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40年以上、宝石研磨一筋。だから誰にもできないことができる。清水幸雄(宝石研磨職人)さそり座/山梨県出身

山梨県甲府市にある(株)シミズ貴石。ここには世界で唯一の技術を持つ宝石研磨職人がいる。
手擦り職人の第一人者、清水幸雄氏だ。
今回は、現役の職人でありながら、県立宝石美術専門学校で教鞭を執り、後継者の育成にも力を入れる清水氏に迫った。

この石は平面がいっぱいありますね。何面体ですか?

それは180面体。俺が作ったんだよ。キキョウカット(※1)って言うんだけど、これを切れるのは世界中でも甲府の職人だけ。こいつに出会ったのはジュエリーマスターを受験しようと思って、師匠のところへ相談に行ったとき。「これをやってみろ」って見せられたのが最初。で、師匠が教えてくれたのは、「まず12面体を切れ」ということだけ(笑)。後は全部自分で見よう見まねで作ったよ。俺も職人だから、最初見たときにどうやって切ればいいか分かったんだよね。3、4個失敗しただけでできた。 

キキョウカット(※1):正五角形12枚で囲んだ正12面体をベースに、それぞれの五角の中心に向かって稜線のある5面のファセット・カットをし、合計180面を有するカット。

完成したのを見て師匠もビックリしたでしょうね?

「よく切った!」って褒められたよ。その後、師匠はすぐ亡くなっちゃったけど、ご霊前にキキョウカットを供えてきたよ。やり方を教えてくれなかったのが逆に良かったのかもしれない。絶対切ってやろうと思ったよ。

ここまで形を整えるには、やはり機械を使って?

いやいや。これは手擦りじゃないとできない。機械を使ってもキキョウカットは絶対できないよ。手擦りってのは、石を手で持って、平面研磨機に直接当てて研磨する技術。手先の感覚と摩擦の音だけで切るんだよ。手擦りは世界的に見ても、ここ甲府の職人だけができる難しい技術なんだ。せっかくだから今ちょっと見せてあげようか?

(ページ下に貴重な手擦りのムービーを公開中です!)

手擦りのときはどんなことに気を使います?

荒削りからだんだん細かい砂を使って削っていくんだけど、一番気をつけるのは力加減かな。削る面によって力を微妙に変えないとならないから。ほら、見てごらん。

すごい!何の変哲も無い原石が10分ほどでこんなに綺麗になるなんて!

今から最後の仕上げをしてピカピカに光らせるよ。青粉って言う酸化クロムを使ってケヤキの木に当てて磨くんだけど、カット面と同じ角度で当てないと綺麗に光らないんだ。これが素人にはできないんだよね。俺みたいに長年やっていると、ちゃんとカット面が平行に当たっているか摩擦の音で判断できる。いつも同じような音に聞こえるでしょ?けど俺には音の違いがすぐ分かるんだ。はい、もう完成!

綺麗!たった10分くらいなのに。

これはエメラルドカットっていうんだ。手擦りでここまでできるようになるには10年かかる。180面体のキキョウカットが切れるようになるには20年以上かかるな。職人も少なくなったからね。今このカットができるのは俺だけだよ。

へえ!とんでもなく難しい技術なんですね。そもそも清水さんがこの業界に入ったきっかけは?

兄がこの仕事をしていたから、なんとなく自然に入ったんだよ。けど、若い頃、修行している身分のときはかなり辛かったなあ。昔は研磨するときに使う砂が高価だったから、どこの工房も砂を再利用するために桶を洗って、砂の粗さを揃える作業を下っ端がしていたんだ。水を使うから冬は寒くてさ。大変だったけど、歯を食いしばって頑張ったよ(笑)。今の自分があるのはそういった下積み時代があるから。この業界入って40年以上経つけど、評価されてきたかなって思うのはここ数年。自分としてはまだまだ一生修行だなって思っていて、満足することなんてない。今までやってきてこれは!ってのはないんだ。だからこれからもっと技術を磨いて色んなものを作っていきたいね。

そういえば、県立宝石美術専門学校で教壇に立たれていますね。

そう。一週間に一回教えに行ってるよ。学生がデザイン考えてくるから、使う石の種類を教えてあげたり、研磨の指導をしたりして一緒に一つの完成品を作り上げていくんだ。学生たちが色々なアイデアを持ってくるんだけど、プロじゃ考えつかないような面白いものがいっぱいあるんだよ。

学生さんとのエピソードはあります?

一度、学生と研磨の勝負をしたことがあるよ。俺とその学生がそれぞれ石をカットして、どちらの作品が綺麗か、みんなに評価してもらったんだ。ハンデとして、俺は利き手じゃない方の手でカットしたんだけど、まあ、結果は当然自分が勝ったんだ。けど、その学生は一生懸命カットして、驚くくらい綺麗に仕上げたんだ。今までこんなに頑張った子はいないって褒めてあげたよ。素晴らしい生徒だった。学生たちはみんなプロが唸るようないいものを持っているんだ。提案してくるアイデアもすごく面白い。だから、今は辛いかもしれないけど、一生懸命努力を重ねて、自信を持って職人の道を進んでほしいと思うよ。

若い世代への温かいお言葉、ありがとうございます!これからも第一線の現役の職人として、また学生たちの指導者として、一層のご活躍を期待しています。

企業情報

名  称:株式会社シミズ貴石

住  所:山梨県甲府市高畑1丁目13-18

E-mail:info@s-kiseki.co.jp

H   P:http://www.s-kiseki.co.jp

事業内容:   自社工場でハンドカット、マシンカットまたは製品のリカット等のルース加工、

                  および原石の調達

自社の強み:山梨県認定ジュエリーマスター、一級宝石研磨士などの精鋭の職人たちが

                  研磨しております。

                  逸品物、サイズ物、変形または企画商品など、高い技術力で様々なご要望

                  にお応えいたします。 

                  最小で約2mmの大きさからルースを仕上げ、リカットの注文にも対応。国内

                  設備と高い技術が海外では実現できない短期での納品を可能にします。

                  手摺りの技術により、多様で繊細なリカットの注文に柔軟に対応できます。

                  プロのバイヤーが世界各地から厳選した良質な原石が豊富にあります。

                  石の産出からカットルースになるまでのストーンヒストリー(石の履歴)を表記

                  した弊社オリジナルの鑑定書を発行いたします。

  

 

 

180面体のキキョウカット

 

 

(手擦り前) ただの原石の状態

 

 

(手擦り後) 清水氏の手にかかると

たった10分ほどでこんなに綺麗な石に!! 

 

 

180面体キキョウカットの制作ムービーはコチラから!

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手擦りのムービーはコチラから↓

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清水幸雄

Yukio Shimizu 清水幸雄

●1951年10月26日生まれ。 (株)シミズ貴石代表取締役専務。 ●山梨県知事認定ジュエリーマスター、一級宝石研磨士の資格を持つ。 ●山梨県ジュエリーマスター認定制度試験実施委員。 ●山梨県立宝石美術専門学校の非常勤講師。 ●平成22年度の卓越した技能者(やまなしの名工)に選ばれる。

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