ページID:84273更新日:2018年2月19日

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平成30年2月定例県議会知事説明要旨

平成30年2月定例県議会の開会に当たり、提出致しました案件のうち、主なるものにつきまして、その概要を御説明申し上げますとともに、私の所信の一端を申し述べ、議員各位並びに県民の皆様の御理解と御協力をお願い申し上げたいと存じます。

平成元年。

激動の「昭和」から「平成」へと元号が変わったこの年、21世紀の山梨の発展の基盤となる国家的プロジェクトが動き始めました。リニア実験線の建設であります。この年の8月7日に開かれた運輸省の委員会において、リニアの実用化に向けて整備する新実験線の建設地を山梨県とすることが決定されました。

本年は平成30年。

いよいよ、2027年のリニア中央新幹線開業まで、10年を切りました。

残された時間は決して多くはありません。

東京オリンピック・パラリンピック大会もあと2年に迫っている中、まさに「今」が将来の本県の発展にとって極めて重要な時期と感じております。

私が知事に就任してから、3年。

常に、将来の本県の発展を確信しながら、全力で県政運営に当たって参りました。

この間、様々な施策を展開する上で重視してきたのは、県が積極的に触媒としての役割を果たすことにより、地域間、産業間など、多様な主体との連携を強化することにありました。

また、この3年間、県下全域をくまなく歩き、様々な年代、様々な職業や立場の方々とお話しする機会を得ました。

自治会活動や消防団活動に奮闘し、自らの地域を守ろうとする方々。

福祉活動やボランティア活動を通じ、世代や地域を越えて助け合う方々。

山梨の魅力や可能性を感じ、ここ山梨で日々新たな取り組みに尽力する、企業経営者や農家の方々。

それぞれの地域に魅力的な人々と、それぞれの地域資源があり、感動の連続でありました。

現状では、そうした県内で頑張る方々を支える仕組みが必ずしも十分ではなく、また、それぞれの地域が持つ魅力を、十分に発信し切れていないことを感じています。

しかし、この3年間、国内外でのトップセールスや知事会活動なども通じ、様々な角度からふるさと山梨を見る機会をいただく中で、改めて、本県の持つ産業や地域資源のポテンシャルの高さと、国内はもとより世界でも十分に通用するという確かな手応えを得ることができました。

「子育て日本一」に「健康寿命日本一」、そして、「移住希望ランキング日本一」。

3年間で、本県発展の基盤となるいくつかのキーワードも生まれました。

製造業や地場産業、農業などの状況にも、今後の本県発展につながる「芽吹き」が確実に見られるようになっています。

全国的な地域間競争は激しさを増す一方ではありますが、県民の総力を結集しながら新しい地域づくりに取り組むことにより、この競争に勝ち抜かなければならないと考えております。

明年度は、引き続き、様々な主体との「連携」をテーマに、これまでの取り組みによって生まれてきた各分野の成果を更に拡大していくとともに、情報発信力をより高め、施策の浸透を図っていく中で、県民や産業界などの皆様にそうした成果を「実感」していただくことを念頭に置きながら、一層果敢に、施策を展開して参ります。

平成30年度当初予算の編成に当たりまして、その基本的な考え方を申し上げます。

明年度は、特に、人口減少に歯止めをかけ、人口ビジョンに描く将来展望を実現するため総合戦略に位置付けた施策については、これを一層強力に推進して参ります。

また、2年後に控えた東京オリンピック・パラリンピック大会の開催などを見据え、本県が誇るべき観光、農業、地場産業、水といった資源を地域の活性化につなげていく施策、更には、これからの産業を担う人材の育成や起業への支援、新技術の導入など、本県の未来を切り開く施策には重点的に予算を投入致しました。

更に、明年度の公共事業、県単独公共事業については、東京オリンピック・パラリンピック大会の開催やリニア中央新幹線の開通を見据えた基盤整備、強い農林業のための基盤づくり、災害に強く安全安心な県土・地域づくりに対する重点投資枠を拡大し、財源を重点配分するとともに、公共事業については518億円、県単独公共事業については113億円を計上することとし、合計額では本年度当初予算と比較して約2億円の増となる、631億円を確保致しました。

次に、平成30年度当初予算案などのうち、主なるものにつきまして御説明申し上げます。

先ず、人口減少対策についてであります。

知事就任以来、人口減少対策については、県政の最重要課題と位置付け、これまで様々な取り組みを積極的かつ計画的に進めて参りました。

過日公表された住民基本台帳人口移動報告においては、昨年1年間の本県の転出超過数が前年よりも増加するとともに、依然として20歳から24歳の若年層の県外転出が多い状況が明らかとなり、進学や就職などの場面で東京圏が若年層を引き付ける力の強さや、人口減少対策について息の長い取り組みの必要性を改めて認識致しました。

一方で、昨年3月に東京圏の大学などを卒業した本県出身学生のUターン就職率は、県が現行の調査を開始した平成23年度以降の7年間で最も高い水準となるなど、一定の成果も現れ始めているところであります。

更に、先月には、これまでの9校に加え、本県出身の学生が多数在籍する東京圏の大学・短期大学10校との間で、新たにUIターン就職促進のための協定を締結致しました。

これを契機に、明年度は、協定締結校が行う合同就職説明会への県内企業の参加や、県出身学生への企業情報の提供などを通じて、本県への就職活動を積極的にサポートしていくことに加え、締結校のほか、県内大学・高校とも連携しながら、本県で働く魅力について考える機会となる座談会を県内外で開催し、若年層のUIターンや県内定着に向けた働きかけを一層強化して参ります。
また、人口減少対策をより強力に進めていくには、県内の企業や団体などの方々が、それぞれの立場において人口減少を自らの課題として捉え、その解決に向けた活動を進めていただくことが肝要であります。

このため、今後は、県からこれまで以上に積極的に働きかけを行う中で、多様な主体による自発的な活動が連携しながらその輪を広げていく新たな体制、「やまなしアクティブネットワーキング」を構築し、県全体で人口減少対策を推進して参りたいと考えております。

次に、地方創生の推進についてであります。

本年度、四つの地域県民センターに、県、市町村、地域住民などからなる地域創生連携会議を設置して議論を重ね、交流人口の増加や、市町村の区域を越える形での地域資源の活用方策などについて、検討を進めて参りました。

明年度においては、それぞれの検討結果を踏まえる形で、観光客や移住者などを対象に地域の魅力を伝えるモニターツアーなどを実施するとともに、四圏域合同の移住セミナーを東京都内で開催し、各地域の特色や魅力を発信していくこととしております。

更に、県ではこれまでも、それぞれの地域が誇る資源に光を当てる事業に取り組んで参りましたが、明年度は「食」に光を当て、これを地域活性化や観光振興などにつなげていく取り組みに力を入れて参ります。

本県には、ほうとうや吉田のうどんはもちろんのこと、地域で受け継がれてきた数々の郷土食、あるいは地場の農産物から作られた食品があります。

また、過日、国、甲府市との共催により、来年6月29日から2日間にわたり、数万人の来場者が予想される「食育推進全国大会」の第14回大会を、甲府市のアイメッセ山梨などで開催することが決定されたところであります。

大会開催を前に、明年度は、郷土食などを「やまなしの食」として認定するとともに、シンポジウムや、次世代へ継承するために市町村が行う取り組みへの支援などを通じ、本県の食文化の魅力を再発見し、それらを発信する機運を県全体で高めて参りたいと考えております。

次に、産業人材の育成と確保についてであります。

人口減少対策の一つの鍵は、将来の山梨を担う若年層の転出抑制に向けた取り組みにあるとの認識のもと、これまで、全国トップレベルの支援制度を構築して本県への企業立地を推進してきたほか、東京有楽町の「やまなし暮らし支援センター」における、就職相談員によるきめ細かな相談や大学訪問を通じた企業PR、更には、県内の機械電子産業への定着を目的とした奨学金返還支援制度の創設などを行って参りました。

こうした取り組みの結果、昨年3月に東京圏の大学などを卒業した本県出身学生のUターン就職率が調査開始以来最高となる28.1パーセントになったことに加え、昨年9月に国が公表した経済センサスにおいては、県内の製造業における従業者4人以上の事業所の数が伸び率にして全国二位となる13.3パーセントの増加となり、従業者数についても70222人と、平成26年時点から1310人増加しており、本県における雇用の創出が着実に図られております。

一方で、現在、景気回復や産業構造の変化を背景に、有効求人倍率の上昇など、労働市場は全国的にひっ迫しつつあり、県内の企業経営者などからも、人手不足が喫緊の課題であるとの声が寄せられております。

そこで、明年度は、東京圏の若年層への訴求力の高い民間求人転職サイトを活用し、県内企業の魅力を情報発信することで、若年層の県内就職を促進するとともに、企業向けには採用活動や人材定着に向けた講習会を開催し、県内へのUIJターン就職を通じた人材確保を強力に支援して参ります。

更に、本県産業の今後の成長・発展を見据え、県の人材育成機関における中長期的な人材育成の方向性について、産学官が連携して検討を行うこととしております。

また、今後の活躍が期待される外国人留学生に光を当て、県内企業や留学生を対象としたセミナーを開催して、企業の採用活動や留学生の就職活動が円滑に進むよう支援し、県内定着を図って参ります。

次に、結婚、出産、子育てを通じた切れ目のない支援についてであります。

市町村などと連携しながら、これまで、産前産後ケアセンターや第二子以降3歳未満児の保育料の無料化、病児・病後児保育の広域利用体制の構築、子どもの心のケアに係る総合拠点の整備など、「日本一健やかに子どもを育む山梨」の推進に向けて、子育て支援策の充実を図って参りました。

また、出会いサポートセンターによる結婚支援や不妊治療に対する経済的支援などとも合わせ、結婚、出産、子育てを通じた切れ目のない支援も講じてきたところであります。

こうした取り組みの一つ、病児・病後児保育の推進については、昨年4月から、甲府市をはじめとする県内6市町による広域利用が開始され、保護者の方々からは、「普段利用している施設が満員のとき、隣の町の施設を利用することができて大変ありがたかった」、「施設には看護師がいて安心感がある上、子どもの状態や対処の仕方も詳しく聞くことができた」などの声が寄せられております。

また、現在、鋭意、各市町村との協議を進めており、年度内に市町村間での利用協定を締結し、4月からは、全国初となる県内全域での広域利用が開始されることとなっております。

明年度は、広域利用の開始を契機に、保護者の方々にとっての利用環境を更に向上させ、子育てと仕事との両立を強力にサポートするため、病児・病後児保育を実施する医療機関などに対する施設整備への助成を開始するほか、各施設の空き状況などをスマートフォンなどで確認できる機能を「やまなし子育てネット」に導入して参ります。

また、近年では、幼児期における自然体験活動が、子どもの体力づくりはもちろん、社会性や自己肯定感の形成などにも有効であるとして、その必要性が提唱されており、やまなし子ども・子育て支援条例においても、その推進が規定されたところであります。

一方、本県は森林をはじめとする豊かな自然を有しているものの、昨年12月に県が実施したアンケートにおいては、保育所の職員などから、「安全性の確保が心配」、「職員にノウハウがない」といった声も寄せられております。

こうした状況を受け、明年度は、有識者などによる検討会を設置し、本県の自然を活用して各施設が安全に取り組むことのできる活動プログラムなどの検討を進めて参ります。

また、現在、甲府市中心部に出会いサポートセンターを設置し、出会いの機会や婚活情報の提供に取り組んでいるところでありますが、若者の結婚支援に向けた取り組みを更に強化することとし、明年度は、新たに富士吉田市内に常設のセンターを開設し、全県での利用促進を図って参ります。

次に、県民の健康増進と医療の充実についてであります。

日本一である健康寿命の更なる延伸を目指し、これまで、都道府県で初の取り組みとなるピロリ菌除菌治療費への助成による胃がん予防のほか、肝炎ウイルス陽性者の早期発見・早期治療への取り組み、生活習慣病への対策などを積極的に進めて参りました。

また、本年度は、福祉や保健、医療に係る、合計13の個別計画についての策定や中間見直しを行うとともに、それらの共通コンセプトを「やまなし健康寿命延伸新戦略」として取りまとめることとしており、今後、各分野の計画が相互に連携する形で、すべての県民が健やかで生き生きと暮らせる社会づくりをより一層強力に推進していくこととしております。

更に、明年度は、健康寿命の更なる延伸に向け、先進的な取り組みを行う市町村への支援を行うとともに、健康寿命日本一の要因について保健や医療などの専門家による分析を行うなど、県を挙げた取り組みを展開して参ります。

また、昨年10月に改正された山梨県がん対策推進条例の内容を踏まえ、過日、継続的に死亡率の低減を目指すことを取り組みの指標とするとともに、がんの予防・がん医療の充実・がんとの共生を取り組みの三つの柱に掲げる第三次がん対策推進計画の素案を公表したところであり、年度内の策定を目指して参りたいと考えております。

明年度からは、本計画に基づき、関係機関などとの連携により、がん患者や家族を総合的に支援する環境を整備し、療養生活の質の向上や、社会生活上の不安の軽減を図る中で、「がん患者を含めた県民が、がんを知り、がんの克服を目指す」という目標の実現に努めて参ります。

更に、相対的に受診率が低い子宮頸がん検診について、大学生や、20代から30代の女性を対象に受診率の向上を図っていくほか、肝炎・肝がん対策の一層の充実を図る観点から、新たに肝がんや重度肝硬変の患者の入院治療費の支援制度を創設して参ります。

次に、防災体制の強化についてであります。

近年の東日本大震災、熊本地震といった大規模災害や、本県における豪雪災害などを背景に県民の防災意識が高まってきている状況を受け、これからも県を挙げて防災対策を総合的に推進していくため、本年度、学識経験者などからなる検討会議を設置し、防災基本条例の制定について議論を進めて参りました。

本定例県議会に提出している条例案においては、県民や事業者などの主体が適切に役割を果たし、自助、共助、公助が一体となって防災対策を進めるとする基本理念や、県は応急体制の確立に努め、市町村などと連携しながら地域の防災活動を支援する責務を有する、といった規定を盛り込んだところであります。

条例の制定を契機として、明年度、県民一人ひとりが災害時に取るべき行動などを学ぶことのできる啓発ツールを作成し、防災知識の更なる普及に取り組むほか、各市町村と共同で、地域が行う地区防災計画の策定を支援することなどを通じ、地域防災力の強化に取り組んで参ります。

また、富士山の噴火対策については、万が一噴火が起こった場合、富士北麓地域に甚大な被害を及ぼし、その影響が県域を越えて、大規模かつ広域的なものになることが予想されております。

このため、静岡県同様、本県においても国による砂防事業の実施が不可欠であるとの認識のもと、知事就任以来、県議会の協力や地元市町村で構成する期成同盟会と連携し、要望を重ねてきた中で、富士山直轄砂防事業計画について、これまでの静岡県側に加え、山梨県側を含めた計画とする方針が、今月1日、国において承認されたところであります。

今後は、国の直轄事業が計画に基づき着実に実施されるよう、砂防事業の用地確保や関係機関との調整など、積極的に協力して参りたいと考えております。

更に、昨年8月に大月市の岩殿山などで発生した土砂災害の現場において、ドローン技術を活用した調査を実施し、被災状況の情報収集などに大きな成果が得られたことから、地域の防災拠点となる合同庁舎などにドローンを配備し、今後、災害対応力の向上をはじめとした様々な活用を図って参ります。

次に、産業の振興についてであります。

これまで、本県経済を発展させていくためには、産業を集積させ、雇用の創出を図っていくことが必要不可欠であるとの認識のもと、本社機能の移転や事業の拡張を行う企業に対して不動産取得税や法人事業税などを大幅に軽減する優遇制度の創設、安価な電力を供給する「やまなしパワー」の開始、更には産業集積助成金の対象の拡充などを通じ、全国トップレベルの企業立地制度を構築し、これを県内外に広くPRして参りました。

明年度は、こうした取り組みに加え、本県産業の更なる活性化に向けて、これからの山梨を担っていく方々の起業に対する支援を強化することとし、商工業振興資金における起業家支援融資の利率を引き下げた上で、女性や若者、シニアの起業者を対象とした融資枠と県外からの移住者の起業者を対象とした融資枠を創設し、それぞれの利率を更に優遇することと致しました。

また、県内企業による新製品の研究開発や販路開拓などを支援してきた「山梨みらいファンド」については、本年9月で設置期間が満了となりますが、五つの県内金融機関などとの連携により、新たなファンドを造成し、成長分野における創業のほか、AIなどの次世代技術を活用した新事業の創出を積極的に支援していくこととしております。

これらと併せ、県内中小企業が新たな設備投資や事業承継を行う際の、資金調達の負担軽減を図るため、商工業振興資金の利用時に県が信用保証料の2分の1を助成する補助制度の対象を大幅に拡充し、企業の新分野進出や事業承継などを金融面から強力にサポートして参ります。

また、これまで、ワインやジュエリー、織物といった地場産業の振興にも力を注ぎ、ブランド化の推進による産地の活性化を図って参りました。

明年度、ワインについては、文化や歴史、風土などを含めた産地の魅力そのものを積極的に発信し、更なるブランドイメージの確立を図っていく観点から、海外ジャーナリストを対象とした県内ワイナリーへのツアーを実施することとしております。

また、需要が拡大している醸造用ぶどうの生産拡大を図るため、本年度から農業振興公社において甲州種の苗木の生産に取り組んでおり、8年後の2025年度に甲州ワイン増産100万本を目指す「ワイン産地確立推進計画」に沿って、毎年1000本ずつの苗木の供給が明年度から開始される予定であります。

更に、県内ワイン産業の研究開発や技術支援の拠点であるワインセンターの再整備を実施し、ワインの更なる高品質化や生産性向上に向けた機能強化を図って参ります。

ジュエリーについては、昨年度から、ジェトロ山梨などと連携して、香港や上海といった海外からのバイヤーなどを甲府ジュエリーフェアに招へいし、本県の有する高い技術力などをPRすることで成果につながっているところであり、明年度も、更なる海外販路の拡大と産地のブランド化を推進していくこととしております。

また、織物については、明年度から、産業技術センターと山梨大学などが連携し、独自の画像処理技術を用いることにより、素材の質感を精緻に表現できる、新たな商品の開発に向けた研究を実施して参ります。

次に、観光の振興と東京オリンピック・パラリンピック大会を契機とした地域活性化についてであります。

県では、観光産業の稼ぐ力と働く魅力を高めることなどを基本方針とした「やまなし観光産業活性化計画」を平成27年度に策定し、以後、官民一体となった国内外でのプロモーション活動や、観光客の受け入れ体制の整備などを積極的に推進してきたほか、地元と連携しながら、峡東地域におけるワインリゾート構想の推進や、峡南地域での歴史・文化をテーマにした観光振興構想の策定、峡北・峡中・峡東地域における「食」をテーマにした情報発信など、地域資源の活用と周遊観光の促進を通じた観光産業の活性化を図って参りました。

観光庁が昨年公表した観光入込客統計調査によると、平成28年に本県を訪れた国内外からの観光客数は3205万人、外国人宿泊者数については137万人といずれも過去最高を記録したほか、観光消費額については、県全体で4157億円と、現在の統計手法となった22年以降、初めて4000億円を超える結果となり、これまでの県の取り組みの成果が数字となって現れたものと受け止めております。

明年度は、フィリピンやベトナム、インドネシアにおいてトップセールスを実施し、流通事業者や消費者に対する県産酒や県産果実のPRに努めるほか、旅行会社や航空会社、行政機関のキーパーソンとの意見交換などを通じて、本県の魅力を幅広く発信し、一層の誘客と交流の促進を図って参ります。

また、中部横断自動車道の開通や東京オリンピック・パラリンピック大会の開催、リニア中央新幹線の開業などを控え、これらの誘客効果を最大限に引き出し、広域的に観光産業の「稼ぐ力」を高める観点から、県としての新たな観光推進計画を検討していくほか、地域が行うビッグデータなどを活用した観光戦略の策定や、その戦略に基づく新たな取り組みを支援して参ります。

更に、国内外でサイクリングツアーなどの人気が高まっている中で、県内各地域の特色を生かした山梨県版の自転車活用計画を策定することとし、安全かつ快適な自転車利用環境の創出と、国内外からの誘客促進を図っていくこととしております。

また、県においては、これまで、スポーツを通じた交流の促進を図るとともに、本県の魅力を世界に発信する好機として、市町村や競技団体などと連携しながら、2年後に迫った東京オリンピック・パラリンピック大会の事前合宿の誘致を積極的に推進して参りました。

特に、県内7市町村、合計六つの競技について既に事前合宿の実施が決定しているフランスについては、昨年7月のトップセールスを契機とし、事前合宿の円滑な実施や交流の活性化に向けてオリンピック委員会との協力文書の交換を行ったことから、今後は、中長期にわたるフランスとの多分野交流を通じ、本県への観光客の誘致や、地域の活性化に資する取り組みを展開していくことが重要であると考えております。

明年度は、フランスオリンピック委員会などの公認スポーツエージェントの実績を持ち、トップセールスにおいて関係を構築した旅行会社を招へいし、本県を対象とした旅行商品の造成を働きかけるとともに、甲府市などと連携して、日仏友好160周年にあたる本年、パリで開催される「日本博」に参加し、本県の魅力を強力に発信して参ります。

また、事前合宿の誘致を契機として、東京オリンピック・パラリンピック大会への県民総参加の機運の醸成が図られるよう、ホストタウンに登録された市町村が競技団体と協働して行う交流事業などの費用を助成するとともに、市町村振興資金に新たな貸し付け枠を創設し、事前合宿の受け入れ体制を強化するために行う施設整備などへの円滑な資金調達を支援して参ります。

次に、農業の振興についてであります。

平成27年度に策定した「新・やまなし農業大綱」に基づき、農産物の高品質化・販路開拓に向けた取り組みを実施する中で、28年の農業生産額は958億円と、大綱の目標値でもある950億円を16年ぶりに突破しました。

一方、今後、更なる本県農業の発展を図るためには、低コスト化や高品質化に資するIoTなどの新技術の導入が鍵であると考えております。

そこで、明年度は、県内農家をモデルとした、生産の低コスト化、高品質化に資する先端技術の導入実証に取り組んで参ります。

また、これまで、県産果実の輸出促進の観点から、台湾やタイなどにおけるトップセールスの実施、シンガポールとマレーシアにおける常設の海外販売・情報発信拠点の運営などを行ってきたところでありますが、明年度は、更なる輸出拡大を図るため、今後の有望な市場と目されるインドネシアにおいて、テスト輸出や消費者の嗜好調査などを実施して参ります。

更に、本県農業を支える担い手の確保や育成にも力を注ぎ、就農相談から就農に向けた技術習得、農地の確保に至る支援を進める中で、毎年着実に新規就農者が増加し、平成28年度の新規就農者は304人と、平成になって初めて300人を突破しました。

明年度は若い世代に加え、働く意欲が高く、農業に関心のある県内外のシニア世代を対象に農業振興公社が行う就農セミナーの開催などを支援して、多様な担い手の確保につなげるとともに、農家の方々が安心して農業を営み、新たな取り組みにもチャレンジできるよう、収入保険制度をはじめとする農業セーフティネットについて積極的にPRして参ります。

次に、林業の振興についてであります。

平成27年度に策定した「やまなし森林・林業振興ビジョン」に基づき、森林資源の有効活用を図り、林業の振興につなげる取り組みを展開して参りました。

特に、県産材のブランド化を通じた販路拡大を図る契機として、東京オリンピック・パラリンピック大会競技施設への県産材の活用を目指し、これまで本県のFSC認証材の供給体制などをPRしながら、大会組織委員会などに対し、働きかけを繰り返し実施した結果、先般、新国立競技場の大屋根に本県産のカラマツ材が、また、選手村ビレッジプラザに本県産のヒノキ材などが使用されることが決定しました。

更に、東京に本社があり、合板や木質住宅建材を生産する大手の木材加工会社、株式会社キーテックが、森林資源の豊富な地域への合板工場の進出を検討する中で、事業用地を紹介するなど、県内への誘致を積極的に働きかけてきた結果、本県には、スギ、アカマツ、カラマツの資源が豊富に存在することなどから、今般、中部横断自動車道開通などを見据え、輸送面などで条件が整っている身延町内に、大型の合板工場を整備することが決定しました。

この工場の整備に伴い、合板用の県産材生産量は、3年後には従来の22000立方メートルの4倍近い82000立方メートルになると見込まれ、県の人工林が本格的な利用期を迎えている中、これまではチップ用などとして販売されていた原木が、高い価格で買い取られ、より付加価値の高い製品へと加工されることとなり、新たな雇用の創出や林業関係者の所得向上に結び付くことが期待されるところであります。

また、本年度2月補正予算には、この大型合板工場における設備整備への助成に要する経費を計上致しております。
更に、本年8月には、大月市内において大規模バイオマス発電所の本格稼働が予定されるなど、今後、県産材への一層の需要の高まりが見込まれております。

こうした状況を踏まえ、明年度、県産材の生産性の向上を図るとともに、将来の本県林業の担い手を育成していく観点から、高性能林業機械を活用して伐採から植栽までの作業を低コストで行う「一貫作業システム」や、ドローンを活用した新たな技術を県有林に導入し、本県の林業・木材産業の成長産業化につなげて参ります。

次に、個性と学力を伸ばす教育の充実についてであります。

これまで、本県独自で実施している学力調査の早期分析や、放課後や土曜日などを活用した児童生徒への補習の拡大実施、家庭学習用のリーフレットの配付など、授業改善、教員の資質向上、家庭・地域との連携の、三つの視点による学力向上総合対策を進めてきたところであります。

この結果、全国学力・学習状況調査においては、本年度の中学校三年生の成績が、全国の平均正答率を3.7ポイント上回ったほか、毎日1時間以上の家庭学習を行う小学生の割合が昨年度から2.5ポイント、中学生においては3.5ポイント上昇する結果となりました。

一方で、本調査においては、本年度の小学校六年生の成績は、一部の教科で改善が見られ、全国の平均正答率との差は縮まったものの、依然として、4分野すべてで全国平均を下回っていることや、中学校においても一部の分野でわずかに全国平均を下回っていることなどの状況があり、これまでの取り組みを一層強化することと併せ、残された課題を克服し、学力向上に着実につなげていく必要があります。

明年度は、先ず、全県下の小学校五・六年生を対象とし、年間を通じた継続的な授業改善を図るための国語、算数の単元末テストを実施するほか、新聞記事を活用したワークブックを作成し、全国学力・学習状況調査における弱点ともなっている、読解力・記述力を向上させていく取り組みを進めて参ります。

また、小学校のすべての児童を対象として、家庭と学校との連携を図り、家庭学習の習慣化を促進するツールとして「家庭学習連絡ファイル」を配付するとともに、中学校の生徒に対しては、実用英語技能検定の受検費用への助成を行い、英語学習へのモチベーションを高めることに加え、受検前後における学校からの適切なフォローアップを通じ、英語教育の強化に努めて参りたいと考えております。

更に、小中学校共通の取り組みとして、指導経験の豊富な教員OBなどを活用し、学習指導や補習などの支援を行う専門スタッフを配置する市町村に対し、その費用を助成することとし、児童生徒一人ひとりに合った、きめ細かな対応を通じた学力向上にも努めて参ります。

また、平成26年度から身延高校と身延中学校、南部中学校との間で中高一貫教育に向けた事業を試行的に実施して参りましたが、生徒の学習意欲や基礎学力の向上などの面で着実に成果が現れてきたことに加え、授業や部活動などにおける中高連携の円滑な実施に一定の目途がついたことを受け、中学生や保護者の方々などへの周知を図った上で、31年度から、身延高校と両中学校との中高一貫教育を正式に導入して参ります。

次に、子どもの貧困対策についてであります。

子どもたちの将来が生まれ育った環境に左右されることのないよう、平成28年に策定した「やまなし子どもの貧困対策推進計画」に基づき、教育の支援、生活の支援、保護者に対する就労支援、経済的支援の四つの施策を重点施策と位置付け、関係部局が一体となって総合的な貧困対策に取り組んで参りました。

また、本年度は、高校の新入生を対象にした就学支援の充実を図るため、経済的に余裕のない世帯に対して、国の奨学給付金に加え、県独自の給付金を支給する制度を創設し、公立・私立合わせて約800人の生徒の家庭への支給を行いました。

更に、本年度から、県や市町村、関係団体で構成する「やまなし子どもの貧困対策推進協議会」を設置し、計画に基づき、各主体が連携して貧困対策に取り組むことの必要性や情報共有の重要性などについて認識の共有を図るとともに、貧困対策に関する全県的な実態調査を実施し、先般、その中間報告を取りまとめたところであります。

明年度は、中間報告において明らかとなった、教育・福祉双方の支援制度や地域の状況などを熟知し適切な支援機関へつなげる人材が不足しているという課題に対し、支援機関のネットワークづくりを担うコーディネーターの養成を進めるほか、公的支援制度などが十分に周知されていないという課題に対しては、制度をわかりやすく説明したリーフレットを作成し、家庭などへのより丁寧な周知に努めることとしております。

更に、産業技術短期大学校や峡南高等技術専門校は、これまで即戦力となる技術者を育成してきた十分な実績を有する一方、成績が優秀でありながら、経済的な不安から進学を諦める高校生などがいるという実態があります。

そこで、明年度は、経済的に余裕のない世帯の学生に対する県独自の就学給付金制度を創設し、両校での学生の学びと、産業人材の県内定着を支えて参りたいと考えております。

今後とも、市町村や関係機関などと緊密に連携し、子どもたちへの全県的な支援体制の構築に全力を挙げて取り組んで参ります。

次に、先進的・複合的な交通システムの推進についてであります。

昨年3月、バス交通ネットワーク再生計画を策定し、バス事業者や市町村との協議を踏まえながら、利便性の高いバス路線への再編を進め、現在までに、12の路線について新設や延長を行ったところであります。

更に、明年度は、少子高齢化や過疎化などの状況を踏まえ、県や市町村、有識者、交通事業者などからなる検討会を設置し、地域の高齢者などの多様な移動ニーズに対応した、市町村の交通部門と福祉部門との連携、バス交通と貨物輸送との連携などによる新たな交通サービスについて、議論を進めて参ります。

また、これと併せ、自動運転技術などを用いた先進的なバス交通を本県に導入していくため、有識者やバス事業者、車両メーカー、ICT企業などをメンバーとする研究会を設置し、自動運転の実証実験の誘致なども視野に入れながら検討を進めていくこととしており、これらの事業を通じ、きめ細かく利便性の高い、本県にふさわしい交通網の構築を進めて参ります。

次に、地域高規格道路の整備についてであります。

本県において高速道路や地域高規格道路の整備は、地域の産業や観光、文化などの振興・発展に大いに寄与することなどから、知事就任以来、その着実な整備を国などに働きかけてきたところであります。

こうした中、来月21日、西関東連絡道路の未供用区間、山梨市八幡から岩手までの1.6キロメートルの整備が完了し、9.3キロメートルが全線開通することとなります。

これにより、甲府市桜井町から山梨市岩手までの所要時間は従来の半分となる10分程度に短縮されるほか、既存の国道140号をはじめとする周辺幹線道路の混雑緩和や事故減少、更には緊急輸送道路としての機能強化といった整備効果が見込まれ、甲府市と峡東地域との更なる連携強化が図られるものと考えております。

また、将来的に新山梨環状道路と接続することにより、広域的な道路ネットワークを形成し、沿線地域の経済活動や観光の振興などにつながることが大いに期待されております。

次に、文化芸術の振興についてであります。

これまでも、平成27年2月に策定した「山梨県文化芸術振興ビジョン」に基づき、県民文化祭の開催や子どもたちの文化芸術活動の推進など、様々な施策を展開して参りましたが、2年後の東京オリンピック・パラリンピック大会の開催を契機として日本文化の魅力を発信する事業や活動である「ビヨンド2020プログラム」には、本年度だけで100件を超える県内の文化イベントが認証され、文化芸術活動の振興を通じた地域活性化が図られているところであります。

こうした状況の中、県民や関係団体、行政など多様な主体が一丸となり、将来にわたって文化芸術の推進に取り組むとともに、地域の伝統や文化財などに加え、農業や地場産業などを含めた、様々な本県独自の文化や芸術を更なる地域活性化につなげていくことを目的とし、明年度、新たに「文化芸術基本条例」(仮称)の制定に向けた検討を行って参ります。

これと併せ、障害者が行う芸術活動へのサポートや発表の場の提供などを通じ、障害者の自己実現や社会参加をこれまで以上に強力に推進することとしております。

また、本年、開館40周年を迎える県立美術館については、特別展や講演会の開催など様々な記念事業を行うとともに、更なる魅力の向上を図る観点から、美術資料取得基金を活用して、ミレーをはじめとしたバルビゾン派の美術資料の充実に向けた検討を進めて参ります。

次に、ボランティア・NPO活動の推進についてであります。

本県における今後のボランティア活動などの方向性を示す「やまなし県民活動推進指針」(仮称)については、策定検討委員会の議論を踏まえて素案を取りまとめ、現在、パブリックコメントを実施しております。

素案では、県民活動を推進するに当たり、県民活動への理解と自発的な参画促進、県民活動を発展させていくための環境整備、団体などの多様な主体相互の連携・協働推進を三つの柱とし、県民一人ひとりが地域への関心や支え合いの気持ちを持ち、自らの意思で地域活動に参画いただくことを基本目標とした、「活力あるやまなし」の実現に向けて必要となる取り組みの方向性を示しております。

今後は、年度内に指針を策定するとともに、指針に基づいて、ボランティア活動などの活性化を進めるため、ボランティア・NPOセンター機能の充実を図ることとし、旧ボランティア・NPOセンターの施設を活用する方向で検討を進めて参ります。

次に、北富士演習場の使用協定についてであります。

平成25年3月、国との間で締結した第九次北富士演習場使用協定については、本年3月31日、その期間が満了することとなります。
過日、防衛省地方協力局長から、我が国を取り巻く安全保障環境を鑑みる中で、北富士演習場の使用の重要性は増しており、本年4月1日以降も引き続き使用したいとする旨の申し入れがありました。

北富士演習場については、全面解消、平和利用を目指し、段階的縮小を進めていくことを基本姿勢としながら、併せて演習場周辺の地域振興と民生安定を図ることが現実に即した方法であると考え、これまで諸問題の解決に取り組んできたところであります。

今回の国からの申し入れについても、北富士演習場対策協議会を中心に、県議会をはじめ、地元市村などと十分に協議をしながら、適切に対処して参る所存であります。

以上の内容をもって編成した結果、平成30年度当初予算案の一般会計の総額は、4555億円余となっております。

この財源と致しましては、地方法人特別譲与税を含む実質県税1085億円余、地方交付税1238億円余、国庫支出金479億円余などのほか、臨時財政対策債を含めた県債599億円余を計上致しております。

次に、条例案のうち、主なるものにつきまして申し上げます。

山梨県防災基本条例の制定についてであります。

先ほど申し上げました、防災に関する基本理念を定め、自助、共助、公助が一体となり、災害に強い地域社会の実現を図ろうとするものであります。

最後に、平成29年度2月補正に係る提出案件について御説明申し上げます。

補正予算案のうち主なるものにつきまして申し上げます。

先ほど申し上げました、木材産業の競争力の強化と県産材の利用促進を図るため、県外の木材加工会社が県内に進出して行う設備整備に対し助成する経費を計上致しております。

また、企業立地を促進するため、市町村などの工業団地造成の取り組みに対し助成する経費を計上致しております。

以上の結果、一般会計の補正額は89億円余の減額となっております。

その他の案件については、いずれも、その末尾に提案理由を付記しておりますので、それによりまして御了承をお願い致します。
なお、国は総額2.7兆円の補正予算を編成し、過日、国会において可決・成立したところであります。

このうち公共事業については、本県への配分が170億円程度と予定されておりますが、現在、関係機関と調整を行っているところであり、整い次第、関連する補正予算を今定例県議会に追加提案して参ります。

平成30年という節目の年に、私が知事に就任して4年目の県政がスタートします。

平成30年は、実りの秋という意味があるとされる「戊(つちのえ)戌(いぬ)」の年でもあります。

これまで育ててきたいくつもの「芽吹き」が、より「大きな実り」となるよう、全身全霊を傾け、努力して参る所存でありますので、議員各位をはじめ、県民の皆様の一層の御理解と御協力を賜りたいと存じます。

なにとぞ、よろしく御審議の上、御議決あらんことをお願い申し上げます。

 

平成30年2月19日

山梨県知事

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