ふれあい特集号vol.39(デジタルブック版)
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  04 郡内織物が広く流通するようになったのは江戸時代初期から。郡内地域で生産された絹織物は「郡内縞(ぐんないじま)、甲斐絹」と呼ばれ、高級な絹織物として知られていました。現在の産地としての特長は「多品種生産」。ネクタイ地や服飾裏地、婦人服地、ストール、傘地などさまざまな生地や商品を作っています。どのような要求にも対応できる高い技術と素早い対応が可能な生産体制が郡内織物の強みです。 「技術や品質については、ヨーロッパの高級ブランドも認めてくれています。問題はデザイン力。もっと勉強が必要だと思っています」(川栄・川村昌洋さん) 「販売網を思うように作れない。もっと若い人に手に取ってほしいんです」(前田源商店・前田市郎さん) 各メーカーもオリジナリティーの確立には苦労しているようです。 各社を視察した中田さんは、一つの解決策を見いだしたようです。 「もっとユーザー、消費者の視点を入れていくべきだと感じました。どんな人がどんなシーンで使えばいいのかという提案をして、消費者に使い方を知ってもらうための努力も必要だと思います」 中田さんは、各メーカーの生産現場を見学し、商品を細かくチェック。積極的にインタビューも行い、現状の把握に努めました。 「どのメーカーも驚くほどに高い技術を持っているし、商品のクオリティーも見事。糸作り、生地作りもやって多種多様な商品を作ることができるのは、すごいと思いますが、逆に独自性を見えづらくしている面もあるように感じました。『郡内織物』としてのアイデンティティーをどう築いていくか、それをどのように一般消費者に向けて発信していくか。みんなで考えていく必要があると思いました」 視察後には、他のメーカーも参加した戦略的ブランディングプロジェクト推進会議に出席。各社の意気込みに、中田さんも刺激を受けた様子です。 「僕は魔法使いではないので(笑)、いきなりヒット商品を生み出せるわけではありません。僕にできるのは、生産者の視点を変える気付きやきっかけを作ったり、人と人、企業と企業をつなげたりすること。思い込み、既成概念を打破する提案ができればいいと思っています。皆さんとお話をして、みんなで一つの方向を見て力を合わせれば『郡内織物』を世界に通用するブランドとして発信していくのも夢ではないと感じました。また作り手だけでなく、支援する行政や地域に住む県民の皆さんの意識も変えていきたい。そのために僕ができることは、精いっぱいやっていきたいですね」 世界を舞台に活躍してきた中田さんの力を得れば百人力。山梨から世界へ。いよいよプロジェクト始動です。郡内織物を世界に発信するために人と人、人と物、企業と企業をつなげること

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