○山梨県世界遺産富士山基本条例

平成二十七年三月二十五日

山梨県条例第三号

山梨県世界遺産富士山基本条例をここに公布する。

山梨県世界遺産富士山基本条例

(目的)

第一条 この条例は、富士山の保全に関する施策について、基本理念を定め、並びに県の責務及び県民等の役割を明らかにするとともに、富士山の保全に関する施策の基本となる事項等を定めることにより、富士山の保全に関する施策を総合的に推進し、もって信仰の対象及び芸術の源泉として顕著な普遍的価値を有する富士山を後世に引き継ぐことに資することを目的とする。

(定義)

第二条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによるものとする。

 富士山 第四号及び第十四条を除き、世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約第十一条2の世界遺産一覧表に記載された文化遺産である富士山をいう。

 富士山の保全 富士山の有する顕著な普遍的価値の保全をいう。

 顕著な普遍的価値 人類全体にとって現代及び将来の世代に共通した重要性を有する傑出した文化的な意義をいう。

 富士登山 富士山(山岳である富士山をいう。第十四条において同じ。)における登山をいう。

(基本理念)

第三条 富士山の保全に関する施策は、富士山が所在する場所及びその周辺の地域(以下「富士山が所在する場所等」という。)の良好な景観の形成並びに自然環境の保全及びその適正な利用の確保が図られるとともに、富士山を構成する個々の文化財が適切に保存され、及び管理されることを旨として行われなければならない。

2 富士山の保全に関する施策は、一般の人々による富士登山、山麓の霊地への巡礼等の文化的な伝統が富士山の有する顕著な普遍的価値を形成する重要な要素であることに鑑み、このような伝統が後世に引き継がれるよう、富士山が所在する場所等への安全で安心な来訪を可能とする環境を整備することを旨として行われなければならない。

3 富士山の保全に関する施策は、富士山が国、県、関係地方公共団体、民間団体等の多様な主体によって管理され、又は利用されているものであることに鑑み、これらのものの相互の密接な連携の下に、行われなければならない。

(県の責務)

第四条 県は、前条の基本理念(次項次条及び第六条において「基本理念」という。)にのっとり、富士山の保全に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。

2 県は、基本理念にのっとり、国、関係地方公共団体、民間団体その他の関係者と連携して富士山の保全に関する施策を推進するための体制を整備するものとする。

(県民及び来訪者の役割)

第五条 県民及び富士山が所在する場所等を来訪する者(次条第十条及び第十一条において「来訪者」という。)は、基本理念にのっとり、富士山の有する顕著な普遍的価値についての理解を深め、富士山の保全に関する活動に主体的に取り組むよう努めるとともに、県が実施する富士山の保全に関する施策に協力するよう努めるものとする。

(事業者の役割)

第六条 富士山が所在する場所等で事業を行う者は、基本理念にのっとり、その事業活動に関し、富士山が所在する場所等の良好な景観の形成及び自然環境の保全、富士山を構成する個々の文化財の保護、来訪者の安全の確保その他の富士山の保全について配慮するとともに、県が実施する富士山の保全に関する施策に協力するよう努めるものとする。

(県の施策の策定等に当たっての配慮)

第七条 県は、富士山が所在する場所等の良好な景観又は自然環境に影響を及ぼすと認められる施策を策定し、及び実施するに当たっては、富士山が所在する場所等の良好な景観又は自然環境の保全について配慮するものとする。

(良好な景観の形成等)

第八条 県は、富士山が所在する場所等の良好な景観の形成及び自然環境の保全を図るために必要な措置を講ずるものとする。

(富士山を構成する個々の文化財の適切な保存等)

第九条 県は、富士山を構成する個々の文化財の適切な保存及び管理を図るために必要な措置を講ずるものとする。

(来訪者の特定の時期への集中による影響の防止)

第十条 県は、来訪者が特定の時期に集中することによる富士山の保全への影響を防止するために必要な措置を講ずるものとする。

(富士山の保全に関する学習の機会の提供等)

第十一条 県は、県民、来訪者等が、富士山の有する顕著な普遍的価値についての理解を深め、及び富士山の保全に関する意識を高めるとともに、これらの者の富士山の保全に関する活動を行う意欲が増進されるようにするため、学習の機会及び情報の提供その他の必要な措置を講ずるものとする。

(県民等の自発的な活動を促進するための措置)

第十二条 県は、県民、民間団体等が自発的に行う富士山の保全に関する活動が促進されるように、必要な措置を講ずるものとする。

(富士山が所在する場所等への安全で安心な来訪のための措置)

第十三条 県は、人々が安全に安心して富士山が所在する場所等を来訪することができるようにするため、必要な措置を講ずるものとする。

(富士登山をする者が遵守すべき事項等の周知)

第十四条 県は、富士山の自然環境の保全を図り、かつ、富士登山をする者の安全の確保を図るため、国、関係地方公共団体その他の関係者との連携の下に、富士登山をする者が遵守し、又は注意すべき事項を周知させるために必要な措置を講ずるものとする。

(巡視の実施等)

第十五条 県は、国又は関係地方公共団体との連携の下に、富士山の保全に関する施策を適正に実施するために必要な巡視、観測及び測定を行うものとする。

2 県は、富士山が所在する場所等の自然環境に関する調査研究、富士山の歴史及び文化に関する調査研究その他の富士山の保全に関する施策の策定及び適正な実施に必要な調査研究を実施するものとする。

3 県は、第一項に規定する巡視、観測及び測定並びに前項に規定する調査研究の体制を整備するものとする。

(協力の要請)

第十六条 県は、富士登山をする者等に対し、富士山の保全に関する施策を円滑に推進するための資金の出えんその他の必要な協力を求めるよう努めるものとする。

(財政上の措置)

第十七条 県は、富士山の保全に関する施策を推進するために必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

この条例は、公布の日から施行する。

山梨県世界遺産富士山基本条例

平成27年3月25日 条例第3号

(平成27年3月25日施行)