○山梨県自然環境保全基本方針

昭和五十年十月六日

公告

山梨県自然環境保全基本方針

目次

第一章 総説

第一節 作成の趣旨

第二節 目標

第三節 性格

第四節 自然環境の現況

第二章 基本構想

第三章 基本的施策

第一節 施策の体系

第二節 自然環境の保護及び保存

第三節 自然環境保全地区等の指定の推進

第四節 各種事業計画の策定及び実施に当たり配慮すべき措置

第五節 要保全地の公有化

第六節 県有林の保全

第七節 保全施設の整備

第八節 自然環境の活用及び造成

第九節 自然保護思想の高揚及び活動の助長

第十節 調査及び研究

第一章 総説

第一節 作成の趣旨

豊かな自然環境は、人間が健康で文化的な生活を営むうえで欠くことのできないものである。

自然は、日光、大気、水、土、動物、植物、などから構成されているが、人間は、この自然を構成する諸要素間の精妙な調和を前提として、はじめて生存の持続と生活の向上が可能となる。

これら自然の構成要素は、すべて有限なものであるので、人間が末永く快適な生活を営むためには、自然の仕組みに対する正しい理解に基づく自然の適正な保存と賢明な利用が必要である。

本県は、首都圏にありながら従来から恵まれた自然環境を誇つてきたが、以上のような見地から、自然環境の悪化を防ぎ、これを良好に維持するため、数多くの施策を講じてきている。

自然環境なかんずく動物、植物、地形及び地質これらの総体である自然景観、自然状態の保全については、学術上、教育上、景観上及び保健休養上の見地から、更に、快適な生活環境の確保という見地からも、さまざまな施策が講じられてきた。

しかし、これらの施策が極めて多岐にわたつているので、この実効性をより一層高めるために、自然環境の保全に関する総合的、体系的な考え方を自然環境保全基本方針として策定し、実施するものである。

自然環境に関する施策としては、このほか、大気、水、土壌等の汚染に対して、公害対策などとして、また、自然災害に対しては、治山、治水等の県土保全対策として、自然の資源としての利用と保全については、土地利用対策、水利用対策として、それぞれ計画を策定し、実施しているところである。

従つて、山梨県における自然環境の総合的な保全と利用は、これらの計画と、この自然環境保全基本方針とがそれぞれあいまつて実施されるものである。

第二節 目標

この基本方針の目標は、本県の自然環境を適正に保全することにあるが、ここでいう自然環境の保全とは、地域の自然状態に応じて自然環境の保存、保護、活用及び造成を行い、健康で文化的な生活を営むために不可欠な豊かな自然環境を確保し、維持することである。

第三節 性格

この基本方針は、山梨県自然環境保全条例第六条第一項の規定により策定されるものであつて、自然環境保全に関する諸施策の基本となるものである。

また、この基本方針は、市町村における自然環境保全に関する施策の指針となり、事業者及び県民においては、県及び市町村の自然環境保全に関する施策への協力の指針となるものである。

第四節 自然環境の現況

本県は、南に富士山(三、七七六メートル)、東に大室山(一、五八八メートル)、北に雲取山(二、〇一八メートル)、甲武信ケ岳(二、四八三メートル)、金峰山(二、五九五メートル)及び赤岳(二、八九九メートル)、西に仙丈ケ岳(三、〇三三メートル)、北岳(三、一九二メートル)及び間の岳(三、一八九メートル)などの高峰に囲まれ、これ等の山々を源とする数々の河川がそれぞれ富士川、桂川、丹波川及び道志川に集まり、富士川は、県の南部へ、他の三河川は、県の東部へ流れている。

本県は、県土の七十七パーセントが森林で、全国平均の六十八パーセントに比べると森林面積の占める比率が高く、また、人口一人当たりの森林面積も全国平均〇・二四ヘクタールに対して〇・四五ヘクタール、人口一人当たりの自然公園面積も全国平均〇・〇五ヘクタールに対して〇・一七ヘクタールと多く、大都市を擁する地域と比べれば、天然林や近郊緑地の占める比率が高く、豊かな緑と清流に恵まれ、自然環境は良好といえる。

1 高山帯(二、五〇〇メートル以上)

この地帯は、富士山、北岳、仙丈ケ岳、農鳥岳、八ケ岳、金峰山、笊ケ岳、鳳凰三山などの山頂部分で、ハイマツ群落と高山草本群落などが見られる。特に北岳は、富士山に次ぐ我が国二番目の高峰で、北岳特有の植物の多くは、氷河時代に広く分布していたものの残存、又は変異したもので、我が国を代表する遺存植物の宝庫である。

地形及び地質の面では、南アルプスの諸峰は、激しくしゆう曲し、多数の断層で切られた古い地層で構成され、気象の激変ともあいまつて険しい山様である。氷河時代のカール地形が見られる仙丈ケ岳、コニーデ型の火山地形の典型である富士山、やや古い火山地形をなす八ケ岳、花こう岩がつくる特有な地形をもつて金峰山など多様である。

険しい山体をなしている高山であるため、鳥獣の種類は少ないが白根三山、仙丈ケ岳、金峰山などにはライチヨウが生息しており、厳重に保護されている。

この地帯は、学術上貴重であるばかりでなく、景観も優れているので、すべて富士箱根伊豆国立公園、秩父多摩国立公園、南アルプス国立公園及び八ケ岳中信高原国定公園のいずれかに指定されている。

2 亜高山帯(一、八〇〇―二、五〇〇メートル)

この地帯は、富士山の三合目から五合目までの地帯、南アルプスの野呂川源流部一帯から静岡県境沿いに笊ケ岳を経て七面山の山頂に至る部分、鳳凰三山、八ケ岳、小川山から金峰山及び甲武信ケ岳を経て雲取山に至る奥秩父の稜線、大菩薩連嶺及び櫛形山の山頂部などである。

植物は、コメツガ、シラビソ、オオシラビソ、ダケカンバなどに代表される植物相であり、特に南アルプスにおいては、シラビソ、オオシラビソの占める割合が高く、大切に保護すべき森林地帯である。

地形の面から見ると主嶺から分岐する支脈が多い地帯であり、V字形の谷がよく発達し、渓流に沿つては地層及び岩石が多く露出している。

自然の状態が良好に保たれているため、昆虫や鳥獣の種類が多く高山チヨウ、カモシカ、ヤマネ、オコシヨなどが生息しており、この地帯の大部分は鳥獣保護区に指定されている。

また、この地帯の森林は、国土の保全上重要な役割を果たしているばかりでなく、自然環境保全上極めて重要な地域であるので、一部地域を除いて富士箱根伊豆国立公園、秩父多摩国立公園、南アルプス国立公園、八ケ岳中信高原国定公園及び県立南アルプス巨摩自然公園のいずれかに指定されている。

3 夏緑広葉樹林帯(五〇〇―一、八〇〇メートル)

この地帯は、青木ケ原樹海を代表するツガ―ヒノキ林、富士川水系、多摩川水系及び相模川水系のクヌギ―コナラ―クリ林、アカマツ―落葉広葉樹林及びスギ、ヒノキ、アカマツ、カラマツなどの針葉樹植林地帯並びに木賊平、八ケ岳羽衣の池などの湿原地帯である。この地帯の森林は、自然環境保全上重要であるばかりでなく、水源のかん養、土砂流出防備など国土の保全上重要である。この地帯は、常に林業生産活動が行われているので、森林経営に当たつては、科学的な調査に基づき、林業と自然環境保全との調整を図らねばならない。この地帯には、昆虫、鳥獣、両生類などの種類が多く、ギフチヨウ、ヤマセミ、ブツポウソウ、サル、シカ、サンシヨウウオ、モリアオガエルなどの貴重な動物が各地に生息している。

地形及び地質の面から見ると、各地に優れた渓谷、溶岩洞穴、平たん地、新旧それぞれの岩石及び地層などが見られ、また、数々の史跡、名勝、天然記念物などもあるので、自然環境の保全には十分注意する必要がある。

4 常緑広葉樹林帯(五〇〇メートル以下)

この地帯は、沖積平野、扇状地、こう積世の段丘、丘陵地などに広がつた村落や市街地で、植物は、県南部及び東部のシラカシ、ウラジロガシ、アラカシなどの自然植生とスギ、ヒノキなどの植林地帯で、農林業が積極的に行われており、県民生活は、大部分この地帯で営まれ、各地に心のふるさととして保存されている鎮守の森や、屋敷林もあり、県民が常に緑と触れ合いを感じる場所であるので環境保全を配慮しながら、開発と生産緑地の保存との調整を図る必要のある地帯である。

この地帯は、昆虫、鳥獣、魚類などが多数生息しているが、近年多量の農薬使用や、河川の汚濁などにより、個体数が減少しているので、農薬の散布を最少限にとどめるとともに、天敵や耐病虫性品種の利用、廃水の処理などについて十分配慮する必要がある。

第二章 基本構想

自然環境の保全施策は、次の基本方針に基づき、地域の自然の状態に即して、きめこまかに行うものとする。

1 人為の受けやすい弱い自然、景観が優れている自然、学術上貴重な自然、平地に残存する稀少な自然などは、極力保護及び保存すること。

2 1以外の豊かな自然は、自然の自浄力と復元力の及ぶ範囲内で適正な活用を推進するものとし、自然の資源を一時に消費し尽くすことなく、将来にわたつて末永く資産として保全すること。

3 既に自然環境が悪化しつつある地域については、速やかに復元措置、造成措置などを講ずること。

以上の方針に基づき当面講ずるものとする基本的施策に関する項目は次のとおりである。

一 自然環境の保護、保存を図るため、自然公園法、森林法、鳥獣保護及び狩猟に関する法律、文化財保護法、都市計画法などの自然保護に関連する法令に基づく現行制度を活用する。

二 自然環境保全上重要な地域などについては、自然環境保全地区及び自然記念物の指定を推進し、保護、保存の徹底を図る。

三 県土の利用計画、開発計画などの策定及び諸事業の実施に当たつては、自然環境保全のために必要な措置を講ずる。

四 自然環境保全のため、特に保護及び保存を要する土地などについては、公有化を進める。

五 県有林の経営に当たつては、木材生産機能と公益的機能との調整に努める。

六 自然環境の保全に資するため、各種保全施設の整備を促進する。

七 豊かな自然環境は、保健休養、教育、レクリエーシヨンなどの場として、自然の復元力の範囲内で積極的に活用する。

また、市街地及びその近郊については、緑地の造成、沿道の修景、などの環境緑化その他の良好な自然環境の造成を積極的に行う。

八 自然環境保全のための知識の普及及び思想の高揚を図り、県民の行う自主的活動を助長する。

九 自然環境保全のための科学的な調査及び研究を推進する。

第三章 基本的施策

第一節 施策の体系

自然環境を構成するもののうち、植物なかんずく樹木は、県土の保全、水源のかん養、大気の浄化、気象の緩和、騒音の防止、保健休養、県土の修飾美化などの諸機能を備えている。

しかも、植物は、移動能力がなく、それぞれの生育地の環境条件を最も的確に表現するため、植生を重視することにより、環境問題を適切に取り扱うことができる。

従つて、現存の植生の状態に応じた自然環境保全施策を行うことにより、本県の自然環境の適正な保全を図るものとする。

植生の状態に応じた主要な自然環境保全施策の類型は、次表のとおりである。

植生と保全施策

植生状態

代表的群落

保全施策

植生に対する人為的影響はほとんど加わつておらず、現存植生が潜在自然植生に極めて近いが、ほぼ一致している植生

コメツガ―トウヒ―シラビソ―オオシラビソ林

高山低木群落

高山・亜高山性草木

ツガ―ヒノキ林

ブナ―ミズナラ林

カシ類混交林

アラカシ林

一度破壊されると、元の植生に復するのに長い年月を要するので、原則として禁伐とし、保護及び保存を図る。

ある程度の人為的影響下に存続する二次林及び植林

針葉樹植林

ミズナラ―イタヤ―シデ林

禾本草原

林産物生産の場として活用される地域であるが、森林の持つ公益的機能も十分発揮されるように留意する。また、野外レクリエーシヨン等の開発適地については、自然の復元力の範囲内で、植生保全に十分配慮しながら活用する。

常に人為的影響下にある二次林及び植林

アカマツ―落葉広葉樹林

クヌギ―コナラ―クリ林

里山とよばれる地域で、開発適地が多いが、過度な開発は避け、特に市街地近郊の林地については、住民の保健休養の場として植生の保存を図りつつ活用する。

農耕地、採草放牧地

 

農地は、近郊緑地として、市街地の環境保全機能を発揮させるため、無秩序な宅地化を抑制し、転用する場合には、計画的に緑化を進める。

宅地、道路、施設等植生の乏しい土地

 

緑の最も必要なところで、積極的に緑地造成、沿道修景及び裸地の植生回復を図る。

第二節 自然環境の保護及び保存

自然環境の保護及び保存を図るため、これに関連する現行諸制度を活用し、次の施策を講ずるものとする。

1 自然公園

本県の優れた自然は、県民のみならず国民の資産として、その多くが自然公園として位置づけられているが、近年、利用者の急増、開発の進行などに伴い、自然公園内の貴重な自然及び傑出した自然の保護及び保存の強化が必要になつてきている。このため、次の保全施策を実施する。

一 公園の保護計画を改定し、特別地域内における特別保護地区及び地種区分の適正化を図る。

二 公園管理に当たつては、自然状態及び自然景観の破壊を防止するため、規則基準を明確にし、保護及び保存の徹底を図る。

三 自然環境の保全と適正な利用に資するため、公園の環境美化清掃を強力に推進する。

2 保安林

一 保安林については、保安機能を十分に発揮させるとともに、自然環境の保全が達成されるよう施業管理を強化する。

二 市街地近郊における森林については、当該市街地の環境保全と住民の保健休養のために、保健保安林などの指定を積極的に推進し、保全整備を図る。

3 鳥獣保護

近年減少しつつある野生鳥獣を保護するために、鳥獣の生息実態調査を行い、それに基づいて鳥獣保護区及び特別保護地区の指定を再検討する。

4 名勝、天然記念物等

一 優れた自然の景勝地を保護するために設けられている名勝については、指定の趣旨が十分に生かされるよう管理の強化を図る。

二 動物、植物、地質鉱物などで学術上価値の高いものについては、天然記念物の指定を促進するとともに、既に指定されている天然記念物については、その価値が損なわれないよう維持管理を図る。

三 史跡などの所在地で、周囲の自然環境が一体となつて歴史的、郷土的特色を有する地域については、その特色を保持するため、当該史跡などの保護とともに、周囲の自然環境の保全を図る。

5 都市計画

都市地域における過密化に伴う環境悪化を防止し、快適な生活環境を確保するため、緑とオープンスペースの積極的整備拡大を図る。このため次の保全施策を実施する。

一 都市に残存する樹林地等の保護管理を図る。

二 都市計画施設の区域、市街地開発事業の区域及び風致地区のそれぞれの区域内における建築などを行うに当たつては、空地空間の確保、樹木の保存、表土の植生復元などの自然環境保全上必要な措置が講ぜられるよう配慮する。

第三節 自然環境保全地区等の指定の推進

県土全域にわたつて総合的に自然環境の保全施策を講ずるため、前記の諸制度を活用するとともに、山梨県自然環境保全条例に基づき自然環境保全地区及び自然記念物の指定を積極的に推進するものとする。

一 自然環境保全地区等の指定手続

自然環境保全地区等の指定は、市町村及び山梨県自然環境保全審議会専門委員の意見、既存の各種の資料などを参考にして現地調査を行い、自然環境保全地区等の選定基準に適合したものを自然環境保全地区等の候補地として選定し、山梨県自然環境保全条例第十条の規定により行うものとする。

二 自然環境保全地区等の選定基準

1 自然保存地区

(一) 現存植生の主たるものが森林である地域

(1) 高山性植生若しくは亜高山性植生の地域、又は樹齢がおおむね七十五年を超える天然林の面積が七十パーセント以上を占める地域であつて、その地域の植生が、学術上重要な意義を有し、かつ、いつたん破壊されると回復が不可能若しくは困難なものを選定する。この場合の選定面積は、原則として五十ヘクタール以上とする。

(2) (1)のほかシラカンバ、シオジ、カツラその他群落を形成することが比較的少ない樹種からなる純林又はこれに準ずる林相を有する地域を選定するものとする。この場合の選定面積は、原則として三ヘクタール以上とする。

(二) その他の地域

動植物を含む自然環境が優れた状態を維持している草生地、湿原、河川、湖沼などの地域、植生状態が優れていて特異な地形、地質及び自然現象が生じている地域並びに植物の自生地及び野生動物の生息地の地域で、稀少価値の高いもの又は学術上貴重な意義を有するものを選定するものとする。この場合の選定面積は、原則として一ヘクタール以上とする。

2 景観保存地区

自然景観が優れている地域を選定するものとし、選定面積は、原則として三十ヘクタール以上を基準とする。景観の優劣の判定は、規模、美観、雄大性、変化度、原始性等について、次に掲げる点数配分により評価を行い、原則として七十点以上の地域を自然景観の優れている地域と判定する。

植生 三五点

特殊景観 四五点

眺望 二〇点

合計 一〇〇点

3 歴史景観保全地区

神社、寺院、史跡、遺跡、古戦場、城跡、古道等の歴史的又は郷土的に由緒ある事物を含む地域のうち、その周辺の自然を一体として保全する必要がある地域を選定するものとする。この場合の選定面積は、原則として一ヘクタール以上とする。

4 自然活用地区

原則として標高千五百メートル以下、平均傾斜度十五度以下の地域であつて植生が良好で適度の開発に耐えうるものであり、地質的条件が安定し、気象条件、水資源、交通等に恵まれ、自然環境の保存と活用の調和を図ることが出来る地域を選定するものとする。この場合の選定面積は、原則として五十ヘクタール以上とする。

5 自然造成地区

市街地又はその周辺で緑地の造成が必要な地域、沿道又は河川敷の修景が必要な地域及び市街地の周辺にある樹林地で保全を要する地域を選定するものとする。この場合の選定面積は、原則として一ヘクタール以上とする。

6 自然記念物

動物、植物、地質鉱物等で地域住民に親しまれているもの、由緒あるもの又は学術的に価値があるものを選定するものとする。

なお、動物の生息地及び植物の生育地、地質鉱物の所在地を選定する場合には、原則としてその面積は〇・一ヘクタール以上とする。

三 指定地区等の管理

指定地区等については、その所在地の市町村及び土地所有者に対し、管理委託費の交付、管理施設整備費の助成等の優遇措置を講ずるものとする。

第四節 各種事業計画の策定及び実施に当たり配慮すべき措置

公共事業をはじめ各種の土地利用、開発又は施設整備(建築物、道路等のすべての工作物の設置又は整備をいう。)に関する計画の策定及び実施に当たつては、次に掲げる自然環境保全上の配慮を加え、必要な措置を講ずるものとする。

1 自然環境の保護及び保存を要する地域については、利用、開発又は施設整備は極力避けること。

2 1以外の地域における利用、開発又は施設整備の態様及び規模を定める場合は、当該自然環境の現状に応じ、実施に伴う環境悪化を極力とどめるよう配慮すること。

3 施設整備計画の実施に当たつては、更に、次の点に配慮すること。

(1) 施設周辺の緑地は、最大限確保すること。

(2) 工事の実施に当たつては、植生の破壊を最少限にとどめ、局部的に植生破壊が生じた場合は、速かに植生回復を図ること。

(3) 工事実施の際には、土石の落下防止に努めるとともに、残土については、適切な処理を行うこと。

(4) 施設の利用に伴い生ずる水質の汚濁、大気の汚染、汚物の廃棄、騒音などの環境悪化は、極力防止すること。

第五節 要保全地の公有化

自然環境の保全をより強力に推進するため、特に保護及び保存を図る必要があると認めた土地等の公有化を推進するものとする。

第六節 県有林の保全

県有林は、県土の約三十五パーセントを占め、自然環境保全上極めて重要な位置を占めている。

森林は、林産物の生産の場であると同時に、国土の保全、水源のかん養、大気の浄化、保健休養、レクリエーシヨン、野生鳥獣の保護等の公益的機能を持つており、近年、公益的機能に対する要請が強くなつてきている。

これらの機能を県有林において十分発揮させるため、それぞれの目的に添つた土地利用区分を設定し、これに応じた次の保護管理施業を推進するものとする。

1 高山帯、亜高山帯等の原生林的な貴重な森林は、一度伐採されるとその回復が極めて長期間を要し、かつ、主要な水源林及び県土保全林であるとともに、山岳地における優れた景観要素を構成しているため、これを将来にわたつて保存する。

2 県有林地における特異な地形及び地質、学術上貴重な動植物等については、保護施策を積極的に実施する。

3 風致上優れた林地については、保存を図るとともに、風致の維持向上を図るための施業を進める。

4 レクリエーシヨン、保健休養等のための適地のうち、1から3までの地域以外については、自然環境の保全に留意しながら活用を図る。

第七節 保全施設の整備

自然環境の適正な管理のため、重要な保全地域には、必要に応じて次の施設を整備するものとする。

1 管理歩道及び管理舎

2 標識、保護柵、砂防施設及び防火施設

3 野生動植物生息、生育又は繁殖施設

4 その他自然環境の保全に必要な施設

第八節 自然環境の活用及び造成

豊かな自然環境は、保健休養、教育、レクリエーシヨン等の場として積極的に活用するものとする。このため、自然公園の適正な利用に資する諸施設の整備を図るとともに、県民の森、健康の森等の事業を推進する。また、県民の快適な生活環境を確保するため、市街地、沿道、沿川等の地域については、修景緑化による自然造成を積極的に推進するとともに、これに必要な指導援助を行う。

1 市街地等の緑化

市街地及びその近郊における緑地の増大を図るため、次の事業を実施するとともに、緑地に対する指導を強化する。

(1) 公園、緑地、街路樹等の整備拡大

(2) 学校等公共施設の緑化

(3) 事務所、事業所、工場等の緑化

(4) 一般住宅の緑化

2 沿道等の緑化

国、市町村等と協力して、国道、県道、市町村道、沿川等の緑化を図る。また、道路及び河川に隣接する森林は極力保存し、一体的機能が果たせるよう、その健全な維持管理に努める。

3 緑化樹の確保

緑化の推進に必要な種苗を確保するため、供給体制の整備拡充を図る。

第九節 自然保護思想の高揚と活動の助長

1 自然保護思想の高揚及び知識の普及

(1) 広報

テレビ、ラジオ、パンフレツト等の各種の広報媒体を通して、自然保護に関する広報活動を積極的に行う。

(2) 学校教育及び社会教育

自然保護についての理解を深めるため、自然保護読本等を作成し、学校教育及び社会教育の場において活用する。

2 自主的活動の助長

県民の行う自主的な自然保護運動を促進し、自然保護団体の育成を図るとともに、これに対し、必要な情報及び資料を提供し、その指導援助を行う。

3 監視員制度の活用

自然保護に関する知識の普及及び思想の高揚に資するとともに、自然環境に対する監視体制を強化するため、県下に自然監視員を配置し、自然公園指導員、鳥獣保護員、保安林巡視員及び森林監視員との協力体制を確立する。

第十節 調査及び研究

自然環境の適正な保全に資するため、必要な科学的調査及び研究を総合的に推進するため、自然環境の保全に関する調査研究体制の整備を図るものとし、当面、次の調査及び研究を進めるものとする。

1 野生動植物等の生息、生育及び生態の調査及び研究

2 地形、地質、土じよう、自然現象等に関する調査及び研究

3 自然の保護、保存、復元等に関する調査及び研究

4 環境指標生物の調査及び研究

5 自然環境基準の設定のための調査及び研究

6 その他自然環境の保全上必要な調査及び研究

山梨県自然環境保全基本方針

昭和50年10月6日 公告

(昭和50年10月6日施行)

体系情報
第6編の2 境/第3章 自然環境
沿革情報
昭和50年10月6日 公告