○山梨県の豊かな農業と農村を守る条例

令和七年三月二十八日

山梨県条例第三十三号

山梨県の豊かな農業と農村を守る条例をここに公布する。

山梨県の豊かな農業と農村を守る条例

本県の農業は、豊かな自然の中で先人たちのたゆまぬ努力により築き上げられ、日本一の生産量を誇るぶどう、もも、すもも等の果樹を中心に、水稲、野菜、畜産、水産等の特色ある産地を形成し、多様な生物を育み美しい景観を有する農村を紡いできている。

しかし、農業者の減少や高齢化、荒廃農地の発生、肥料や飼料等の価格高騰など、農業は厳しい状況にある。

このような中、本県の基幹産業である農業が持続的に発展していくためには、担い手の確保及び育成、農地の有効利用、農業技術の向上等による効率的かつ安定的な農業経営を確立するとともに、農業及び農村のもつ様々な恵みを次世代へ引き継いでいくことが重要である。

そこで、農業経営の安定を図りつつ、私たちの生命と健康を支える持続可能な農業を推進し、豊かさを実感できる故郷やまなしを守るため、この条例を制定する。

(目的)

第一条 この条例は、食料の安定的な供給に資する持続可能な農業の推進に関し、基本理念を定め、県の責務並びに農業者、農業関係団体、食品産業事業者及び県民の役割を明らかにするとともに、食料の安定的な供給に資する持続可能な農業の推進に関する施策を総合的に推進し、もって県民生活の向上に寄与することを目的とする。

(定義)

第二条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

 農業関係団体 農業協同組合、農業協同組合連合会その他の農業に関する団体をいう。

 食品産業事業者 農畜水産物に係る食品の製造、加工、流通又は販売その他の事業活動を行う事業者をいう。

 多面的機能 県土の保全、水源のかん養、自然環境の保全、良好な景観の形成、文化の伝承等農村が有する農畜水産物を供給する機能以外の多面にわたる機能をいう。

 有機農業 有機農業の推進に関する法律(平成十八年法律第百十二号)第二条に規定する有機農業をいう。

 地産地消 地域で生産された農畜水産物又はこれを主たる原材料として地域内において製造され、加工され、若しくは調理された食品を、その生産され、製造され、加工され、若しくは調理された地域内において消費することをいう。

 中山間地域等 食料・農業・農村基本法(平成十一年法律第百六号)第四十七条第一項に規定する中山間地域等をいう。

(基本理念)

第三条 農業は、健康で充実した生活の基礎を支え人間の生命の維持に欠くことのできない食料を確保するために重要なものであることに鑑み、将来にわたって永続的に営まれなければならない。

2 農業は、県内の各地域の特性に応じてその食料となる農畜水産物を持続的に供給する機能が最大限に発揮されるように展開されなければならない。

3 農業及び農村が有する多面的機能は、農業の基盤となるものであることから、将来にわたって適切かつ十分に発揮されなければならない。

(県の責務)

第四条 県は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、国、市町村等と連携を図りながら、安全で安心して消費できる食料の安定的な供給に資する持続可能な農業の推進に関する施策を総合的に推進するものとする。

(市町村との連携等)

第五条 県は、食料の安定的な供給に資する持続可能な農業の推進に関する施策の実施に当たり、市町村との緊密な連携及び協力を図るとともに、市町村の農業及び農村の振興に関する施策について、助言その他の必要な支援を行うよう努めるものとする。

(農業者及び農業関係団体の役割)

第六条 農業者及び農業関係団体は、自らが安全で安心して消費できる食料を供給する役割を担っていることを認識し、基本理念にのっとり、食料の安定的な供給に資する持続可能な農業の推進のための取組を主体的に実施するとともに、県が実施する施策に協力するよう努めるものとする。

(食品産業事業者の役割)

第七条 食品産業事業者は、その事業活動を行うに当たっては、基本理念にのっとり、県民に対して安全で安心して消費できる食料の安定的な供給に努めるとともに、県産農畜水産物の利用の促進に努めるものとする。

(県民の役割)

第八条 県民は、本県における農業についての理解と関心を深め、県産農畜水産物の消費及び利用の拡大に努めるものとする。

2 県民は、農業及び農村が有する多面的機能についての理解を深めるため、農業体験、農村等における共同活動等に参加するよう努めるものとする。

(安全で安心して消費できる農畜水産物の安定的な供給)

第九条 県は、農畜水産物の安定的な生産及び供給を図るため、県内の生産活動の増進並びに生産及び流通に係る体制の整備に向けた措置を講ずるよう努めるものとする。

2 県は、安全で安心して消費できる農畜水産物の安定的な生産及び供給を促進するため、農薬等の適正な使用の徹底及び品質管理の高度化に必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

(担い手等の確保及び育成等)

第十条 県は、効率的かつ安定的な農業経営を営む担い手を確保し、及び育成するとともに、農業経営の改善に意欲のある農業者等に必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

2 県は、農業及び農村の持続的な発展のため、多様な担い手の確保に必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

3 県は、農業及び農村の振興に資する農業に関する教育の推進を図るため、農業に関する学科(これに類するものを含む。)を置く県立の高等学校及び専門学校山梨県立農林大学校における農業に関する教育の充実を図るよう努めるものとする。

(女性の活躍の推進)

第十一条 県は、女性の農業及び農村における活躍を推進するため、女性の農業経営及びこれに関連する活動への参画、指導者の育成等に必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

(農地の確保及び有効利用)

第十二条 県は、農畜水産物の安定的な生産並びに農業及び農村が有する多面的機能を十分に発揮させるため、自然環境の保全に配慮しつつ、農業生産の基盤の整備、地力の増進、農地の集積及び集約化による優良な農地の確保、荒廃農地の発生の防止、農業用水利施設の管理その他必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

(水田の維持及び活用)

第十三条 県は、県民の主要な食糧である米穀を生産する基盤となる水田を維持し、その機能を最大限に活用するため、消費者の需要に応じた食用の米並びに麦、大豆及び飼料用の米その他の地域の特性を生かした作物の生産の振興に必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

(農業技術の向上等)

第十四条 県は、農業及び農村の振興に資する技術及び知識の向上を図るため、新品種の育成及び保護、農畜水産物の品質及び生産性の向上等に関する研究の推進並びにその研究に従事する者の育成、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条に規定する大学その他民間事業者との連携の強化等の必要な措置を講ずるとともに、その成果の普及に努めるものとする。

(環境と調和した農業の推進等)

第十五条 県は、環境と調和しつつ持続的に発展する農業を推進するため、有機農業をはじめとする化学的に合成された肥料及び農薬を低減した農業の推進、当該農業により生産された農産物に関する適切な情報の提供の推進、消費者の当該農業の重要性に対する理解の促進等必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

(農畜水産物の需要の拡大等)

第十六条 県は、本県における農業の将来にわたる発展及びその経営の安定に資するため、農業関係団体等と連携し、県産農畜水産物の需要の拡大及び付加価値の向上その他必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

(輸出の拡大に向けた取組)

第十七条 県は、本県における農業の持続的な発展を図るため、輸出用の農畜水産物の生産を促進することが重要であることに鑑み、県産農畜水産物の輸出の拡大の取組に必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

(地産地消の推進)

第十八条 県は、地産地消の取組を推進するため、市町村、食品産業事業者等と連携し、次の各号に掲げる措置を講ずるよう努めるものとする。

 県民が地域の農畜水産物(当該農畜水産物を使用した商品を含む。次号において同じ。)を随時に購入することができる機会を確保すること。

 学校給食等において地域の農畜水産物を利用することの重要性について県民の理解を深めること。

 前二号に掲げるもののほか、地産地消の取組を推進するために必要な措置

(中山間地域等への支援)

第十九条 県は、中山間地域等における農業の持続的な発展を図るため、農畜水産物の生産の振興、農業生産の基盤の整備、地域資源を活用した商品の開発支援、中山間地域等が果たす役割に関する適切な情報の提供の推進その他必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

(鳥獣害の対策)

第二十条 県は、本県における農業の持続的な発展を図るため、鳥獣による被害の防除、その被害を防止するための地域における体制の整備及び捕獲した鳥獣の有効活用その他必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

(財政上の措置)

第二十一条 県は、食料の安定的な供給に資する持続可能な農業の推進に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

(委任)

第二十二条 この条例の施行に関し必要な事項は、知事が別に定めることとする。

この条例は、公布の日から施行する。

山梨県の豊かな農業と農村を守る条例

令和7年3月28日 条例第33号

(令和7年3月28日施行)