ふるさと山梨-中学校版-(デジタルブック版)
66/164

64山梨の美のエレメント7 ここでは,本県出身者のデザイナーや現代美術家などのアーティストを取り上げ,その作家たちの表現意図を探ることによって,生活の中の美術の働きや,日本的な感性,コミュニケーションの能力を育むアートの力について考えていきます。 アーティストは,個々の思いや願いを表現することから,社会的な部分が後回しになる場合もありますが,デザインでは,社会性を考えることがベースになります。遠藤さんは,デザインについて,その状況,目的,メッセージをきちんと把握しないと成立しないと言います。また,自分のアイデアの表現方法はさまざまですが,時には協同したり,逆に個性を出さなかったりすることもデザインとして重要であると考えています。しかし,デザインとアート,どちらも面白くしたいということが基本にあると言います。デザインすること,アートすることに向かう姿勢 遠藤 享 ENDO, Susumu ●アーティストとしての思考,デザイナーとしての思考甲府市出身。グラフィックデザイナー。版画作品はドイツ,ブルガリア,フィンランド等,世界各国で賞を受けており,大英博物館をはじめ,多数の美術館にコレクションされている。ポスターやチラシをはじめ,ネオンサインのデザインも手がけている。「負の閃光」…福島原発事故発生の数日後に依頼を受けて,さっそく広島行きを決行し制作した作品です。特別な緊張感を持って,原爆ドームの前に立ち,カメラのシャッターを切った時に,基本的なデザインの方向性が,決定づけられたと言います。このポスターからどんな思いが伝わってきますか。音響機器の広告デザインです。音を感じさせるデザインはとても難しいです。メカニカルな技術と音楽の接点をデザインの場で見出しています。この広告からどんな音が聞こえますか。 遠藤さんの作品には,「異相の空間」ということが常に頭にあるそうです。それは,一つの画面の中に虚と実や生と死といった世界が共存成立する空間だと言います。そこには「境界」という問題が大きく浮上してくるため,遠藤さんの作品タイトルには「SPACE & SPACE」とつけられています。「境界」は,デザインをする上でもベースにある考えだそうです。●版画家としての遠藤作品●「境界」をキーワードに,テーマを設定してポスターを制作してみましょう。旭山動物園のマークも遠藤さんのデザインです。動物園初のシンボルマークと言われています。

元のページ  ../index.html#66

このブックを見る