○山梨県登山の安全の確保に関する条例

平成二十九年十月二十日

山梨県条例第三十号

山梨県登山の安全の確保に関する条例をここに公布する。

山梨県登山の安全の確保に関する条例

(目的)

第一条 この条例は、登山に係る届出の手続その他登山の安全の確保に関する施策の基本的な事項を定め、自らの安全は自らが守るという登山者の意識の高揚を図ること等により、本県の観光の振興を図りつつ、本県の山岳における登山の安全の確保に寄与することを目的とする。

(定義)

第二条 この条例において「登山者」とは、山梨県の区域内の山岳において登山をする者(登山をしようとする者を含む。)で次に掲げるもの以外のものをいう。

 山岳遭難に係る捜索又は救助に関する業務に従事する者

 山岳遭難を未然に防止するための業務に従事する者

 山小屋、避難小屋、売店その他登山の利便のための施設の運営に従事する者

 前三号に掲げるもののほか、公益性が高いと認められる業務で規則で定めるものに従事する者

(県の責務)

第三条 県は、この条例の目的を達成するため、登山の安全に関する知識の普及、意識の啓発及び情報の提供、登山の安全の確保のための環境の整備その他必要な施策を実施するものとする。

2 県は、登山計画の内容を明らかにすることが、事前の準備の徹底を通じた自己の安全の確保に資するものであることについて、登山者に周知するとともに、第七条第一項及び第二項の規定による届出並びに第十条第二項の規定による提出を行いやすい環境を整備するものとする。

3 県は、市町村と連携し、かつ、協力して、登山の安全の確保のための施策を策定し、及び実施するものとする。

4 県は、登山の安全の確保のための施策の実施に当たっては、登山の安全に係る普及を目的とする団体その他の関係者との緊密な連携協力の確保に努めなければならない。

(登山者の責務)

第四条 登山者は、登山は常に生命又は身体に危険が及ぶおそれがある活動であること及び登山に伴う危険の回避に向けた努力を行うことが自らの責務であることを認識し、山岳の特性並びに自己の技能、体力及び健康状態を十分に把握し、必要な装備等を調える等、安全の確保に最大限の配慮をして計画的に登山をするよう努めるものとする。

2 登山者は、登山に関して自らの安全を確保するために、次に掲げる事項を遵守しなければならない。

 登山をしようとする山岳について十分な知識を持つよう努め、自己の技能、体力及び健康状態に照らして適切な登山計画を作成すること。

 登山をする季節及び当該登山に係る山岳の気象状況に応じた服装を用い、及び必要な装備品を携行すること。

 前二号に掲げるもののほか、次条第一項に規定する指針に定められた事項

(安全登山指針)

第五条 知事は、登山を安全に楽しむために登山者が遵守すべき事項を定めた指針(以下この条において「指針」という。)を策定するものとする。

2 知事は、指針を策定しようとするときは、あらかじめ、登山の安全に係る普及を目的とする団体その他山岳遭難の防止に関する活動を行う者の意見を聴くものとする。

3 知事は、指針を策定したときは、これをインターネットの利用その他の方法により公表しなければならない。

4 前二項の規定は、指針の変更について準用する。

(安全登山推進区域等の指定)

第六条 知事は、山岳のうち、登山の安全の確保を推進することが特に必要と認められる区域を安全登山推進区域として指定することができる。

2 知事は、安全登山推進区域の指定をしようとするときは、あらかじめ、関係市町村の長の意見を聴くものとする。

3 知事は、安全登山推進区域の指定をする場合には、その旨及びその区域を告示するとともに、関係市町村の長に通知するものとする。

4 安全登山推進区域の指定は、前項の規定による告示によってその効力を生ずる。

5 第二項から前項までの規定は、安全登山推進区域の指定の解除及びその変更について準用する。

6 知事は、安全登山推進区域のうち、登山に伴う危険性が特に大きいため登山の安全の確保を重点的に推進することが必要と認められる区域を安全登山推進重点区域として指定することができる。

7 第二項から第五項までの規定は、前項の規定による指定について準用する。

(登山の届出)

第七条 登山(前条第一項に規定する安全登山推進区域に立ち入ることをいう。以下この項において同じ。)をしようとする者(第二条各号に掲げる者を除く。)は、あらかじめ、規則で定めるところにより、当該登山に係る次に掲げる事項(以下「届出事項」という。)を知事に届け出るよう努めるものとする。この場合において、当該登山をする前に届出事項に変更が生じたとき、又は当該登山を取りやめたときは、遅滞なく、その旨を知事に届け出るよう努めるものとする。

 登山をしようとする者の氏名及び住所

 期間及び行程

 携行する装備品、飲料水及び食糧の内容

 緊急時における連絡先

 携帯電話端末、無線設備その他の通信手段の保有状況

 その他規則で定める事項

2 十二月一日から翌年三月三十一日までの間に登山(前条第六項に規定する安全登山推進重点区域に立ち入ることをいう。以下この項において同じ。)をしようとする者(第二条各号に掲げる者を除く。)は、あらかじめ、規則で定めるところにより、当該登山に係る届出事項を知事に届け出なければならない。この場合において、当該登山をする前に届出事項に変更が生じたとき、又は当該登山を取りやめたときは、遅滞なく、その旨を知事に届け出なければならない。

3 複数の登山者により構成される集団が同一の行程で前二項に規定する登山をしようとするときは、当該集団を構成する者のうち一人の者がこれを代表してこれらの項の規定による届出をすることができる。

4 第一項及び第二項の規定にかかわらず、これらの項に規定する登山をしようとする者(前項に規定する場合にあっては、当該集団を代表する者)が届出事項を規則で定める方法により次に掲げる者に通知したときは、第一項又は第二項の規定による届出があったものとみなす。

 当該登山に係る山岳をその区域の一部とする山梨県内の市町村

 届出事項に係る通知を受理する業務を行う団体であって規則で定めるもの

 山梨県と隣接する県の行政機関その他規則で定める機関

(勧告)

第八条 知事は、前条第二項の規定による届出に係る登山の安全の確保を図るために必要と認めるときは、当該届出をした者に対し、登山計画を変更すべきことその他必要な措置を講ずべきことを勧告することができる。

(事務の委託)

第九条 知事は、第七条第一項及び第二項の規定による届出の受理、当該届出に係る事実の確認のための措置その他の当該届出に係る事務の一部を、当該事務を確実に実施することができる者として知事が指定する者に委託することができる。

(届出等に関する指導、助言等)

第十条 県の機関(地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二編第七章の規定に基づき置かれる県の執行機関若しくは警察法(昭和二十九年法律第百六十二号)第三十六条第一項の規定により置かれる県警察又はこれらに置かれる機関をいう。以下この条において同じ。)は、第七条第一項及び第二項に規定する登山をしようとする者に対し、これらの項の規定による届出に関し必要な指導及び助言を行うものとする。

2 県の機関は、第七条第一項及び第二項に規定する登山以外の登山をしようとする者に対しても、その安全の確保を図るため必要があると認めるときは、当該登山をしようとする者が第四条第二項第一号の規定の趣旨に従い届出事項を記載した書面等を作成し、及び当該県の機関等に提出することについて、勧奨及び助言を行うものとする。

(委任)

第十一条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。

(施行期日)

1 この条例は、公布の日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。

 第七条第一項第三項及び第四項並びに第十条第一項(第七条第三項及び第四項並びに第十条第一項にあっては、第七条第一項の規定に基づく届出に係る部分に限る。)の規定 公布の日から起算して一年を経過した日

 第七条第二項第三項及び第四項第八条並びに第十条第一項(第七条第三項及び第四項並びに第十条第一項にあっては、第七条第二項の規定に基づく届出に係る部分に限る。)の規定 公布の日から起算して二年を超えない範囲内において規則で定める日

(令和元年規則第一六号で令和元年一〇月一九日から施行)

(経過措置)

2 この条例の施行の日から前項第一号に掲げる規定の施行の日の前日までの間における第十条第二項の勧奨及び助言に係る同項の規定の適用については、同項中「第七条第一項及び第二項に規定する登山以外の登山」とあるのは「登山」と、「対しても」とあるのは「対し」とする。

3 附則第一項第一号に掲げる規定の施行の日から同項第二号に掲げる規定の施行の日の前日までの間における第十条第二項の勧奨及び助言に係る同項の規定の適用については、同項中「第七条第一項及び第二項」とあるのは「第七条第一項」とする。

(検討)

4 知事は、この条例の施行後三年を超えない範囲内において、登山の届出の状況その他この条例の施行の状況を勘案し、必要があると認めるときは、登山の届出の在り方等について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

山梨県登山の安全の確保に関する条例

平成29年10月20日 条例第30号

(令和元年10月19日施行)