ふれあい特集号vol.54(デジタルブック版)
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 ものづくりでは、さまざまな年代の作業者がいくつもの道具を使い製品を仕上げていきます。しかし、従来の道具は、成人男性の手の大きさを基準としてつくられているため、手の小さな方には合いません。このため、使う人の手になじむ道具をつくることができれば、難しい作業も容易になり、能率が上がります。そこで、今回、山梨の地場産業であるジュエリー産業で使用する道具の研究開発を始めました。まずは、身体シミュレーションを活用して、作業者の使用パターンによる手の動きや指の位置を確認。その後、具体的にデザインに着手しました。樹脂3Dプリンターを使っ  08樹脂3Dプリンターでは、精密な細部と滑らかな表面を持つ三次元モデルが作製できる。使い勝手などを確認しながら、製品化につなげていく形状確認には、とても有効て実際に形にし、それを県立宝石美術専門学校の学生に使ってもらい、意見を聞きながら研究を進めました。まだ開発段階ですが、既に興味を持つ企業も出てきていますので、早期の実用化を目指していきたいと思っています。 今回のように身体シミュレーションを活用することで、手で握って使うさまざまな道具の開発をはじめ、使う方の身体特性や作業内容にフィットした製品の開発支援を行いたいと思います。 産業技術センターでは、企業からの提案に沿った研究開発をはじめ、新しい分野へ企業が参入しやすいようにテーマを選定した研究開発も行っています。金属3Dプリンターを活用した造形物の高品質化研究身体シミュレーションを活用し人の手になじむ道具の研究開発 鈴木 文晃 主任研究員甲府技術支援センターデザイン技術部 寺澤 章裕 研究員甲府技術支援センター 機械技術部身体シミュレーションを使った道具のモデリング 金属3Dプリンターは、これまで加工が困難だった形状の金属製品を造形できる装置として、近年注目されています。金属は強度があるので、航空機の部品、インプラント、金型への利用など、さまざまな活用が期待されています。 センターに金属3Dプリンターを導入して4年がたち、造形に関する技術的な知見も蓄積され新たなものづくり産業へチャレンジする企業のための研究開発てきています。現在は、造形の品質をさらに高めるために、表面粗さや積層による精度低下の改善を目指して研究を進めています。 金属3Dプリンターは非常に高額な装置のため、企業での購入は難しい面もあると思います。ぜひ、企業の皆さんは、センターの装置を活用し製品開発に役立ててほしいと思います。金属3Dプリンターで作られた試作品。金属3Dプリンターにより細かい形状の加工が可能となった金属3Dプリンターによる造形物の高品質化に関する研究を進めている文化財・香炉(上)と山梨県の県章(右)

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