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12:シュール・リー法による醸造
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(1)醸造法の特色
 「シュール・リー Sur Lie」とはフランス語で「オリの上」という意味で、ロアールの河口のムスカデ・ワインに古くから利用されている方法です。我国でこの方法が、最初に甲州種に実用化されたのは、1983年です。シュール・リー法による醸造は、辛口・白ブドウ酒に適用される方法で、醸造終了後、オリ引きをせずに、長期にオリの上にブドウ酒を貯蔵する方法です。常識的には、醗酵が終ったブドウ酒は、オリが沈むと、上澄みのブドウ酒を早期に別 のタンクへ移動して、オリ引きをするのが、一般の醸造法です。オリと長い間接触させておくと、オリ臭が付くなど酒質が劣化する危険があったり、オリ引き作業中の適度の空気との接触は、新酒に存在する未熟な臭を消す効果 もあります。鉄則とされている早期のオリ引きを行わず、あえてオリと長期に接触させるシュール・リー法の特徴は、びん詰まで醗酵タンクに貯酒するため、タンク移動を避けることにより、ブドウ酒と空気の接触が少なく、醗酵中に発現したエステル香などの香気成分が多く残り、フレッシュでフルーティな香味を保持することと、オリ(酵母)が自己消化して、ブドウ酒に旨味を与え、豊かな味になること、特に甲州種の辛口には、官能的に苦味が少なくなることなどが利点です。
 シュール・リー法による優れた酒質を得るための最大のポイントは、きれいなオリを造ることです。醸造場、醸造機械のサニテーションに加え、きれいな果 汁が微生物学的に健全に醗酵した時、そこから得られるきれいなオリが必須条件です。

(2)醸造方法
1・果汁の清澄と仕込み
 常法により破砕、圧搾した果汁に亜硫酸50ppmを添加し、果汁を低温(10℃以下)に保持して、1晩のデブルバージュ(果 汁沈降)を行ないます。果汁中の過剰の繊維質などの固形分を除去しておかないと、醗酵終了後にきれいなオリになりません。
 上澄みのきれいな果汁を別のタンクに移動し、純粋培養した酒母を添加します。酵母の種類は一般 に使われている菌株で良いですが、健全で旺盛な酒母が必要である。増殖した酵母が醗酵終了後、オリとなるため、微生物的にきれいな醗酵を行なわせる必要があります。そのためには、醸造場、タンク等の醸造機器のサニテーションを徹底し、優良酵母による雑菌の汚染を受けることのない清潔な醗酵に注意しましょう。  補糖は、最終アルコール度が高過ぎないように22g(100ml中)、醗酵温度は低温15〜18℃を推めます。

2・酵母の自己消化
 醗酵終了後、オリを形成する酵母の上に、ブドウ酒を静置することにより、糖分が残っていると、貯蔵中、再醗酵が起こるため、必然的に辛口にする必要があります。醗酵が完全に終了すれば、残糖分が2g/l以下になっていることを確認して、亜硫酸50ppmを添加します。同一ブドウ酒でタンクを満量 にして、貯酒に入ます。貯酒中に酵母は沈降して、オリを形成し、このオリ(酵母)の上に最低5ヵ月間、ブドウ酒を静置させます。オリとの接触中に酵母は自己消化をし、ブドウ酒中に窒素成分及びアミノ酸が増加し、ブドウ酒に厚みや旨味を付与します。
 なお、酵母の自己消化によるアミノ酸の溶出で、典型的なのがシャンパンです。びん内で2次醗酵した後、最低1年間、通 常3年間オリと接触している間に、オリの主成分の酵母が自己消化をし、アミノ酸類をブドウ酒に溶出し、シャンパンの味を豊かにしています。

3・オリの分離
 シュール・リー法のブドウ酒は繊維優美な芳香とフレッシュでクリスピィな味覚を特徴としているため、シャンパンほど長期にオリと接触させません。またシャンパンのびん内でのオリとの接触は、地下貯蔵庫の低温で行われるのに対し、タンク内で行われるシュール・リー法は夏季に温度が上昇する危険を避けるため6月30日以前にびん詰することが義務付けられています。ワイン表示問題検討協議会の「国産果 実酒の表示に関する基準」では、シュール・リーと表示する場合には、最低5ヵ月間オリ上で貯蔵したブドウ酒を6月30日以前にびん詰したものとし、温度の上昇する夏期以前にオリを分離し、オリ臭などによるブドウ酒の劣化の危険性を防止しています。
 5カ月以上のオリの上での貯酒が終る翌春(4〜6月)にびん詰を行います。びん詰前の安定化処理は常法に行ない、びん詰は、シュール・リー酒が残糖分のない辛口であるため、一般 の設備でも低温びん詰を行うことができます。

4・香味の特徴
 シュール・リー法で醸造したブドウ酒の飲み頃はフルーティなエステル香を主体とする繊細優美な芳香と新鮮でクリスピィな味を特徴とするびん詰直後(4〜6月)から始まり、さらにびん熟が進むと芳醇な香に変化する秋以降も楽しめます。この香の変化は酵母が自己消化したブドウ酒に発現すると推測されています。
 シュール・リーのブドウ酒はびん詰時期が毎年4〜6月と限定されることとびん詰直後からびん熟後の香の変化があるため、ラベルに年号表示が不可欠な商品と考えます。

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