ジャンシス・ロビンソン氏のコメント

消費者の嗜好に大変化が起こり、
より軽やかなスタイルの白ワインへシフトしている

世界のワイン市場で、重いワインから軽いワインへ、インターナショナルな品種から地場品種へと消費者の嗜好の振り子が振れている。日本ではまだだけれど、アメリカやヨーロッパではロゼワインブームがだいぶ前から来ている。フルボディからライトボディの赤ワインへの動きのサインであり、それに呼応するように、白ワインもアルコール度数が高くリッチでオークを多用したスタイルから、より軽やかなスタイルへ移行しつつある。消費者の嗜好の大変化が起こっているのだ。
世界のソムリエがリースリングに注目をし、さらに、8~10年前には無名だったオーストリアのグリューナー・フェルトリーナーのブームがやってきた。料理がライトな方向に向かっており、魚を使った料理や、肉でもチキンへとシフトしており、それにはよりライトな白ワインということらしい。カリフォルニアの「フレンチランドリー」、イギリスの「ファットダック」、スペインの「エルブリ」(2011年閉店)といった世界の一流レストランで、品数の多いマルチコースで皿ごとに合わせられるワインの比率は6対1で白ワインが多いそうだ。もちろん和食も同様だ。さらには、ヨーロッパではチーズにも白ワインを合わせるケースが増えてきている。

唯一無二の地場品種「Koshu」は
世界で認められる条件が十分にそろっている

世界のトップソムリエたちは、常に新しいワインを探し続けている。ABC(Anything But Cabernet Sauvignon, Anything But Chardonnayの略) という標語のもとに、カベルネ・ソーヴィニヨンやシャルドネといった国際品種ではなく、テロワールを映し出す地場品種への注目が集まっている。
しかし、地場品種は地元では「当たり前」に思われすぎていて、過小評価される傾向がある。 このような時代の流れを考えると、「Koshu」は1000年の歴史をもったまさに「地場品種」であり、他に似たもののない「Koshu」が世界で認められる日がくることは十分に考えられる。特にイギリスやアメリカでは常に新しいワインが求められている。
低アルコールかつピュアで透明感のあるスタイルの「Koshu」はよりイギリス向きだ。「Koshu」はピュアといっても弱々しいのではなく、Authenticity つまり本物であり、退屈ではない。15年前(赤ワインブーム)では難しかったけれど、今の時代は、「Koshu」のようなデリケートでピュアな白ワインが成功する条件が整っている。「Koshu」は非常に軽く透明なワインなので、やや冷やしめでサービスされるのが良い。また、若いうちに飲むこともおすすめする。
私にとっての「Koshu」の魅力は、図々しくなく、繊細で、ピュアで、透明感があり、日本の食事とよく合うということである。特に刺身などさまざまな生の魚介、すし、天ぷら、牡蠣、雑炊など。特徴的な香りとして、日本の柑橘類である柚子の香りや、中にはライチの香りがするものがあった。
品質の良い「Koshu」は典型的な日本を表しているようだ。ZENという言葉が浮かんだ。

【閉じる】

世界で最も影響力のある ワインジャーナリスト ジャンシス・ロビンソン氏