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更新日:2013年12月26日

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石原 良純(いしはら よしずみ)

石原良純俳優・気象予報士

1962年神奈川県逗子生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。

1984年松竹富士映画「凶弾」でデビュー。その後、舞台、映画、テレビドラマなどに多数出演。2007年度NHK連続テレビ小説「どんど晴れ」2008年度NHK木曜時代劇「鞍馬天狗」2009年度NHK大河ドラマ「天地人」他。

湘南の空と海を見て育ったことから気象に興味をもち、気象予報士試験へ挑戦。1997年、見事合格。〝空の楽しさを伝えられれば〟とお天気キャスターを。お茶の間の人気を得る。

2001年に出版された『石原家の人びと』(新潮社)はベストセラーとなり、作家としても注目を集める。

また、官公庁・地方自治体の環境講演会、シンポジウム多数。

 

  

中央本線で訪れる甲州路

 

列車は、笹子トンネルを抜け甲府盆地に入る。『勝沼ぶどう郷』と駅の名が示すとおり、車窓にはぶどう畑が広がる。

三十年近くも前の話。七曲署のマイコン刑事の僕は、勝沼に捜査で訪れた。その頃の甲州ワインは、一升瓶に詰められていた。白ワインのドライな飲み口に好感を持ったが、翌朝、脳の中でぶどうのカスがザラつく気配。頭が割れそうなほど痛み、ロクな捜査にならなかった覚えがある。

しかし今の甲州ワインは、世界に通用するブランドだ。数々の国際的なワインコンクールで賞を受け、世界中のワイン通に愛飲されている。もちろん僕も、甲州ワイン愛飲家の一人である。

勝沼の駅を過ぎると列車は、山肌一面に広がるぶどう畑を品定めするように進む。山並みに沿ってぐるりと百八十度の弧を描き、少し街並が賑やかになったところで、石和温泉駅に到着する。

石和温泉といえば、これまた三十年前には石原プロの「石和大忘年会」が行われていた場所だ。

大学在学中に俳優デビューした僕は、裕次郎叔父に仁義を尽くすべく、大学生の身分でその年の忘年会に初めて出席した。大勢の俳優さんにタレントさん。それを見にくる見物客に報道陣。ホテルの表も内も人でごった返し、お祭り気分に包まれていた。

なかでも一番驚いたのは、舘ひろしさん。浴衣姿ではなく、真っ赤な長襦袢を身にまとい額にはタオルで鉢巻きされていた。「良純、ギターを持て」と初対面から怒鳴られて、僕は舘さんの後をくっついてホテル中を駆けずり廻った。夜も明ける頃、行き着いたのは大浴場。すると突然、男湯と女湯のしきりの扉が開いて、女湯からカルーセル麻紀さんと龍虎さんが乱入してきた。その夜、僕の頭の中には、舘さんの歌声ではなく、ムソルグスキーの『はげ山の一夜』がずっと鳴り響いていた。

芸能界狂乱の夢から醒めた僕は、年の瀬のオレンジ色の陽射しに包まれて、茫然自失で石和駅のプラットホームにひとり立っていた。でも、大丈夫、あとは来た列車に乗り込むだけでいい。列車は僕を、自分が暮らす街へ連れて帰ってくれる。鉄路を辿れば家に帰れる。家族に会える。どこへ行こうが線路で故郷と繋がっている。そんな安心感こそ、僕が鉄道に感じる最大の魅力なのだ。

 

故郷へ繋がる鉄道

 

乗り鉄、撮り鉄、車両のモーター音を聞き分ける音鉄なんて人もいる。鉄道ファンには人それぞれの趣向がある。僕は強いて言うならば、時刻表や路線図を眺めるのが得意な、読み鉄といったところか。

路線図を眺めながら、車窓に広がる景色を想像する。すると、すれ違いの列車が窓をガタンと揺らして目の前を一瞬で駆け抜ける。時刻表と路線図で時間と場所の経過を追いながら確実に景色を捉える。そして、そんな人間が、確かに気象予報士には多い。

しかし、僕の鉄道好きの原点は、あくまでも路線が繋がっているという安心感。それはきっと、神奈川県逗子市から東京まで遠距離通学していた原体験によるのだろう。腹ぺこの小学生の僕は、品川駅のプラットホームでなかなか来ない横須賀線の電車を待ちながら、逗子へ延びる線路を眺めていた。

 

いよいよリニアの時代

 

時は流れ、鉄道はいよいよリニアの時代を迎える。超電導磁気浮上式鉄道ということは、線路の代わりにズラリと磁石が並ぶということか。線路だろうが磁石だろうが、街と街が結ばれているという安心感は変わらない。

数年前、僕はテレビ番組の取材で山梨リニア実験線に試乗したことがある。

乗り込んだリニアの車内は、新幹線とさほど違いない。音もなく動き出した車体の下から飛行機が滑走するのと同じタイヤの振動を感じる。車内に表示されている速度計の数字がある点まで達すると、ピタリと細かな揺れが止まった。それは車体が完全に浮上した瞬間なのだろう。あとは車内の様子におかまいなく、速度計の数字だけがどんどん上昇してゆく。実験線の殆どはトンネルなので、残念ながらそのスピードを窓外の景色と比較して視覚的に捉えられない。それでもトンネルから一瞬抜けた景色は、見事なくらいあっという間に消えていった。

リニアは街と街を直線で繋ぐ。また、その殆どがトンネルになるという。勝沼の大カーブのように、ゆっくりぶどう畑を眺めることはできなくなる。だが、そのぶん早く目的地に到着し、存分にワインを楽しめるわけだ。

二〇二七年東京〜名古屋間、開業予定と聞く。リニアの恩恵を受けるのは、僕以上に僕の子供の世代に違いない。

まだウチの長男・良将も、長女・舞子も小学生だが、いずれはリニアを利用して東京、甲府、名古屋、大阪を行き来する日が来るのだろう。彼らはどんな思いでリニアのプラットホームに立ち、どんな思いで磁石の線路を眺めるのだろう。

おいおい、まさか「石和の忘年会」の帰りじゃないよな。

 

(平成25年12月寄稿)  

 

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山梨県リニア交通局リニア推進課 
住所:〒400-8501 甲府市丸の内1-6-1
電話番号:055(223)1664   ファクス番号:055(223)1666

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