○山梨県地下水及び水源地域の保全に関する条例
平成二十四年十二月二十七日
山梨県条例第七十五号
山梨県地下水及び水源地域の保全に関する条例をここに公布する。
山梨県地下水及び水源地域の保全に関する条例
目次
第一章 総則(第一条―第七条)
第二章 地下水の適正な採取(第八条―第二十条)
第三章 水源地域における適正な土地利用の確保(第二十一条―第二十六条)
第四章 雑則(第二十七条・第二十八条)
第五章 罰則(第二十九条―第三十二条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この条例は、地下水及び水源地域の保全に関し、基本理念を定め、県、事業者及び土地所有者等の責務並びに県民の役割を明らかにするとともに、地下水の適正な採取及び水源地域における適正な土地利用の確保について必要な事項を定めることにより、健全な水循環の維持に資することを目的とする。
一 揚水設備 動力を用いて地下水(温泉法(昭和二十三年法律第百二十五号)による温泉及び鉱業法(昭和二十五年法律第二百八十九号)第五条に規定する鉱業権に基づき掘採される同法第三条第一項の可燃性天然ガスを溶存する地下水を除く。以下同じ。)を採取するための設備をいい、河川法(昭和三十九年法律第百六十七号)が適用され、又は準用される河川の河川区域内のものを除く。
二 水源地域 第二十一条第一項の規定により指定された地域をいう。
(基本理念)
第三条 地下水の保全は、地下水が水循環(水が蒸発、降下、流下及び地下への浸透並びに河川及び海への流出を繰り返すことをいう。)の一部をなすものであり、かつ、県民生活及び地域の産業の共通の基盤であることに鑑み、地下水は公共の利益に沿うように利用されなければならないという認識に立って、推進されなければならない。
2 地下水の保全は、地下水が限りある資源であることを踏まえ、急激な地下水位の低下や地盤沈下など地下水の減少による障害が発生しないよう、地下水の涵養と適正な利用を図ることにより推進されなければならない。
(県の責務)
第四条 県は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、地下水及び水源地域の保全に関する施策を策定し、及び実施する責務を有する。
2 県は、前項に関する施策を実施するときは、市町村との連携に努めるものとする。
(事業者の責務)
第五条 事業者は、その事業活動を行うに当たっては、基本理念にのっとり、地下水の保全を図るために必要な措置を講ずるとともに、県が実施する地下水の保全に関する施策に協力するよう努めるものとする。
2 事業者は、基本理念にのっとり、県が実施する水源地域の保全に関する施策に協力するよう努めるものとする。
(土地所有者等の責務)
第六条 土地所有者等は、基本理念にのっとり、県が実施する地下水の保全に関する施策に協力するよう努めるものとする。
2 土地所有者等は、基本理念にのっとり、森林の適正な整備に努めるとともに、県が実施する水源地域の保全に関する施策に協力するよう努めるものとする。
(県民の役割)
第七条 県民は、基本理念にのっとり、地下水の保全への配慮に努めるとともに、県が実施する地下水の保全に関する施策に協力するよう努めるものとする。
2 県民は、基本理念にのっとり、県が実施する水源地域の保全に関する施策に協力するよう努めるものとする。
第二章 地下水の適正な採取
(揚水設備の設置の届出)
第八条 揚水機の吐出口の断面積(吐出口が二以上あるときは、その断面積の合計。以下同じ。)が六平方センチメートルを超える揚水設備を設置しようとする者は、規則で定めるところにより、次の事項を知事に届け出なければならない。
一 氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名
二 揚水設備の設置の場所
三 揚水設備のストレーナーの位置
四 揚水機の吐出口の断面積及び原動機の出力
五 揚水設備により採取する地下水の水量
六 揚水設備により採取する地下水の用途
七 前各号に掲げるもののほか、規則で定める事項
2 前項の規定による届出には、揚水設備の設置の場所を示す図面その他規則で定める書類を添付しなければならない。
(届出事項の変更に係る勧告等)
第九条 知事は、前条第一項の規定による届出があった場合において、当該届出に係る揚水設備を用いた地下水の採取によりその周辺における地下水の利用に支障を及ぼすおそれがあると認めるときは、当該届出を受理した日から三十日以内に限り、当該届出をした者に対し、当該揚水設備により採取する地下水の水量、揚水機の原動機の出力その他当該届出に係る事項を変更すべきことを勧告することができる。
2 知事は、前項の規定による勧告をした場合において、その勧告を受けた者がその勧告に従わないときは、その旨及びその勧告の内容を公表することができる。
(実施の制限)
第十条 第八条第一項の規定による届出をした者は、当該届出が受理された日から三十日を経過した後でなければ、当該届出に係る揚水設備を設置してはならない。
(承継)
第十三条 第八条第一項の規定による届出をした者から当該届出に係る揚水設備を譲り受け、又は借り受けた者は、当該揚水設備に係る当該届出をした者の地位を承継する。
2 第八条第一項の規定による届出をした者について相続、合併又は分割(当該届出に係る揚水設備を承継させるものに限る。)があったときは、相続人、合併後存続する法人若しくは合併により設立した法人又は分割により当該揚水設備を承継した法人は、当該届出をした者の地位を承継する。
(廃止の届出)
第十四条 第八条第一項の規定による届出をした者は、次に掲げる場合は、遅滞なく、規則で定めるところにより、その旨を知事に届け出なければならない。
一 揚水設備を廃止した場合
二 揚水機の吐出口の断面積を六平方センチメートル以下とした場合
(勧告等)
第十五条 知事は、地下水の保全のため特に必要があると認めるときは、第八条第一項の規定による届出に係る揚水設備により地下水を採取する者に対し、その判断の根拠を示して、期限を定めて、当該揚水設備を用いた地下水の採取の停止、当該揚水設備を用いて採取する地下水の水量の制限その他地下水の保全上必要な措置を講ずべきことを勧告することができる。
(緊急時の措置)
第十六条 知事は、地下水を採取したこと又は異常な渇水その他これに準ずる事由による地下水位の異常な低下、地盤の沈下その他の障害の発生により地下水の保全を図るため緊急の必要があると認めるときは、当該障害の発生に影響を及ぼすと認められる区域において揚水設備を設置する者の全部又は一部に対し、期間又は期限を定めて、当該揚水設備を用いた地下水の採取の停止、当該揚水設備を用いて採取する地下水の水量の制限その他の地下水の保全上必要な措置を講ずべきことを命ずることができる。
(報告の徴収及び立入検査)
第十七条 知事は、この章の規定を施行するために必要な限度において、揚水設備を設置する者から必要な報告を求め、又はその職員に、揚水設備を設置する工場、事業所その他の場所に立ち入り、当該揚水設備その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる。
2 前項の規定により立入検査等をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。
3 第一項の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
(地下水涵養の努力義務)
第十八条 揚水設備を設置する者は、地下水の涵養に努めなければならない。
2 揚水機の吐出口の断面積が五十平方センチメートルを超える揚水設備を設置する者は、規則で定めるところにより、地下水の涵養に関する計画を作成し、知事に提出しなければならない。
3 前項の計画を提出した者は、当該計画の内容を変更したときは、規則で定めるところにより、当該変更後の計画を知事に提出しなければならない。
(地下水採取量の定期報告等)
第十九条 前条第二項の揚水設備を設置する者は、規則で定めるところにより、水量を測定するための機器を用いて当該揚水設備により採取した地下水の水量を測定し、その結果について記録を作成しなければならない。
(常時監視)
第二十条 知事は、地下水位の状況を常時監視しなければならない。
2 知事は、前項の規定による常時監視を行うため必要があると認めるときは、揚水設備を設置する者に対し、必要な協力を求めることができる。
3 知事は、毎年一回、第一項の規定による常時監視の結果について、インターネットの利用その他の適切な方法により公表しなければならない。
第三章 水源地域における適正な土地利用の確保
(水源地域の指定)
第二十一条 知事は、森林の存する地域のうち、水源涵養機能の維持及び増進を図るため適正な土地利用を確保することが必要と認められるものを水源地域として指定することができる。
2 知事は、水源地域の指定をしようとするときは、あらかじめ、関係市町村の長の意見を聴くものとする。
3 知事は、水源地域の指定をしようとするときは、あらかじめ、規則で定めるところにより、その旨を告示し、その案を当該告示の日から二週間公衆の縦覧に供するものとする。
5 知事は、前項の規定により縦覧に供された案について異議がある旨の意見書の提出があったときは、規則で定めるところにより、当該意見書を提出した者の意見の聴取を行うものとする。
6 知事は、水源地域を指定する場合には、その旨及びその区域を告示するとともに、関係市町村の長に通知するものとする。
7 水源地域の指定は、前項の規定による告示によってその効力を生ずる。
(所有権等の移転等の事前届出)
第二十二条 土地所有者等は、水源地域内の土地について所有権等の移転又は設定をしようとするときは、当該所有権等の移転又は設定に係る契約(以下「土地売買等の契約」という。)を締結しようとする日の三十日前までに、規則で定めるところにより、次の事項を知事に届け出なければならない。
一 土地売買等の契約の当事者の氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名
二 土地売買等の契約に係る土地の所在及び面積
三 土地売買等の契約に係る土地の所有権等の種別及び内容
四 土地売買等の契約を締結しようとする日
五 土地売買等の契約に係る土地の所有権等の移転又は設定後における当該土地の利用目的
六 前各号に掲げるもののほか、規則で定める事項
2 前項の規定は、土地売買等の契約の当事者の一方又は双方が国又は地方公共団体である場合その他規則で定める場合には、適用しない。
(助言)
第二十四条 知事は、第二十二条第一項の規定による届出をした者に対し、当該届出に係る土地の利用について、当該土地及びその周辺の土地(水源地域内のものに限る。)における水源涵養機能の維持及び増進を図るために必要な助言をするものとする。
(勧告等)
第二十五条 知事は、土地所有者等が次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、その者に対し、期限を定めて必要な措置を講ずべきことを勧告することができる。
一 第二十二条第一項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をしたとき。
二 次条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は調査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、若しくは質問に対して答弁せず、若しくは虚偽の答弁をしたとき。
2 前項の規定により立入調査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。
3 第一項の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
第四章 雑則
3 知事は、この条例の目的を達成するため必要があると認めるときは、市町村の長に対し、情報の提供その他の協力を依頼することができる。
第五章 罰則
(罰則)
第二十九条 第十六条の規定による命令に違反した者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
第三十条 次の各号のいずれかに該当する者は、二十万円以下の罰金に処する。
一 第八条第一項の規定による届出をしないで、又は虚偽の届出をして、揚水設備を設置した者
第三十一条 次の各号のいずれかに該当する者は、十万円以下の罰金に処する。
一 第十七条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、若しくは質問に対して答弁せず、若しくは虚偽の答弁をした者
二 第十九条第二項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
2 法人でない団体について前項の規定の適用がある場合には、その代表者又は管理人が、その訴訟行為につき法人でない団体を代表するほか、法人を被告人又は被疑者とする場合の刑事訴訟に関する法律の規定を準用する。
附則
(適用区分)
5 第二十二条の規定は、平成二十五年五月一日以後に土地売買等の契約を締結しようとする土地所有者等について適用する。
(罰則)
6 附則第二項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、二十万円以下の罰金に処する。
8 法人でない団体について前項の規定の適用がある場合には、その代表者又は管理人が、その訴訟行為につき法人でない団体を代表するほか、法人を被告人又は被疑者とする場合の刑事訴訟に関する法律の規定を準用する。