いを見て、また釉薬を載せて焼き付ける。この作業を数回繰り返して、出したい色を表現するんです。全てがデータ化されているわけじゃないから、最後には長年の経験と感覚がものを言いますね。

まさに職人技ですね。このペンダントは?

「ほおづき」をモチーフにしたジュエリーですね。これはプリカジュールの中でも、ベースとなる金属フレームが球状なのが特徴です。今まで平面状のプリカジュールはあったんですが、360度の完全立体でのプリカジュールはなかったんです。平面に載せるより技術的に難しいですからね。こっちの「うつぼかずら」も立体的なプリカジュールの作品です。

へえ!それはすごいですね。でもエナメルのジュエリーは取り扱いが心配です。

確かにエナメル部分はガラス質なので、身に着けていれば割れることもあります。だけど、僕が作るジュエリーは基本的に修理可能なんです。一般的な石付きのエナメルジュエリーの場合、修理するときにガラスの粉を800度近い高温炉の中で焼き付けるんですが、それで付いている石がダメになってしまうんです。だけど僕のジュエリーは石のパーツとエナメルのパーツが簡単にネジで取り外しできるようになっているので、エナメルの部分が破損しても直せるわけです。やはり身に着けてもらうのがジュエリーなので、壊れてしまっても補修ができるような作りにしています。

なるほど。それは身に着ける方は嬉しいですね。この蝶のかんざしは羽が動くんですね!

ええ。そういうギミックがあるジュエリーも作っているんですよ。テントウ虫のブローチはバネが入っていて羽がパッと開くし、こっちの蝶のかんざしは羽が風車のようにクルクル動きます(ページ下に可動式ジュエリーのムービーを掲載しています!)。あと可動式のもの以外にも、この「つくし」のブローチのように極小ダイヤをマイクロセッティングしたり、彫金技術で地金に模様を付けることもします。プリカジュールは製作工程における技法のひとつです。僕はジュエリーマスターや一級技能士の資格を持っていますが、ベースとなる貴金属加工の技術があってこそ、エナメル技法も際立つものだと思います。

そういった技術はどこで?

僕は宝石美術専門学校の卒業生なんです。研究科を修了しているので3年間通いました。学校ではエナメル技法やクラスプ(※2)を学ぶ授業があってそれが今の技術のベースになっています。卒業後は甲府市内のジュエリーメーカーに就職して、金属加工の職人として色んな技術を学びました。本格的にエナメル技法を始めたのは独立してからですね。学生時代に見に行ったラリック展(※3)にすごく衝撃を受けまして、それがエナメルに惹かれたきっかけでした。あと、学校の授業で体験したことも大きかったですね。

(※2)クラスプ:ネックレスやネックチェーンの止め金具。

(※3) ルネ・ラリック:19世紀~20世紀のフランスのガラス工芸家、ジュエリーデザイナー。アール・ヌーヴォー、アール・デコの両時代にわたって活躍。

そうだったんですね!そういえば村松さんは宝石美術専門学校の非常勤講師もしていますが、学生へのメッセージをお願いします。

ジュエリーの道に進むのであれば、強い意志を持って突き進んでもらいたいですね。そして、もっともっと色んなことに挑戦してもらいたい。学生時代に受けた授業や経験したことが、将来、自分ならではのオリジナリティとか付加価値につながっていくこともあるんです。学生たちには期待していますので頑張ってください。

 

企業情報

名 称:工房ムラマツ

住 所:山梨県甲斐市竜地1418-6

T E L:0551-28-4884

F A X:0551-28-2233

E-mail:tatsu-8@mx3.nns.ne.jp

U R L:https://www.kobomuramatsu-jewelry.com

 

 

蝶の標本

これ以外にも様々な植物や虫のサンプルがある。

プリカジュールの名作「うつぼかずら」

 

テントウ虫のブローチ

 

 

極小ダイヤをマイクロセッティングした「つくし」のブローチ

 

ペンダント「鶏」

↓可動式ジュエリーのムービー

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Tsukasa Muramatsu 村松司

山梨県出身●山梨県立宝石美術専門学校デザイン科修了、在学中に日本クラフト展新人賞受賞●同学校研究科卒業●日本クラフト展入選、高岡クラフト展入選●2001年、2003年 個展 銀座ACgallery●2005年イタリア・オロジェンマ展出展●2010年スイス・三人展出展●山梨県立宝石美術専門学校非常勤講師、(社)日本ジュエリーデザイナー協会会員、一級技能士、山梨県知事認定ジュエリーマスター(宝飾加工) の資格を持つ。