○山梨県県産木材利用促進条例

平成三十一年三月二十九日

山梨県条例第三十一号

山梨県県産木材利用促進条例をここに公布する。

山梨県県産木材利用促進条例

山梨県は、県土の約八割を森林が占める全国有数の森林県であり、その森林のうち約半分は県有林が占めている。この県有林の基となったのが、明治末期に相次いで発生した大水害からの復興に役立てるよう、入会御料地が特別御下賜された恩賜林である。

本県の豊かな森林は、木材の生産をはじめ、県土の保全、水源の涵養かんよう、地球温暖化の防止などの多面的機能を有し、私たちに多くの恩恵をもたらしてきた。

一方、戦後に植林された人工林の多くが、木材資源として本格的な利用期を迎え、森林資源の循環的な利用を確保する観点から、積極的に伐採し、木材の利用を拡大していくことが求められている。

しかしながら、人々の生活様式の変化や長期にわたる木材価格の低迷など、林業及び木材産業を取り巻く環境は厳しく、状況の推移によっては、適切な森林整備が進まない事態や、森林の有する多面的機能の低下が生じるものと懸念されている。

このような状況を踏まえ、私たち一人一人が県産木材の利用の重要性についての認識を深めるとともに、県産木材の経済的価値の向上を図り、植林、育林、伐採及び再植林の循環が将来にわたり安定的に繰り返されることを確保するため、総合的かつ計画的に取り組んでいくことが重要となっている。

私たち山梨県民は、ここに、先人のたゆまぬ努力によって守り、育まれ、活用されてきた森林を維持し、緑豊かな県土を次代に継承するために、県産木材の利用の促進を通じて林業及び木材産業の振興を目指すことを決意し、この条例を制定する。

(目的)

第一条 この条例は、県産木材の利用の促進に関し、基本理念を定め、県の責務等を明らかにするとともに、県産木材の利用の促進に関する施策の基本となる事項を定めることにより、県産木材の利用の促進に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって林業及び木材産業の振興による本県の経済の活性化、森林の有する多面的機能の持続的な発揮並びに豊かな県民生活の実現に寄与することを目的とする。

(定義)

第二条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

 県産木材 県内で生産された木材(県内の森林に由来するものに限る。)をいう。

 森林の有する多面的機能 県土の保全、水源の涵養、自然環境の保全、公衆の保健、地球温暖化の防止、林産物の供給等の森林の有する多面にわたる機能をいう。

 森林所有者 森林法(昭和二十六年法律第二百四十九号)第二条第二項に規定する森林所有者をいう。

 林業事業者 森林施業(造林、保育、伐採その他の森林における施業をいう。以下同じ。)を行う者をいう。

 木材産業事業者 木材の加工又は流通の事業を行う者をいう。

 建築関係事業者 建築物の設計又は施工の事業を行う者をいう。

 県産木材の利用 建築材料、工作物の資材、製品の原材料及びエネルギー源として県産木材を使用すること(県産木材が使用された木製品の使用を含む。)をいう。

(基本理念)

第三条 県産木材の利用の促進は、林業及び木材産業の健全な発展が本県の経済の活性化に資することに鑑み、その経済的価値の向上が図られることを旨として行われなければならない。

2 県産木材の利用の促進は、植林、育林、伐採及び再植林を繰り返すことによる森林資源の循環的な利用により、本県の豊かな森林資源が次の世代に継承され、及び森林の有する多面的機能が持続的に発揮されることを旨として行われなければならない。

3 県産木材の利用の促進は、木材の優れた特性を生かすことにより、県民の快適な居住環境の形成及び県民に癒しをもたらす生活環境の創造に資することを旨として行われなければならない。

(県の責務)

第四条 県は、前条の基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、県産木材の利用の促進に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。

2 県は、前項の規定による施策の策定及び実施に当たっては、森林所有者、林業事業者、木材産業事業者、建築関係事業者その他の事業者及び県民(第七条第一項第八条第三項及び第十四条第一項において「県民等」という。)との協働に努めるものとする。

(市町村との連携等)

第五条 県は、市町村と連携し、かつ、協力して、県産木材の利用の促進に関する施策を策定し、及び実施するよう努めるものとする。

2 県は、市町村が県産木材の利用の促進に関する施策を策定し、及び実施しようとするときは、市町村に対し、情報の提供、助言その他の必要な支援を行うものとする。

(森林所有者等の役割)

第六条 森林所有者は、基本理念にのっとり、その所有する森林の適切な整備及び保全並びに県産木材の安定的な供給に積極的に努めるとともに、県が実施する県産木材の利用の促進に関する施策に協力するよう努めるものとする。

2 林業事業者は、基本理念にのっとり、地域における森林経営の中核的な担い手として、森林の適切な整備及び保全、県産木材の安定的な供給、森林資源の最大限の活用、人材の育成その他林業の振興への寄与に積極的に努めるとともに、県が実施する県産木材の利用の促進に関する施策に協力するよう努めるものとする。

3 木材産業事業者は、基本理念にのっとり、県産木材の有効利用及び安定供給の推進、加工技術の向上、県産木材の新たな用途の開発、人材の育成その他木材産業の振興への寄与に積極的に努めるとともに、県が実施する県産木材の利用の促進に関する施策に協力するよう努めるものとする。

4 建築関係事業者は、基本理念にのっとり、県産木材に係る知識の習得、県産木材の利用及び普及、木造建築技術の継承及び一層の向上並びに人材の育成に積極的に努めるとともに、県が実施する県産木材の利用の促進に関する施策に協力するよう努めるものとする。

(県民等の役割)

第七条 県民等は、基本理念にのっとり、その日常生活又は事業活動を通じて県産木材の利用に自ら努めるものとする。

2 県民及び事業者(第二条第四号から第六号までに掲げる者を除く。)は、基本理念にのっとり、県が実施する県産木材の利用の促進に関する施策に協力するよう努めるものとする。

(県産木材の利用の促進に関する基本方針)

第八条 知事は、県産木材の利用の促進に関する施策の総合的な推進を図るため、県産木材の利用の促進に関する基本方針(以下この条及び次条第一項において「基本方針」という。)を策定するものとする。

2 基本方針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。

 県産木材の利用の促進に関する基本的方向

 県産木材の利用の促進のための方策に関する事項

 前二号に掲げるもののほか、県産木材の利用の促進に関し必要な事項

3 知事は、基本方針を策定するに当たっては、あらかじめ県民等の意見を反映させることができるよう適切な措置を講ずるものとする。

4 知事は、基本方針を定めたときは、遅滞なく、これを公表するとともに、市町村長に通知しなければならない。

5 前二項の規定は、基本方針の変更について準用する。

(県の建築物等における利用)

第九条 県は、その設置又は管理に係る公用施設又は公共施設である建築物を自ら整備しようとするときは、木造とすることが適当でない場合又は困難と認められる場合を除き、基本方針で定めるところにより、当該建築物について、原則として木造とするものとする。

2 県は、その整備する建築物、土木施設その他工作物等において、自ら率先して県産木材及び県産木材を利用した製品の利用に努めるものとする。

(県産木材の安定供給の促進)

第十条 県は、森林資源の有効な利用及び再生産を図りつつ、県産木材の安定的な供給を自ら行い、及びその安定的な供給を促進するため、森林の整備及び保全の推進その他の必要な施策を実施するものとする。

2 県は、県産木材の生産体制の強化を図るため、森林の境界の明確化の推進、路網の計画的な整備、高性能林業機械(二以上の作業を一の工程の中で行うことができる林業機械をいう。)の導入及び森林施業の集約化の促進その他の必要な施策を実施するものとする。

3 県は、林業事業者が地域における森林経営の担い手として活動することの重要性に鑑み、林業事業者が森林所有者相互の森林施業に関する合意形成のための仲介、林業経営に関する計画の提案等を通じて、県産木材の安定的な供給の推進に積極的な役割を果たすことができるよう、情報の提供その他の必要な施策を実施するものとする。

4 県は、県産木材の生産能力の向上を図るため、木材の生産に係る新たな技術の導入の試行、その成果の普及その他の必要な施策を実施するものとする。

(県産木材の加工等の体制の整備)

第十一条 県は、県産木材の加工及び流通に関する体制の整備を図るため、木材の加工及び流通に係る施設の整備並びに品質及び生産性の向上に対する支援、木材の需給に関する情報の共有の円滑化に向けた支援その他の必要な施策を実施するものとする。

(県産木材の利用の促進)

第十二条 県は、県産木材を使用した住宅その他の建築物の新築、増築、改築等及び県産木材が使用された製品の使用を促進するため、その需要の拡大に向けた支援その他の必要な施策を実施するものとする。

2 県は、県産木材の利用の促進を図るため、県産木材のブランド化(県産木材及び県産木材を使用した製品に対して信頼感等を与える独自の印象を創出することをいう。)及び産地の認証に関し、必要な措置を講ずるものとする。

3 県は、合法伐採木材(法令に適合して伐採された樹木を材料とする木材をいう。)の流通及び利用の促進を図るために必要な施策を実施するものとする。

4 県は、木質バイオマス(脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律(平成二十二年法律第三十六号)第二十三条に規定する木質バイオマスをいう。)の有効利用を促進するため、その加工及び利用に係る施設の整備への支援その他の必要な施策を実施するものとする。

(令三条例四二・一部改正)

(普及啓発、木育の推進等)

第十三条 県は、県産木材の利用の重要性に対する県民の理解を深めるため、県民が広く県産木材の利用の意義を学ぶ機会の確保、県産木材に関する情報の発信等を通じて普及啓発を図るよう努めるものとする。

2 県は、林木から発生する花粉がアレルギー疾患の原因となっており、県産木材の価値に関する県民の理解を促進する上でその対策が重要な課題となっていることに鑑み、花粉の発生の少ない品種の研究開発及び普及その他の必要な施策を実施するものとする。

3 県は、子どもをはじめとする県民が広く木材に親しむとともに、県民の生活に必要な物資としての木の魅力及びその利用の意義を学ぶ活動を推進するために必要な施策を実施するものとする。

(県産木材利用推進月間)

第十四条 県民等の間に広く県産木材についての関心及び理解を深めるとともに、積極的に県産木材を利用する意欲を高めるため、県産木材利用推進月間を設けるものとする。

2 県産木材利用推進月間は、十月とする。

(人材の育成)

第十五条 県は、林業及び木材産業を担う人材の確保及び育成に必要な施策を実施するものとする。

2 県は、県産木材を使用した建築物の建築に必要な知識又は技術を有する設計者等の確保及び育成に必要な施策を実施するものとする。

(森林認証の普及)

第十六条 県は、持続可能な森林管理及び森林経営(以下この項において「森林管理等」という。)の推進及び県産木材の付加価値の向上を図るため、森林認証制度(森林管理等に係る認証を行うことを目的とする団体その他の機関が、環境保全への配慮の度合その他の森林管理等に係る一定の基準の下、林業事業者、木材産業事業者等の申請に基づき、当該申請に係る森林又は森林の経営組織等を認証する制度をいう。以下この条において同じ。)による認証の取得が促進されるよう、森林認証制度の普及に必要な措置を講ずるものとする。

2 県は、森林認証制度により認証された森林から産出される県産木材の使用及び当該県産木材が使用された製品の使用の拡大を図るため、その普及の促進、製品の開発への支援その他の必要な施策を実施するものとする。

(財政上の措置)

第十七条 県は、県産木材の利用の促進に関する施策を実施するために必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

(施策の実施状況の公表)

第十八条 知事は、毎年度、県産木材の利用の促進に関する県の施策の実施状況を公表するものとする。

この条例は、公布の日から施行する。

(令和三年条例第四二号)

この条例は、令和三年十月一日から施行する。

山梨県県産木材利用促進条例

平成31年3月29日 条例第31号

(令和3年10月1日施行)