○国土利用計画(山梨県計画)
平成二十一年三月三十一日
山梨県告示第百十八号
国土利用計画法(昭和四十九年法律第九十二号)第七条第一項の規定により次のとおり国土利用計画(山梨県計画)を定めたので、同条第五項の規定により公表する。
国土利用計画(山梨県計画)
前文
近年、本県を取り巻く社会経済情勢は、人口減少社会の到来や社会・経済のグローバル化の進展、情報通信技術のさらなる高度化など、様々な時代の潮流が複雑にからみあう中、急激に変化しつつある。
また、地球温暖化の進行やそれに伴う自然災害の増加などが世界規模で問題となる中、循環と共生を重視した県土利用にあわせ、安全で暮らしやすい県土利用への要請が一層高まっている。
一方、バブル経済崩壊後、下落し続けてきた国内の地価は、大都市圏を中心に上昇へと転ずる動きが見られるようになったものの、県内では、依然として下落傾向が続いており、土地需要が低迷する中、農業地域における耕作放棄地の増加、中心市街地の空洞化等、様々な土地問題が発生し、県土の管理水準の低下などが懸念されている。
この計画は、こうした時代の潮流や変化に対応するとともに、将来を展望する中、国土利用計画法第七条の規定に基づき、山梨県の区域における国土(以下「県土」という。)の利用に関し必要な事項を定めるものである。
また、この計画は、県の総合計画と整合を図るとともに、国が定める国土の利用に関する計画(以下「全国計画」という。)を踏まえ策定するものであり、市町村が定める国土の利用に関する計画(以下「市町村計画」という。)及び山梨県土地利用基本計画等県土利用に関する諸計画の基本となるものである。
1 県土の利用に関する基本構想
(1) 県土利用の基本方針
ア 県土利用の基本理念
先人のたゆみない努力によって守り育てられた県土は、現在及び将来における県民のための限られた資源であるとともに、生活及び生産を通ずる諸活動の共通の基盤であり、よりよい形で未来へと引き継ぐべき資産である。
このため、県土の利用については、公共の福祉を優先させ、地域の自然的、社会的、経済的及び文化的条件を十分に踏まえながら、県民が、真の豊かさや暮らしやすさを実感できる健康で文化的な生活環境の確保を図るとともに、県土の均衡ある発展や持続可能な県土づくりを目指し、総合的かつ計画的に行わなければならない。
イ 県土利用をめぐる条件の変化
今後の県土の利用を計画するに当たっては、県土利用をめぐる次のような基本的条件の変化を考慮し、土地需要の調整、効率的利用の観点から引き続き県土の有効利用を進めるとともに、安全性、暮らしやすさなどに着目し、県土利用の質的向上を図る必要がある。
(ア) 人口減少時代の中、本県の人口も年々、わずかずつながら減りつつある。しかしながら、本県は、東京圏に隣接する有利な立地条件にあわせ、緑豊かな森林や豊富な温泉、美味しい果物やワインなど、人々の心にうるおいをもたらす数多くの地域資源を有していることから、二地域居住を志向する人々や「健康」、「癒し」を求める人々等による交流人口の増加が見込まれている。
(イ) また、中部横断自動車道や圏央道をはじめとする首都圏における広域的な高速道路網の整備が進むとともに、超電導磁気浮上式鉄道による中央新幹線(以下「リニア中央新幹線」という。)の早期実現に向けた取り組みの進展など、新たな高速交通時代が目前に迫る中、様々な高速交通基盤の結節点となる本県は、我が国の人流、物流の拠点として発展していく可能性がより高まっている。
(ウ) また、少子化による人口減少と高齢化が同時に進行するとともに、中心市街地の衰退傾向が続く中、また、都市経営コストの最適化、環境の負荷の低減、高齢者の移動の利便性確保等からも、都市を郊外へと拡大させ人口増加を図ってきた従来の都市政策を転換し、都市機能の拡散を抑え、都市基盤などの既存ストックが確保されている中心市街地などに都市機能を集約したまちづくりを進めることが求められている。
(エ) また、社会経済諸活動については、東アジアの急速な経済成長への対応が求められるとともに、情報通信技術の発達、新産業分野の成長などが見通され、県内各地の成長力や競争力の強化につながる基盤整備が求められている。
(オ) 一方、本県は、急峻な地形が多く、ぜい弱な地質のため、自然災害の危険地域が点在している。また、近年、都市化の進展等に伴い、住宅地や工業用地等が周辺の山地にまで拡大しているため、土砂災害の危険性が増大し、さらに東海地震などの大規模地震や富士山噴火の発生も危惧され、災害に強い安全な県土づくりへの要請が一層高まっている。
(カ) また、農用地や森林は、とりわけ中山間地域において、農林業従事者の減少・高齢化、過疎化の進行等により、その管理水準の低下が懸念されている。
このため、食料等の生産のほか、県土保全や自然環境の保全など農用地で農業生産活動を行うことにより生ずる多面的機能や森林の有する公益的機能を確保する観点から、耕作放棄地の解消や優良農用地の保全、森林の整備等への対応が求められている。
(キ) 他方、地球温暖化が進行し温室効果ガス排出削減が急務となる中、地球規模での生態系の危機等、自然の物質循環への負荷の増大に伴って生じる諸問題が発生している。
また、東アジアの経済成長に伴う資源制約の高まりや我が国の消費資源の安定確保に係る懸念等が存在する。
さらに、大気汚染や水質の汚濁、ごみの増加など身近なところでも、都市・生活型の環境問題が大きな課題となっており、環境に対する県民意識も一層高まっている。
このため、県土の利用に当たっては、長期的な視点に立って循環と共生を重視した利用を基本とすることが求められている。
(ク) また、美しい農山村や落ち着いた都市の景観の毀損、生活環境や自然環境の悪化などが懸念される一方、良好な街並みの形成や里地里山の保全・再生、自然とのふれあいや心の豊かさ等に対する志向が高まっている中、安全面や環境面も含め、人の営みと自然の営みの調和を図ることにより、美しくゆとりある県土利用をさらに進めていくことが求められている。
(ケ) さらに、郊外に大規模集客施設が立地される一方、既存中心市街地では空き店舗等が増加するなど、特定の土地利用が他の土地利用と相互に関係する状況が見られる中、県土利用について総合的な観点からマネジメントを行っていくことの重要性が高まっている。
ウ 計画期間における課題
この計画においては、県土利用をめぐる条件の変化等を踏まえ、①産業の活力と交流を支える県土利用、②安全で暮らしやすい県土利用、③循環と共生を重視した県土利用を持続可能な県土づくりを進める上での基本的課題としてとらえ、県土の利用目的に応じた区分ごとの個々の土地需要の量的な調整を図りながら、県土の有効利用の促進及び適正な保全を図りつつ、質的向上をより一層積極的に推進するものとする。
なお、県土利用の総合的なマネジメントに関しては、土地利用の影響が広域に及ぶことを踏まえ、地域において総合的な観点で土地利用の基本的な考え方についての合意形成を図るとともに、それぞれの実情に即して土地利用の諸問題に柔軟かつ能動的に取り組んでいくことが必要である。
(ア) 産業の活力と交流を支える県土利用
a 国内外との交流の活発化を図り、豊かさを実感できる県土づくりを進めていくためには、その基盤となる中部横断自動車道、リニア中央新幹線などの高速交通網やそれらと連携する地域内交通網の整備が重要である。
また、交通体系の整備とあいまって、人、物、情報の活発な交流を促すため、中心市街地の活性化や都市機能が集約した多くの人にとって暮らしやすい市街地の形成を図るとともに、物流拠点や情報発信拠点の形成、農山村における都市住民との交流の場づくり、二地域居住に対応した場の整備などを積極的に進める必要がある。
さらに、経済のグローバル化をはじめとする急激な社会経済情勢の変化に的確に対応できる活力ある産業を育成するため、新産業創出への支援、優良企業の誘致等を推進するとともに、農林業の振興や山梨ブランドの確立などを図る必要がある。
b 産業の活力と交流を支える県土利用に伴う土地需要の量的調整に関しては、まず、人口減少下であっても当面増加する都市的土地利用について、市街地の再開発など土地の高度利用及び低未利用地の有効利用を促進することにより、その合理化、効率化を図る必要がある。
他方、農林業的土地利用を含む自然的土地利用については、地球温暖化防止、食料等の安定供給と自給能力の向上、自然循環システムの維持、生物多様性の確保等に配慮しつつ、農林業の生産活動とゆとりある生活環境や心豊かな人間形成の場としての役割に配慮して、適正な保全と活用を図る必要がある。
(イ) 安全で暮らしやすい県土利用
a 災害に強い安全な県土づくりのためには、地形、地質及び地域ごとの特性を踏まえた適正な県土の利用を基本としつつ、被災時の被害の最小化を図る「減災」の考え方も踏まえ、防災拠点の整備、被害拡大の防止や復旧復興の備えとしてのオープンスペースの確保、電気、ガス、上下水道、通信、交通等のライフラインの多重化・多元化等を一層進める必要がある。
また、県土面積の八割を占めている森林や平坦地から山間地にまで及ぶ農用地において農業生産活動により得られる県土保全機能等の向上、さらには水系の総合的管理により、県土の安全性を総合的に高めていく必要がある。
b 一方、暮らしやすさを実感できる生活環境の整備に当たっては、「年齢や性別、身体的状況などを問わず、すべての人が快適に暮らせるよう、まちづくりやサービスなどにあらかじめ配慮する」という、ユニバーサルデザインが尊重されることが重要である。
誰もが真の豊かさを実感できるような社会の実現を図るため、将来を担う子どもたちが健やかに育つ環境の確保、高齢者や障害をもつ人などのニーズに配慮した生活環境の整備を進める必要がある。
(ウ) 循環と共生を重視した県土利用
a 社会経済の発展や生活水準の向上に伴い発生する生活環境問題に対応するため、廃棄物の発生抑制(リデュース)、再使用(リユース)、再生利用(リサイクル)の3Rを一層進めるなど、循環型社会の構築を行う必要がある。
また、自然環境は、地形、地質、気象、水、大気、土壌、動植物等、様々な要素で構成されており、これらは、相互に密接不可分の関係にある。特に、本県においては、動植物などが多様性に富み、豊かで固有の自然環境を形成していることが特徴であり、それらを保全・再生する必要がある。
これらを踏まえ、人間活動と自然とが調和した物質循環の維持、流域における水循環と土地利用の調和、緑地・水面等の活用による環境負荷の低減、生物の多様性が確保された自然の保全・再生・創出を図ることにより、自然のシステムにかなった循環と共生を重視した県土利用を進めていく必要がある。
b 美しくゆとりある県土利用を進めるためには、人の営みと自然の営みが織りなす調和の取れた環境を財産ととらえ、地域が主体となってその質を総合的に高めていくことが重要である。
このため、都市においては、緑地空間や水辺空間の確保、土地利用の高度化等により、ゆとりある都市環境を形成し、農山村においては、地域の活性化を図りつつ、緑豊かな環境の確保、歴史的・文化的風土の保存、地域の自然的、社会的条件等を踏まえた個性ある景観の保全・形成などを図る必要がある。
(2) 地域類型別の県土利用の基本方向
都市、農山村、自然維持地域の県土利用の基本方向を以下のとおりとする。
なお、地域類型別の県土利用に当たっては、各地域類型を別個にとらえるだけでなく、相互の機能分担、交流・連携など、それぞれの関係性を考慮することが重要である。
ア 都市
市街地については、少子高齢化の進行と人口減少に伴い、全体的、長期的に、開発への志向、需要は低下していくことが見通される。
これを環境負荷の少ない豊かで暮らしやすい都市形成の好機ととらえ、二酸化炭素排出抑制型の都市構造や集約型都市構造なども視野に入れ、都市における環境を安全かつ健全でゆとりあるものとし、あわせて社会経済諸活動を取り巻く状況の変化に適切に対応できるようにすることが重要となっている。
このため、中心市街地等における都市機能の集積やアクセシビリティの確保を推進しつつ、既成市街地においては、再開発等により、土地利用の高度化を図るとともに、低未利用地の有効利用を促進する。
市街化を図るべき地域においては、地域の合意を踏まえ、計画的に良好な市街地等の整備を進める。
また、都市間の広域的な交通体系を整備することにより、拠点性を有する複数の都市や周辺農山村の相互の機能分担、交流・連携を促進し、効率的な土地利用を図る。
なお、新たな土地需要がある場合には、既存の低未利用地の再利用を優先させる一方、農用地や森林を含む自然的土地利用からの転換は抑制することを基本とする。
また、都市の整備に当たっては、自然・生活条件や防災施設の整備状況を考慮した土地利用への誘導、地域防災拠点の整備、オープンスペースの確保、ライフラインの多重化・多元化等により、災害に対する安全性を高め、災害に強い都市構造の形成を図る。
あわせて、住居系、商業系、工業系等の多様な機能をバランスよく配置すること、健全な水循環系の構築や資源・エネルギー利用の効率化に配慮した整備を行うこと、ヒートアイランド現象を改善するため緑地等を効率的に配置することなどにより、都市活動による環境への負荷が少ない都市の形成を図る。
さらに、歴史的遺産の保全や美しく良好な街並み景観の形成、豊かな居住環境の創出を図るとともに、快適な都市環境を形成するための緑地や水辺空間の創出と保全を図る。
イ 農山村
農山村については、農畜産物、林産物等の生産の場であるだけではなく、緑や水など豊かな自然環境や美しい景観を有し、農業や森林整備などを通じて水源のかん養、県土の保全など重要な機能を担っている。
このため、県民共有の財産であるという認識の下、地域特性を踏まえた良好な生活環境を整備するとともに、多様な県民ニーズに対応した農林業の展開、地域産業の振興や地域に適合した諸産業の導入、余暇需要への対応等により総合的に就業機会を確保し、活力ある農山村づくりを進める。
このような対応の中、優良農用地及び森林の確保、整備及び総合利用を図るとともに、地域住民を含む多様な主体の参画等により、県土の適切な管理を図る。
また、あわせて自然環境と調和した美しい農山村景観や生態系のネットワークの維持・形成を図るとともに、都市との機能分担や交流・連携を促進することを通じ、効率的な土地利用を図る。
特に、農業経営の規模拡大が比較的容易な地域にあっては、生産性の向上に重点を置いて、効率的かつ安定的な農業経営を営む多様な担い手等への農用地の集積を図るとともに、農業生産基盤の整備を図る。
中山間地域など農業等の生産条件等が不利な地域にあっては、生産条件の不利を補正するなどの支援を行うとともに農業生産基盤の整備を図るほか、地域資源の総合的な活用等による地域の活性化を踏まえた土地利用を図る。
また、農地と宅地の混在する地域においては、地域住民の意向に配慮しつつ、農村地域の特性に応じた良好な生産及び生活環境の一体的な形成を進め、農業生産活動と地域住民の生活環境が調和するよう、地域の実情に応じた計画的かつ適切な土地利用を図る。
ウ 自然維持地域
原生的な自然地域、野生生物の重要な生息・生育地、すぐれた自然の風景地など、自然環境の保全を旨として維持すべき地域については、野生生物の生息・生育空間の適切な配置や連続性を確保しつつ、劣化した自然環境の再生をも視野に入れながら、適正に保全する。
その際、野生鳥獣被害や既存生態系の破壊等につながる外来生物の侵入等の防止に努めるとともに、自然環境データの整備等を総合的に図る。
あわせて、適正な管理の下で、エコツーリズムの取り組み等、県民誰もが自然に対する理解を深め、自然とふれあい、自然から学ぶことができる場としての利用を図る。
(3) 利用区分別の県土利用の基本方向
利用区分別の県土利用の基本方向は以下のとおりとする。
なお、各利用区分を別個にとらえるだけでなく、産業の活力と交流を支える県土利用、安全で暮らしやすい県土利用、循環と共生を重視した県土利用といった横断的な観点に十分留意する必要がある。
ア 農用地については、農産物需給に対応する農業生産力の確保を基本とし、県土保全機能、やすらぎ・うるおいの空間、防災の空間機能など公益的役割が十分に発揮できるよう、その管理・整備を計画的に推進する。
このため、生産性の高い農業を目指し、農地の流動化、農業生産基盤整備を推進しつつ、優良農用地、集団的農用地の保全、確保を図る。
また、農用地の適正な保全と管理を通じ、県土保全、防災、さらに、近年の自然志向に対応した多面的機能が効果的に発揮できるよう努める。
なお、省資源・省エネルギーのための技術を取り入れるとともに、生態系及び環境への負荷の低減に配慮した生産活動を推進する。
イ 森林については、「緑の社会資本」といえる森林の恩恵を、後世の人々が享受できるよう、より長期的視点に立った森林づくりを推進する。
また、温室効果ガス吸収源対策の着実な実施とともに森林資源の成熟化、世界的な木材の需給動向の変化等を踏まえ、森林の持つ木材生産機能、県土保全機能、水源かん養機能、大気の浄化機能等を総合的かつ高度に発揮させるため、その整備と保全を計画的に推進する。
特に、地球温暖化防止対策としては、間伐等の森林整備を行うことにより、適正に管理された森林を拡大し、森林における二酸化炭素の吸収量の確保を推進する。
本県森林の四十六パーセントを占める県有林については、活力ある森林の維持・管理により、県土の保全など森林の公益的機能の充実強化を図るとともに、それぞれの地域にふさわしい施業や事業を通じて地域振興を図る。
また、学術的価値や希少な価値を持つ森林及び亜高山帯の森林等の人為に対して最も弱い植生等については、極力保全に努めるとともに、貴重な森林生態系の適正な維持・管理を図る。
さらに、都市及びその近郊の森林については、良好な生活環境を確保するため、積極的に緑地としての保全及び整備を図る。
ウ 原野のうち、湿原、水辺植生、野生生物の生息・生育地等貴重な自然環境を形成しているものについては、生態系及び景観の維持等の観点から保全を基本とし、こうした貴重な自然環境を形成しているものが劣化している場合は再生を図る。
その他の原野については、地域の自然環境を形成する機能に十分配慮しつつ、適正な利用を図る。
エ 水面・河川・水路については、河川氾濫地域などにおける安全性の確保、より安定した水供給のための水資源開発、水力電源開発、農業用用排水路の整備等に必要な用地の確保を図るとともに、施設の適切な維持管理・更新や水面の適正な利用を通じて、既存用地の持続的な利用を図る。
また、その改修・整備に当たっては、流域の特性に応じた健全な水循環系の構築等を通じ、自然環境の保全・再生に配慮するとともに、自然の水質浄化作用、生物の多様な生息・生育環境、うるおいのある水辺空間、防災等のオープンスペース、都市におけるヒートアイランド現象の改善など多様な機能の維持・向上を図る。
オ 道路のうち、一般道路については、県内交通ネットワークを確立し、地域間の交流・連携、県土の有効利用及び良好な生活・生産基盤の整備を進めるため、必要な用地の確保を図るとともに、施設の適切な維持管理・更新を通じて、既存用地の持続的な利用を図る。
その整備に当たっては、歩行者が安心して歩けるよう歩道を設置するなど安全性、快適性の向上及び道路の持つ防災機能や下水道など公共・公益施設を収容する機能などの発揮に配意するとともに、周囲の環境や景観の保全に十分配慮する。
また、農道及び林道については、農林業の生産性の向上、農用地及び森林の適正な管理を図るため、必要な用地の確保を図るとともに、施設の適切な維持管理・更新を通じて既存用地の持続的な利用を図る。
その整備に当たっては、自然環境や景観の保全に十分配慮する。
カ 住宅地については、成熟化社会にふさわしい豊かな住生活の実現、秩序ある市街地形成の観点から、地域の活性化や定住化への配慮や耐震・環境性能を含めた住宅ストックの質の向上を図るとともに、住宅周辺の生活関連施設の整備を計画的に進めながら、周囲の土地利用を考慮しつつ、良好な居住環境が形成されるよう、必要な用地の確保とその整備を図る。
また、主として既成市街地においては、環境の保全に配慮しつつ、既存住宅地の高度利用や低未利用地の有効利用によるオープンスペースの確保、道路の整備など、安全性の向上とゆとりある快適な環境の確保を図る。
さらに、子どもや高齢者、障害をもつ人などに配慮した住まいづくりを進めるとともに、災害に対する地域の自然的・社会的特性を踏まえた適切な土地利用を図る。
キ 工業用地については、地域経済の活性化を図るため、環境保全、地域社会及び周辺土地利用との調和に配慮しながら、グローバル化、情報化の進展等に伴う高付加価値化や構造変化、地域資源を重視した工場の立地動向に対応しつつ、産業・物流インフラの整備状況、地域産業活性化の動向等を踏まえ、工業生産に必要な用地の確保を図る。
また、将来性のある優良企業の誘致を図るため、企業の意向を十分把握した上で、立地場所の選定、土地利用調整などを進める。
ク その他の宅地(事務所・店舗用地等)については、市街地の再開発等による土地利用の高度化、中心市街地における都市福利施設の整備や商業の活性化並びに良好な環境の形成に配慮しつつ、経済のソフト化・サービス化の進展等に対応して、必要な用地の確保とその整備を図る。
また、郊外の大規模集客施設については、中心市街地の機能低下など都市構造への広域的な影響や地域の合意形成、地域の景観との調和を踏まえた適正な立地を図る。
ケ 以上のほか、文教施設、公園緑地、環境衛生施設、厚生福祉施設、交通施設等の公用・公共用施設の用地については、県民生活上の重要性、ニーズの多様化、ユニバーサルデザインの考え方等を踏まえ、環境の保全、地域バランス、広域的活用等に配慮して、必要な用地の確保を図る。
また、その整備に当たっては、耐災性の確保と災害時における施設活用に配慮するとともに、都市機能を中心市街地に集約させる観点から、空き店舗等の再生利用や街なか立地に配慮する。
新しい高速鉄道システムの実用化に向け、山梨リニア実験線の技術開発の取り組みを促進するとともに、リニア中央新幹線の整備を視野に入れ、県全体の将来を展望した県土づくりに努める。
コ レクリエーション用地については、県民の価値観の多様化や国際観光の振興、自然とのふれあい志向の高まり等に対応するとともに、手軽なスポーツ活動や健康づくりが進められるよう、適切な整備に努める。
また、その整備に当たっては、自然環境の保全を図りつつ、地域の振興等を総合的に勘案するとともに、有効利用の観点から、農用地、森林、河川等の余暇空間としての複合的利用や施設の適切な配置と広域的な利用に配慮する。
サ 低未利用地のうち、都市の低未利用地については、再開発用地や防災・自然再生のためのオープンスペース、公共用施設用地、居住用地等としての再利用を図り、農山村における耕作放棄地については、解消に向けて、所有者等による適切な管理に加え、多様な管理主体による直接的・間接的な活用など、地域の実情や立地条件に応じた有効利用の促進を図る。
2 県土の利用目的に応じた区分ごとの規模の目標及びその地域別の概要
(1) 県土の利用目的に応じた区分ごとの規模の目標
ア 計画の目標年次は、平成二十九年とし、基準年次は平成十七年とする。
イ 県土の利用に関して基礎的な前提となる平成二十九年の人口は、およそ八十四万五千人、世帯数は、およそ三十三万七千世帯と想定する。
ウ 県土の利用区分は、農用地、森林、宅地等の地目別区分及び市街地とする。
エ 県土の利用区分ごとの規模の目標については、利用区分別の県土の利用の現況と変化についての調査に基づき、将来における人口及び経済の見通しを前提とし、用地原単位等を基に必要面積を予測し、土地利用の実態との調整の上、定めるものとする。
オ 県土の利用構想に基づく平成二十九年の利用区分ごとの規模の目標は、次表のとおりである。
なお、以下の数値については、今後の経済社会の不確定さなどにかんがみ、弾力的に理解されるべき性格のものである。
表 県土の利用目的に応じた区分ごとの規模の目標
(単位:ha、%)
利用区分等 | 平成17年 | 平成29年 | 構成比 | |
平成17年 | 平成29年 | |||
農用地 | 25,911 | 24,800 | 5.8 | 5.6 |
農地 | 25,900 | 24,790 | 5.8 | 5.6 |
採草放牧地 | 11 | 10 | 0.0 | 0.0 |
森林 | 345,881 | 345,200 | 77.5 | 77.3 |
原野 | 1,971 | 1,970 | 0.4 | 0.4 |
水面・河川・水路 | 9,256 | 9,200 | 2.1 | 2.1 |
道路 | 10,889 | 11,720 | 2.4 | 2.6 |
宅地 | 17,605 | 18,490 | 3.9 | 4.1 |
住宅地 | 10,809 | 11,390 | 2.4 | 2.6 |
工業用地 | 1,177 | 1,250 | 0.3 | 0.3 |
その他の宅地 | 5,619 | 5,850 | 1.3 | 1.3 |
その他 | 35,024 | 35,160 | 7.8 | 7.9 |
合計 | 446,537 | 100.0 | ||
市街地 | 6,389 | 6,300 | 1.4 | 1.4 |
(1) 道路は、一般道路、農道及び林道である。
(2) 市街地は、「国勢調査」の定義による人口集中地区である。
(2) 地域別の概要
ア 地域別の利用区分ごとの規模の目標を定めるに当たっては、土地、水、自然などの県土資源の有限性を踏まえ、地域の特性を活かしつつ地域間の均衡ある発展を図る見地から、必要な基礎条件を整備し、県土全体の調和ある有効利用を図るとともに、環境が保全されるよう、適切に対処しなければならない。
イ 地域の区分については、本県における自然的、社会的、経済的諸条件等を勘案して国中地域及び富士・東部地域の二区分とする。
それぞれの地域の範囲は次のとおりとする。
地域の区分 | 地域の範囲 |
国中地域 | 甲府市、山梨市、韮崎市、南アルプス市、北杜市、甲斐市、笛吹市、甲州市、中央市、西八代郡、南巨摩郡、中巨摩郡 |
富士・東部地域 | 富士吉田市、都留市、大月市、上野原市、南都留郡、北都留郡 |
ウ 平成二十九年における県土の利用区分ごとの規模の目標の地域別の概要は、次のとおりである。
(ア) 農用地については、宅地等への転換による減少が見込まれるが、認定農業者の育成、法人化の推進、集落営農組織の立ち上げ等の担い手確保や農地の流動化を進めるとともに耕作放棄地の解消等の施策を講ずることにより、国中地域では約四パーセント減の二万二千百七十ヘクタール程度、富士・東部地域では約六パーセント減の二千六百三十ヘクタール程度となる。
(イ) 森林については、宅地・工場事業場や道路等への転用が見込まれるものの、県土保全と良好な環境の形成を図るという見地から、活力ある森林の維持・管理に努めることにより、ほぼ横ばいで国中地域二十三万八千百七十ヘクタール程度、富士・東部地域十万七千三十ヘクタール程度となる。
(ウ) 原野については、その保全及び適正な利用を図ることにより、ほぼ横ばいの富士・東部地域千九百七十ヘクタール程度となる。
(エ) 水面・河川・水路については、ダムの建設により水面は増加するものの、水田面積の減少による水路の減少により、ほぼ横ばいの国中地域六千二百三十ヘクタール程度、富士・東部地域二千九百七十ヘクタール程度となる。
(オ) 道路については、幹線道路、生活道路等の一般道路、農道及び林道の計画的整備等により、国中地域では約八パーセント増の八千九百三十ヘクタール程度、富士・東部地域では約七パーセント増の二千七百九十ヘクタール程度となる。
(カ) 宅地のうち住宅地については、当面世帯数が増加することにより国中地域では約五パーセント増の九千百八十ヘクタール程度、富士・東部地域では約五パーセント増の二千二百十ヘクタール程度となる。
工業用地については、企業誘致推進により国中地域では約三パーセント増の千十ヘクタール程度、富士・東部地域では約十九パーセント増の二百四十ヘクタール程度となる。
その他の宅地(事務所・店舗用地等)については、既存市街地の土地利用の高度化等により、国中地域では約五パーセント増の四千二百ヘクタール程度、富士・東部地域では約二パーセント増の千六百五十ヘクタール程度となる。
(キ) その他については、国中地域では二万五千五百三十ヘクタール程度、富士・東部地域では九千六百三十ヘクタール程度となる。
(ク) 市街地の面積については、国中地域ではほぼ横ばいの五千百ヘクタール程度、富士・東部地域では約七パーセント減の千二百ヘクタール程度となる。
3 目標を達成するために必要な措置の概要
目標を達成するために必要な措置の概要は、次のとおりである。
これらの措置については、「産業の活力と交流を支える県土利用」、「安全で暮らしやすい県土利用」及び「循環と共生を重視した県土利用」の三つの基本的課題への対応を踏まえ、総合的かつ計画的に実施を図る必要がある。
(1) 公共の福祉の優先
県土の永続性、有限性、基盤性を基本認識として、公共の福祉を優先させるとともに、地域の特性に応じて、適正な土地利用が図られるよう、各種の規制措置、誘導措置等を通じた総合的な対策の推進を図る。
(2) 国土利用計画法等の適切な運用
国土利用計画法及びこれに関連する土地利用関係法令等の適切な運用により、土地利用の計画的な調整を行い、秩序ある県土利用の確保を図る。
その際、土地利用の影響の広域性を踏まえ、本計画及び市町村計画等の地域の土地利用に関する計画を基本として、関係行政機関等相互間の適切な調整を図る。
また、地域の実情に即した適切な市町村計画の策定に資するため、地域の取り組み事例等の情報の共有を促進する。
(3) 産業の活力と交流の基盤となる地域整備施策の推進
ア 地域の持つ多様性や特性を十分活かしつつ、地域間の機能分担と相互の緊密な交流・連携を図る中、地域の自立・産業の活性化を通じた県土の均衡ある発展を目指し、地域整備の施策を推進する。
イ 特に、広域的視点に立った対応が求められる課題が増加していることから、これまで以上に、周辺地域との連携、近隣都県との交流や連携を深める中、社会基盤の整備状況などを考慮した計画的な土地利用を進めていく。
また、事業の計画等の策定に当たっては、社会的側面、経済的側面、環境的側面などについて総合的に配慮する。
(4) 県土の保全と安全性の確保
ア 県土の保全と安全性確保のため、水系ごとの治水施設の整備と流域内の土地利用との調和、地形等自然条件と施設配置との適合性、超過洪水、火山噴火及び地震等への対応に配慮しつつ、土砂災害警戒区域等の指定により適正な土地利用への誘導を図るとともに、砂防設備、地すべり防止施設、急傾斜地崩壊防止施設等の保全施設の整備を推進する。
イ 食料等の供給に加え、県土の保全、水源かん養等の農業の有する多面的機能を発揮させるため、農道やほ場等の農業生産基盤の整備を進めるとともに、地域の実情に応じた新たな管理主体の育成など、農用地の管理水準の向上を図る。
ウ 森林の持つ県土の保全、水源かん養等の公益的機能の向上を図るため、地域特性に応じて、間伐の推進や針広混交林化等の森林の整備、保安林の適切な管理及び治山施設の整備等を進め、森林の管理水準の向上を図る。
その際、林内路網や機械化等効率的な作業システムの整備、山村における生活環境の向上、林業の担い手の育成等を図るなど、森林管理のための基礎条件を整備する。
また、森林についての都市住民の理解と参加を促し、上下流一体となった整備を図る。
エ 地域社会の安全性を確保するため、災害に配慮した土地利用への誘導、県土保全施設や地域防災拠点の整備、オープンスペースの確保、ライフラインの多重化・多元化、危険地域についての情報の周知等を図る。
特に、水害、山地災害に対する防災対策を推進するとともに、市街地では、防災緑地の確保、避難路の整備及び施設建築物の不燃化を促進するなど、総合的な災害防止対策を講ずる。
さらに、大規模な宅地開発等に当たっては、総合的な土地利用調整を行うなど、防災対策に十分配意し、適正かつ計画的な土地利用を図る。
(5) 環境の保全と美しい県土の形成
ア 低炭素社会の構築を目指すとともに、良好な大気環境の保全、都市におけるヒートアイランド現象の改善を推進するため、太陽光、バイオマス等の新エネルギーの導入、公共交通機関の利用促進や二酸化炭素の発生を抑制する円滑な交通体系の構築など、地域・都市構造や交通システム、さらには経済社会システムの形成の観点から、環境負荷の低減に向けた土地利用を図る。
また、生活環境の保全を図るため、住居系、商業系、工業系等の用途区分に応じた適正な土地利用への誘導、工場立地及び市街地整備等における緑地の確保、交通施設周辺における緑地帯の設置等、環境の整備を推進する。
さらに、二酸化炭素の吸収源となる森林や都市等の緑の適切な保全・整備を図る。
イ 農用地や森林の適切な維持管理、汚水処理施設による適切な処理、下水処理水等の効果的利用、水辺地等の保全による河川・湖沼の自然浄化能力の維持・回復等を通じ、水環境への負荷を低減し、健全な水循環系の構築を図る。
特に、湖沼等の閉鎖性水域の水質の保全に資するよう、生活排水、工場等の排水による汚濁負荷及び農地等からの面源負荷の削減対策を推進するとともに、流域における緑地の保全その他自然環境の保全のための土地利用制度を適切に運用する。
また、良好な土壌環境の確保に向け、指導や普及啓発など土壌汚染の防止に努める。
ウ 循環型社会の形成に向け、廃棄物の発生抑制(リデュース)、再使用(リユース)、再生利用(リサイクル)の3Rを一層進めるとともに、発生した廃棄物の適正な処理を行う広域的・総合的なシステムを構築するため、環境の保全に十分配慮しつつ、必要な施設を整備する用地の確保を図る。
また、廃棄物の不法投棄等の不適正処理の防止と適切かつ迅速な原状回復に努める。
エ 美しい県土を形成するため、原生的な自然や野生生物の生息・生育、自然風景、希少性等の観点から見てすぐれている自然については、法律や条例に基づいた規制等により適正な保全を図る。
二次的な自然については、適切な農林業活動や民間・NPO等による保全活動の促進、必要な施設の整備等を通じて自然環境の維持・形成を図る。
自然が劣化・減少した地域については、地域の特性に合った自然の再生・創出と保全に努める。
また、これらの取り組みに当たっては、生物の多様性を確保する観点から、外来生物の侵入防止や生態系のネットワークの形成に配慮する。
さらに、野生鳥獣による被害の防止や健全な地域個体群の維持を図るため、科学的・計画的な保護管理を図る。
オ 美しい山河の保全・再生を図るため、安全・環境・景観に配慮しつつ、総合的な土砂管理の取り組み等を推進する。
また、土砂採取に当たっては、環境・景観保全や経済社会活動などに配慮しつつ適切な管理を図る。
カ 歴史的・文化的風土の保存、文化財の保護等を図るため、開発行為等の規制を行う。
また、地域特性を踏まえた計画的な取り組みを通じて、都市においては、緑地空間及び水辺空間の積極的な保全・創出、美しく良好な街並みや歴史を伝える街道等の景観形成等により、ゆとりある快適な環境をつくる。農山村をはじめとする自然的地域においては、特色ある田園景観等の維持・形成を図りつつ、森林、農用地等の緑地空間を自然とのふれあいの場として確保する。
キ 良好な環境を確保するため、事業の実施段階において環境影響評価を実施すること、事業の特性を踏まえつつ公共事業等の位置・規模等の検討段階において環境的側面の検討を行うことなどにより、土地利用の適正化を図る。
(6) 土地利用の転換の適正化
ア 土地利用の転換を図る場合には、その必要性や影響の大きさ、土地を一度他の用途に転換すれば再び元の形に戻すことが容易でないことなどに十分留意した上で、人口及び産業の動向、周辺の土地利用の状況、社会資本の整備状況その他の自然的・社会的条件を勘案して適正に行うこととする。
また、転換途上であっても、これらの条件の変化を勘案して必要があるときは、速やかに計画の見直し等の適切な措置を講ずる。
さらに、農林業などに係る自然的土地利用が減少している一方、低未利用地が増加していることにかんがみ、低未利用地の有効活用を通じて、自然的土地利用の転換を抑制することを基本とする。
イ 大規模な土地利用の転換については、その影響が広範であることから、周辺地域をも含めて事前に十分な調査検討を行い、県土の保全と安全性の確保、環境の保全等に配慮しつつ、適正な土地利用の確保を図る。
また、地域住民の意向等地域の実情を踏まえた適切な対応を図るとともに、市町村の基本構想などの地域づくりの総合的な計画、公共用施設の整備計画等との整合を図る。
ウ 農用地の利用転換を行う場合には、農業経営の安定、食料生産の確保及び地域農業に及ぼす影響に留意し、非農業的土地利用との計画的な調整を図りつつ、無秩序な転用を抑制し、優良農用地が確保されるよう十分考慮する。
エ 森林の利用転換を行う場合には、森林の保続培養と林業経営の安定に留意しつつ、災害の発生、環境の悪化等公益的機能の低下を防止することを十分考慮して、周辺の土地利用との調整を図る。
また、原野の利用転換を行う場合には、自然環境の保全に配慮しつつ、周辺の土地利用との調整を図る。
オ 農山村等における混住化が進行する地域において、土地利用の転換を行う場合には、良好な生産基盤の整備や住みよい環境づくりを進めるため、無秩序な利用転換を抑制し、住宅地は住宅地としてのまとまりを、農用地は農用地としてのまとまりを確保すること等により、農用地、宅地等相互の土地利用の調和を図る。
(7) 土地の有効利用の促進
ア 農用地については、農用地の高度利用を図るため、農業後継者や大規模経営を目指す法人経営体等の育成・確保、農地保有の合理化、農地の流動化を進めるとともに、地域の実情に即して土地改良事業等の農業生産基盤事業を計画的に推進し、果樹産地の再編など優良な農用地として保全・整備する。
また、利用度の低い農用地については、農業生産法人以外の法人のリース方式による農業参入や、地域に適した作目の導入による不作付地の解消等、有効利用を図るために必要な措置を講ずる。
さらに、都市住民の滞在等集客による農業振興や農村地域の活性化に資するため、地域づくりを進め、宿泊施設や市民農園などの農業体験施設の整備を図る。
イ 森林については、公益的機能をより高度に発揮させ、かつ、充実しつつある森林資源の質的向上を図るため、森林の整備、とりわけ、間伐等保育の適切な実施とそのための林内路網の整備・拡充を積極的に進める。
特に、県有林については、管理計画に基づく林地保全、風致保存、林業経営、保健休養等の機能区分に沿って、それぞれの機能向上のための森林施業を行う。
また、美しい景観や、自然とのふれあい、癒しの場として、価値の高い森林については、森林環境教育や野外レクリエーション利用の場としての総合的な利用を図る。加えて、森林の整備を推進する観点から、地域材の利用や木質バイオマスの利活用を促進する。
ウ 水面・河川・水路については、ダムの適正管理や河川整備等により、治水及び利水の機能を高めるとともに、生物の多様な生息・生育環境に配慮するため、多自然川づくりを促進する。
また、地域の景観と一体となった水辺空間や水と人とのふれあいの場の形成を図る。
特に、水路については、農業基盤の整備を計画的に推進し、新たな農業用水の確保や地域用水としての利活用を図る。
エ 一般道路については、高規格道路等の骨格道路網、国県道等の幹線道路や市町村道に至るまで、それぞれの役割に応じて、適切な機能を発揮し得るよう、計画的な道路整備を推進する。
また、広幅員歩道、植樹帯の整備、総合的な渋滞対策等を推進するなど、快適な道路空間の創出を図るとともに、道路の無電柱化を推進して、良好な道路景観の形成を図るなど、道路空間の有効利用に資する。
農道については、農業生産性の向上、農産物流通の合理化、農村の生活環境の向上等に資するよう、幹線道路等の配置を考慮し、その整備を推進する。
林道については、森林の多面的機能の維持、増進を図るとともに、生活環境の改善に資するよう、その整備を推進する。
オ 住宅地については、地域の活性化と定住化に対応し、またユニバーサルデザインを取り入れた快適でゆとりある住まい及び居住環境の整備を推進するとともに、需給に応じた適正規模の公共及び民間による計画的な宅地の供給を促進する。
加えて、空き家等の既存ストックの有効活用や中心市街地における街なか居住の促進、住宅の長寿命化、既存住宅市場の整備を通じて、持続的な土地利用を図る。
特に、都市地域においては、低未利用地の活用等による市街地の再開発、既存建物の更新による土地の高度利用を促進する。
また、防災緑地の確保及び避難路の整備等安全性の向上、子どもや高齢者、障害をもつ人などに配慮したゆとりある快適な環境の確保に努め、その有効利用を図る。
カ 工業用地については、バランスの取れた産業構造を実現するため、製造業をはじめ、IT関連産業や物流拠点、本社機能や研究機関の誘致を推進することとし、情報通信・研究開発インフラ、産業インフラ等の整備を促進するとともに、適地への工場の立地を進める。
その整備に当たっては、地域社会との調和及び公害防止の充実を図る。
特に、地場中小企業の生産基盤の強化や新たな事業活動を促進するための工業用地の整備を推進する。
また、高度な技術を有する企業の誘致を選択的に進めながら、新たな時代にふさわしい第二次産業を育成するため、環境への負荷が少なく、地域に開かれた魅力ある工業用地を確保する。
なお、既存工業団地のうち未分譲のものについては、入居の促進を図る。
キ その他の宅地(事務所・店舗用地等)については、創業や新事業分野開拓など、中小企業の新たな事業活動推進のために必要となる業務用地の整備を推進する。
国から認定された中心市街地活性化基本計画を推進する市町村と連携し、中心市街地活性化を促進する。
中部横断自動車道の開通などを踏まえ、その効果を活かすための物流や交流の拠点の形成を促進する。
大規模集客施設については、都市計画やまちづくりとの整合に配慮するとともに、設置者からの立地計画の早期届出等の仕組みや大型店の地域貢献促進の仕組みによる施設の立地適正化を推進する。
ク 公用・公共用施設用地については、街なかへの立地を進めるため、中心市街地の再開発区域などへの文教施設や国出先機関等の移転・整備を促進する。
ケ 低未利用地のうち、耕作放棄地については、県土の有効利用、周辺農地への影響及び環境保全の観点から、地域の実情に応じて、所有者の営農意欲を高める地域に適した作目の導入や、多様な管理主体を育成するなど、農用地等としての活用を積極的に促進する。
また、都市地域における低未利用地については、都市計画制度の適切な運用、土地区画整理事業等の導入、国土利用計画法による遊休土地制度の適切な運用等により、計画的かつ適正な活用を促進する。
さらに、農用地や森林から宅地へと転換された後に低未利用地となった土地については、新たな土地需要がある場合には県土の有効利用の観点から優先的に再利用を図る一方、状況に応じて自然の再生を図るなど、地域の実情を踏まえて、適正な活用を促進する。
コ 限られた県土をより有効に活用するため、生活環境、防災面等に配慮しつつ、道路等と建物等との一体的・立体的整備など、複合的な土地利用を図る。
サ 土地の所有者が良好な土地管理と有効な土地利用を図るよう、定期借地権制度の活用等を促進するなど、啓発・誘導する。
(8) 県土の県民的経営の推進
住民や企業、NPO等の多様な主体が、県土の管理に参加することにより、県土の管理水準の向上など直接的な効果だけでなく、地域への愛着心の醸成や地域間交流の促進、私有地管理に対する関心の喚起など、適切な県土の利用に資する効果が期待できる。
このため、森づくり活動や農地の保全管理活動への参加、地元農産物や県産材製品の購入、緑化活動に対する寄付など、様々な方法により県土の適切な管理に参画を促進していく、「県土の県民的経営」に向けた取り組みを推進する。
4 県土に関する調査及び計画の進行管理
(1) 県土に関する調査の推進と成果の普及・啓発
長期にわたって県土の自然環境を保全し、地域の特性を活かした土地利用に資するため、地籍調査や土地基本調査など県土に関する基礎的な調査を推進し、調査結果の幅広い活用を図る。
また、県民に県土への理解を促し、計画の総合性及び実効性を高めるため、調査結果の普及及び啓発を図る。
(2) 指標の活用と進行管理
適切な県土の利用に資するため、各種指標を活用する。
また、今後の県土の利用をめぐる経済社会の大きな変化を踏まえ、計画策定より概ね五年後に計画の総合的な点検を行う。
(参考付表)
地域区分別の利用区分ごとの規模の目標
(単位:ha、%)
利用区分等 | 国中地域 | 富士・東部地域 | ||||||
平成17年 | 平成29年 | 構成比 | 平成17年 | 平成29年 | 構成比 | |||
平成17年 | 平成29年 | 平成17年 | 平成29年 | |||||
農用地 | 23,108 | 22,170 | 7.3 | 7.0 | 2,803 | 2,630 | 2.1 | 2.0 |
農地 | 23,097 | 22,160 | 7.3 | 7.0 | 2,803 | 2,630 | 2.1 | 2.0 |
採草放牧地 | 11 | 10 | 0.0 | 0.0 | 0 | 0 | 0.0 | 0.0 |
森林 | 238,637 | 238,170 | 75.7 | 75.5 | 107,244 | 107,030 | 81.8 | 81.6 |
原野 | 2 | 0 | 0.0 | 0.0 | 1,969 | 1,970 | 1.5 | 1.5 |
水面・河川・水路 | 6,236 | 6,230 | 2.0 | 2.0 | 3,020 | 2,970 | 2.3 | 2.3 |
道路 | 8,277 | 8,930 | 2.6 | 2.8 | 2,612 | 2,790 | 2.0 | 2.1 |
宅地 | 13,695 | 14,390 | 4.3 | 4.6 | 3,910 | 4,100 | 3.0 | 3.1 |
住宅地 | 8,711 | 9,180 | 2.8 | 2.9 | 2,098 | 2,210 | 1.6 | 1.7 |
工業用地 | 976 | 1,010 | 0.3 | 0.3 | 201 | 240 | 0.2 | 0.2 |
その他の宅地 | 4,008 | 4,200 | 1.3 | 1.3 | 1,611 | 1,650 | 1.2 | 1.3 |
その他 | 25,461 | 25,530 | 8.1 | 8.1 | 9,563 | 9,630 | 7.3 | 7.3 |
合計 | 315,416 | 100.0 | 131,121 | 100.0 | ||||
市街地 | 5,097 | 5,100 | 1.6 | 1.6 | 1,293 | 1,200 | 1.0 | 0.9 |