○山梨県議会基本条例

平成二十九年三月二十九日

山梨県条例第二十号

山梨県議会基本条例をここに公布する。

山梨県議会基本条例

目次

前文

第一章 総則(第一条・第二条)

第二章 議会の役割、運営等(第三条―第十条)

第三章 議員の責務、役割等(第十一条―第十八条)

第四章 県民と議会との関係(第十九条―第二十三条)

第五章 知事と議会との関係(第二十四条―第二十八条)

第六章 議会改革の推進等(第二十九条)

第七章 議会事務局等(第三十条・第三十一条)

第八章 補則(第三十二条・第三十三条)

附則

議会は、地方公共団体の意思決定を行う議決機関としての役割と、知事の執行権に対する監視を行う機関としての責務を担っている。地方公共団体の自己決定権と責任の範囲の拡大に伴い、住民代表機関としての議会は、その使命を再確認し、その機能をさらに充実強化することが求められている。

また、民主主義の発展と住民福祉の向上は、知事と議会がそれぞれの特性を生かし、住民意思を行政に的確に反映させる仕組みを構築してこそ実現されるものであるとの認識にたち、本県議会は、これまで、県民生活の向上と地方自治の実現を目指し、二元代表制の一翼を担う存在として、県民の意思を県政に反映できるよう、知事等と緊張ある関係を保ちつつ、政策条例の制定や政策提言などに取り組んできた。

しかし、その一方で、県民の理解や期待に十分に応えていないのではないか、との厳しい指摘もあることを踏まえ、現状を真摯に受け止め、議会の果たすべき役割を明確にするとともに、より開かれた議会活動の推進とたゆみない改革への決意を広く県民に示すため、ここに、この条例を制定する。

第一章 総則

(目的)

第一条 この条例は、山梨県議会(以下「議会」という。)の基本理念を明らかにするとともに、議会の役割及び運営原則、山梨県議会議員(以下「議員」という。)の責務及び役割、県民と議会との関係、知事その他の執行機関(以下「知事等」という。)と議会との関係等、議会に関する基本的事項を定めることにより、議会がその機能を高めるとともに県民の負託に的確に応え、もって県民福祉の向上及び県政の発展に寄与することを目的とする。

(基本理念)

第二条 議会は、二元代表制の下、県民を代表し、県の意思決定を担う議事機関として、公平かつ公正な議論を尽くすとともに、その機能を最大限に発揮して、広く県政全般の課題を把握し、多様な県民の意思を県政に反映させ、地方自治の確立に取り組むものとする。

2 議会は、その意思決定の過程を明らかにして、公正かつ透明な議会運営を行うとともに、情報公開を積極的に推進し、県民に開かれた議会の実現を通じて県民の信頼に応えるものとする。

第二章 議会の役割、運営等

(議会の役割)

第三条 議会は、基本理念にのっとり、次に掲げる役割を担うものとする。

 議決による県の意思決定

 知事等の事務の執行についての監視及び評価

 県政の課題に関する政策の立案及び提言

 意見書、決議等による国等に対する意見表明

 議会活動で明らかとなった県政の課題及び審議、審査結果等の県民への説明

2 議会は、付議された案件に対し、精査するとともに、誠実に対応しなければならない。

(議長及び副議長の責務)

第四条 議長は、議会の代表として、議会の品位を保持し、議会の機能強化に向けて先導的な役割を果たすものとする。

2 議長及び副議長は、議会活動の状況、県政の課題に対する議会の方向性等について、広く県民に明らかにする役割を担うものとする。

3 議長及び副議長は、議会事務局を統括し、綿密な議会運営に努め、秩序を保持するとともに、その責任を負うものとし、不測の事態が生じたときは、速やかに必要な措置を講ずるものとする。

(議会の運営原則)

第五条 議会は、会議等(本会議、委員会及び議案の審査又は議会の運営に関し協議又は調整を行う場をいう。以下同じ。)の議事を公正、円滑かつ効率的に行うとともに、県民に開かれた透明性の高い運営に努めるものとする。

2 議会は、言論の府として、個々の議員の発言の尊重と議員相互の活発な議論喚起による議会の活性化に努めるものとする。

3 本会議において一般質問を行うに当たっては、論点が明確になるよう、一問一答方式その他の効果的な方法により、その内容の充実を図るとともに、本会議において表決を行うに当たっては、争点が明確になるよう、議案に対する討論を積極的に行うものとする。

4 議長又は副議長の選出に当たっては、その職に就任することに意欲ある議員は、選挙に先立ち、所信を述べるものとする。

(定例会の会期)

第六条 議会は、定例会の会期を決定するときは、十分な審議日程を確保できるよう定めるものとする。

(緊急事態等への対応)

第七条 議会は、災害、緊急事態等の発生に際し、知事が定める地域の防災に関する計画のほか、議長が別に定めるところにより、迅速かつ機動的に状況の把握その他の調査活動を行うなど、議会の役割を踏まえた必要な対応に努めるものとする。

(委員会)

第八条 委員会は、県政の課題を的確に把握し、その専門性と特性を生かした運営に努めるものとする。

2 常任委員会は、付託された議案に関する質議、討論及び採決を行うとともに、所管事項に関する質疑、請願の審査等を行うものとする。

3 常任委員会は、必要な調査及び審査のため、閉会中の継続審査の効果的な活用等により、県政の課題に対応して機動的に開催するものとする。

4 特別委員会は、県政の課題等に対応して必要がある場合に設置し、特定の事件に関する調査及び審査を行うものとする。

5 前各項に定めるもののほか、委員会の設置及び運営については、別に条例で定めるところによる。

(他の地方議会との連携)

第九条 議会は、他の地方議会との交流及び連携に努め、議会改革の推進及び議会活動の充実を図るものとする。

(専門的知見の活用等)

第十条 議会は、議案の審査又は県の事務に関する調査を効果的に行うため、必要に応じて、議決により、専門的事項に係る調査の委託を活用するとともに、学識経験を有する者等で構成する調査のための組織を置くことができる。

第三章 議員の責務、役割等

(議員の責務)

第十一条 議員は、選挙により選出された県民の代表者として、県民全体の利益を考え、その負託と信頼に応えるため、広く県政全般の課題及びこれに対する県民の意思を的確に把握し、議会活動を通じて県政に反映させる責務を担う。

(議員の役割)

第十二条 議員は、責務を果たすため次に掲げる活動を行うものとし、活動に必要な能力の向上を図るため研修及び研究を通じて、不断の自己研さんに努めなければならない。

 議会に提出された議案の審議及び審査

 県の政策形成に係る調査及び研究、政策立案並びに政策提言

 予算の適正執行についての監視及びその成果についての評価

 県政についての県民からの意見の聴取及び県民への説明

(政治倫理)

第十三条 議員は、県民の負託を受けた代表として重大な使命と高い倫理的義務が課せられていることを深く認識し、品位の保持及び政治倫理の向上に努めなければならない。

(資産等の公開)

第十四条 議員は、政治倫理の確立を期し、もって民主政治の健全な発展に寄与するため、別に定めるところにより、その資産等を公開しなければならない。

(定数及び選挙区)

第十五条 議会は、議員の定数及び選挙区の設置について、県民の意思を県政に十分反映できるよう、適宜、適切な見直しを行うものとする。

(議員報酬等)

第十六条 議員報酬は、議員の責務及び役割に見合うものとなるようこれを定めるものとする。

(会派)

第十七条 議員は、議会活動及びその他の活動を円滑に行うこと並びに県民意思を県政に効果的に反映させることを目的として、会派を結成することができるものとする。

(政務活動費)

第十八条 政務活動費は、会派及び議員の調査研究その他の活動に資するため、別に定めるところにより、交付されるものとする。

2 会派及び議員は、政務活動費について、その使途の透明性の確保に努めるものとする。

第四章 県民と議会との関係

(県民参加の推進)

第十九条 議会は、県民の意思を的確に把握し、県政に反映させるため、次に掲げる方法等により、県民の議会活動への参加を推進するものとする。

 委員会の運営に当たっての参考人及び公聴会の制度の活用

 提出された請願及び陳情を県民による政策提案ととらえた誠実な処理

 県政の課題について、必要に応じて県民の意見を聴く機会の設置

(広報の充実)

第二十条 議会は、県民に開かれた議会を実現するため、本会議等の中継及び録画配信並びに会議録の公開及び検索機能の充実を図るとともに、多様な広報媒体の活用により、議会活動に関する情報の公開及び提供に努めるものとする。

2 議員及び会派は、それぞれの議会活動に関して積極的な広報に努めるものとする。

(会議等の公開等)

第二十一条 議会は、その意思決定に至る過程を県民に対して明らかにするため、会議等を原則として公開するとともに、議案に対する会派等の賛否を速やかに公表するものとする。

2 議会は、県民が会議等を傍聴しやすい環境を整備し、会議等の公開の実効性を確保するよう努めるものとする。

(意見の公募)

第二十二条 議長は、議員又は委員会が県の政策に関する条例を制定しようとする場合は、当該議員又は委員会の申出に基づき、あらかじめ、当該条例の案及びこれに関連する資料を公表し、広く県民の意見を求めるものとする。

2 前項の場合には、議員及び委員会は、当該条例の案について提出された意見をできる限り考慮するものとする。

(県民との意見交換)

第二十三条 議会は、県政の課題に関する情報の収集を図るとともに、調査審議の充実に資するため、委員会による調査活動を通じ、幅広い層の県民と意見を交換する場の充実に努めるものとする。

第五章 知事等と議会との関係

(知事等との関係の基本原則)

第二十四条 議会は、二元代表制の下、議決権を有する議会の権能と執行権を有する知事等の権能との違いを明確にし、知事等の役割を尊重しつつ、常に緊張ある関係を保ちながら、是々非々を基本原則に、議会機能をより高め、もって知事等と議会の共通目標である県民福祉の向上と県政進展に貢献するものとする。

(監視及び評価)

第二十五条 議会は、知事等の事務の執行が、適正かつ公平に、及び効率性をもって行われているかを監視するとともに、その効果及び成果について評価し、必要と認める場合は、知事等に対し、適切な措置又は対応を講ずるよう求めるものとする。

(政策の立案及び提言)

第二十六条 議会は、条例の制定及び改廃、議案の修正、決議等を通じて、知事等に対し、積極的に政策の立案及び提言を行うものとする。

2 議員提案による条例又は議会による政策提言を検討するため、それぞれ、議員で構成する組織を設置するものとする。

(調査、検討等を行う組織)

第二十七条 議会は、本会議及び委員会における審議等によるほか、県政の課題の解決及び議会運営に関して必要があると認めるときは、調査、検討等を行うための組織を設置することができる。

(議会の資料要求等)

第二十八条 議会は、知事が予算を調製したとき又は知事等が重要な政策若しくは施策を策定し、若しくは変更したときは、知事等に対し、必要に応じて、資料の提供及び説明を求めるものとする。

2 知事等は、前項の求めに対し、速やかに対応するよう努めなければならない。

第六章 議会改革の推進等

(議会改革の推進と検討組織の設置等)

第二十九条 議会は、基本理念に基づき、地方分権の時代にふさわしい役割を担うため、自らの改革に継続的に取り組むものとする。

2 議会は、議会改革の推進状況について、必要に応じて議会改革検討協議会等において検証を行い、その検証結果を公表するものとする。

第七章 議会事務局等

(議会事務局)

第三十条 議会は、議会活動の円滑かつ効率的な実施、知事等の事務執行の監視及び評価、政策の立案及び提言等に関する議会の機能の向上に資するため、議会事務局の機能の充実強化及び組織体制の整備に努めるものとする。

2 議長は、議会事務局に専門的知識を有する職員を配置するよう努め、また、職員の専門性を高めるために研修その他の必要な措置を講ずるとともに、職員の公正、公平な倫理意識の徹底を期すものとする。

(議会図書室)

第三十一条 議会は、議員の調査研究を支援するため、議会図書室を適正に運営し、及び管理するとともに、その機能の強化その他必要な体制の整備に努めるものとする。

第八章 補則

(他の条例等との関係)

第三十二条 この条例は、議会に関する基本的事項を定める条例であり、議会に関する他の条例、規則等を制定し、又は改廃するに当たっては、この条例の趣旨を尊重し、この条例に定める事項との整合を図るものとする。

(条例の見直し)

第三十三条 議会は、県民の意見、社会情勢の変化等を踏まえ、条例の見直しが必要と認めるときは、この条例について検証、検討を加え、所要の措置を講ずるものとする。

この条例は、公布の日から施行する。

山梨県議会基本条例

平成29年3月29日 条例第20号

(平成29年3月29日施行)

体系情報
第1編 規/第1章 織/第1節
沿革情報
平成29年3月29日 条例第20号